川のせせらぎを聞きながら、
大野市の恵みをいただく。
古民家で開催された
〈水をたべるレストラン〉
水とともにある福井県大野市の食文化
周囲を山に囲まれ、市内にある4本の一級河川には滔々と水が流れている。
水が豊富であることを感じさせる光景が広がっているのが、福井県大野市だ。
おいしい水で有名なまち。
その恵みをもらって食物が育ち、水を使って調理し、市民は生活を潤している。
大野市では〈水をたべるレストラン〉という取り組みを続けている。
すべての「おいしさ」の源には大野の水があり、
水の恵みを得た食を発信していくプロジェクトだ。
そば、米、醤油、水まんじゅう、まいたけ、コーヒーなど、
どれも大野自慢の一品である。
この度、〈水をたべるレストラン〉のリアル版、
つまり本物のレストランが一夜限定でオープンした。
まさに「水をたべる」と言えるもので、
大野の水への思いを存分に感じさせるイベントとなった。

会場となった打波古民家は、緑豊かで静かな上流域にある。
このイベントは大野市と、料理開拓人として大阪でfoodscape!、
全国でEATBEAT!を展開し、全国で食のプロジェクトを推進している
堀田裕介さん、そして大野市の若手有志団体〈ミズカラ〉により実現した。

料理開拓人の堀田裕介さん。
まずは、市内の“水の現場”を巡った。
一番の水どころである〈御清水(おしょうず)〉は、
かつて武士がお米を炊く水を汲む場所として使われていたという。
現在でも、大野市民のほとんどは家庭に井戸を持っていて、
地下水を生活用水として利用している。
「上水道はあまり普及しておらず、井戸が8000本以上あります」
と大野市の湧水再生対策室企画主査の荒矢大輔さんが教えてくれた。
この〈御清水〉でそれぞれの水を汲んで、ツアー中の飲み水にした。

大野にたくさんある湧水地のなかで一番有名な〈御清水〉。
次に朝市で有名な七間通りにある〈南部酒造〉を訪れて、
日本酒〈花垣〉の飲み比べをさせてもらった。120年の歴史がある。
当然、地下水を利用して日本酒を仕込んでいて、
県外からも「水がおいしいから」と買いに来るお客さんも多いという。

地下水仕込みの〈花垣〉を飲み比べた。
〈南部酒造〉のすぐ先にある〈伊藤順和堂〉では水まんじゅうを試食させてもらった。
夏を感じる清涼感のある和菓子で、大量の水と葛で固めてある。
店主の伊藤嘉健さんは「水を食べているようなものです」という。
水への感謝が詰まったお菓子といえよう。

〈伊藤順和堂〉の水まんじゅうは夏の風物詩。
まちなかから少し走ると、田んぼと、大きな葉が特徴の里芋畑が交互に広がる
上庄地区にさしかかった。大野の特産はこの里芋だ。
訪れたのは明治からこの場所で里芋をつくっているという〈中村農園〉さん。
里芋の収穫期は9月下旬からなので、訪れた8月はまだこれから大きく成長していく時期。
「ここ数日、雨が降らなかったので、今日は畑に水を流します。
明日の朝、陽が出る直前に水を抜きます。すべて水のおかげです」
という〈中村農園〉の中村勝利さん。

〈中村農園〉の中村勝利さんは、この道50年以上!
中村農園の里芋でつくった、煮っころがしを試食させてもらった。
里芋の収穫期は秋なので去年の里芋だったが、とてもおいしい。
醤油、砂糖、みりんで皮を剥かずに煮るだけのシンプルな煮物だが、
大野の里芋は身がしっかりとしまっていて歯ごたえがあるので、
煮くずれしにくいという。
目の前を流れる水路には、すごい勢いで水が流れている。
秋の収穫後になれば、この水路に里芋洗い機が設置され、
大野各地で湧水で里芋を洗う様子を見ることができるだろう。
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