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ちちぶメープルプロジェクト vol.7
みんなの力でシュガーハウス改装!

Local Action
vol.075

posted:2016.4.13   from:埼玉県秩父市  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  埼玉県秩父市。山々に囲まれ、自然豊かなこの地で、
メープルシロップをつくる取り組みが行われています。
その秩父の森で生まれたメープルシロップを味わえる〈シュガーハウス〉ができるまでを
秩父にUターンした井原愛子さんが綴る短期連載です。

writer profile

Aiko Ihara

井原愛子

いはら・あいこ●埼玉県秩父市生まれ。2014年外資系企業を辞めて、秩父にUターン。秩父の森づくりを行うNPOやメープル関係団体の活動に参加しながら、自然とそこに関わる人々にたくさんの刺激を受け、勉強の日々。2015年に自然の恵みを生かした商品開発やエコツアーの企画などを行う〈TAP&SAP〉を立ち上げた。現在、シュガーハウスオープンを目指して、秩父の地域プロデューサーとして日々奔走している。
http://tapandsap.jp

credit

協力:NPO法人秩父百年の森 http://www.faguscrenata.com/

日本初の機械を輸入!

秩父のメープルの活動の拠点となる〈シュガーハウス〉をつくりたい。
場所を探し続け、〈秩父ミューズパーク〉でやっと見つけた
念願のシュガーハウス候補物件のログハウスでしたが、
当時その建物は市の所有物でした。
そこで市の担当者に理由を話して、特別に中を見せてもらいました。

長年使っていなかったけど、建物内はとてもキレイ!

外の雰囲気だけでもとても気に入ったのですが、中に入ってみると
ログの温かみのある感じもとてもすてきで、ますます気に入りました!
「ぜひここを借りたい!」と、意気込んで
秩父観光土産品協同組合の理事長とともに、秩父市長に会いに行きました。

シュガーハウスの構想を話し、ぜひ貸してほしいとお願いしたところ、
想像以上に快く貸していただけることになりました。
市の後押しを受けて、シュガーハウスプロジェクトはますます加速していきます。

まずは去年の夏、前回も紹介した、カナダの滞在中に知り合いになった
Williams farmを再び訪問。
目的は、メープルシロップ製造機械を買うこと!
そして、機械の扱い方をマスターすること!

ジョンさんのシュガーハウスは築200年の納屋を改装したもの。

オーナーのジョンさんは、若い頃に日本で英語の先生をしていたこともあったり、
奥様が日系カナダ人であったりと、不思議と日本に縁があったのです。
会うのは2度目なのに、長年知っていたかのような錯覚を覚えました。
ジョンさんのもとでメープル修業をし、帰国後、
メールでやり取りをしながら日本初のメープル機械を輸入するために奔走。

そして、通関業務を担当してくれた方の強力なサポートのもと、
食品製造装置の審査というハードルの高い問題をなんとか解決することができました。
船便でコンテナに詰まれた荷物たちが、
やっと秩父に到着したときには本当にうれしかったです!

しかし、安心したのもつかの間……。
人力で大きな木枠を運び出し、公園の中へ搬入。

遠路はるばるカナダから到着した荷物たちと格闘。

バラバラになっている機械を、説明書がないなか、なんとか組み立て、設置しました。
シュガーハウスにマストな煙突も設置して、
いよいよシュガーハウスらしくなってきました。

ここからメープルシロップを煮詰める煙が立ち昇ります。

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いよいよログハウスのリノベーション開始!

Page 2

立ちはだかるログの壁

シュガーハウスの建物は、もともとゴルフの
ショートコースの受付などを行うスタートハウスでした。
そのため、建物の中心部がトイレという一風変わった間取りで、
壁に取り囲まれた空間になっていたのです。
せっかく日本初のメープルの機械を導入したのだから、
ここでお茶が飲めたりパンケーキが食べられたらいいよね! 
ということで、カフェも併設するために改装することになりました。

ここでも資金的な問題が発生。
市や商工会議所の支援を受けて、総務省の補助金
〈地域経済循環創造事業交付金〉を受けることができました。
皆さんの税金、無駄なく上手に活用して、
地域活性に貢献できるようにしなくては! と気合いが入ります。

しかし、問題はまだまだ起こります。
ログハウスの改装というのは通常なかなか行われることがなく、
設計の方からはかなり難しい仕事だと難色を示されたりしました。
ログハウスには柱がなく、ログ(丸太)を積み上げて建物全体を支えているので、
壁を簡単に抜くことはできないのです。

そんな難しい仕事を、おもしろいと快く引き受けてくれたのが、
シキナミカズヤ建築研究所〉の敷浪一哉さんです。
普段は住宅をメインに設計をしている敷浪さんですが、
横浜の黄金町で元旅館を改装した〈竜宮美術旅館〉のプロジェクトに参加していたり、
まちづくりや地域活性にとても関心があり、
このメープルプロジェクトにも賛同してくれました。

横浜から毎週のように現場に通ってくれた敷浪さん(右)。地元の大工さんとの打ち合わせも入念に。

ログの壁を抜くというのは、構造上とてもリスクが高いため、結局諦めましたが、
その代わりに建物の空間と抜けをつくった提案で、
ログハウスに新たな可能性を示してくれました。

自作の模型を使って、プランを説明してくれます。できあがりが想像しやすい!

壁にもともと窓がついている部分は、窓から下の部分のログを切り取っても
強度は問題ないということで、ログをチェンソーで切り取っていきます。

ログを切り破るのはすごい迫力。壁がなくなると視界がすっきり!

切り取られたログの山。

誰も挑戦したことがないであろう、ログハウスの改装に果敢に挑戦してくれた敷浪さん。
照明や家具などのアドバイスやプランも提案してくれ、
通常のログハウスの概念を覆してくれました。
できあがりが、いまから楽しみで仕方ありません。

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外観にもある工夫を凝らすことに…!

Page 3

謎のベールが取れた!

シュガーハウスは、建物内はもちろん、外観もとても重要になってきます。
この建物は、ミューズパークの南北全長3キロにも及ぶスカイロード沿いに
建っているのですが、背の高い生垣で建物がすっぽり隠れてしまっていました。

工事前の様子。生垣が邪魔……。

生垣のせいで、そこに建物が建っていることすら気づかない人も多いのです。
人目につくようにするため、思い切って生垣を取って、
建物の正面に入り口を設けました。

工事後、シュガーハウスが姿を現しました。

この大がかりな工事を引き受けてくれたのが、
川越を中心に活動している〈kitokusa〉の小林陽一郎さん、恵さんご夫婦です。

小林さんご夫婦と娘さん。娘さんは、シュガーハウスへのアプローチの枕木を歩くのがお気に入り!

短い工期と限られた予算で、枕木を使った
センスのいいアプローチをつくってくださいました。
もともと〈TAP&SAP〉のメンバーの紹介で知り合ったkitokusaさん。
そのセンスのよさとナチュラルな雰囲気の大ファンになって、
今回のプロジェクト参加にラブコールを送ったのでした。
ご夫婦で作業をしたり、時には娘さんも現場に来てお手伝いをしてくれ、
家族一丸となって協力してくれました。

打ち合わせもみんなで一緒に。プランから施工までの期間、日々娘さんの成長を感じてほっこり。

敷浪さんや小林さんご夫婦など、信頼し尊敬できる人たち、
地域内の人と外の人の力が結集して、
少しずつシュガーハウスができあがってきています。
その過程を大切にしながら、今月27日のオープンまで駆け抜けます!

そしていきなりですが、シュガーハウスをつくり上げていく過程に、
一緒に参加してくれる人を大募集します!
ペンキ塗りや家具の組み立てなどをワークショップ形式で
やりたいなと思っていますので、ぜひ皆さんのお力をお貸しください!

募集の詳細はこちらまで。

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