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障がい者が参加できる
ブランドをつくる
琉Q/4NA4NA 前編

貝印 × colocal
「つくる」Journal!
vol.024

posted:2015.10.27  from:沖縄県那覇市  genre:ものづくり / 活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  歴史と伝統のあるものづくり企業こそ、革新=イノベーションが必要な時代。
日本各地で行われている「ものづくり」もそうした変革期を迎えています。
そこで、今シーズンのテーマは、さまざまなイノベーションと出合い、コラボを追求する「つくる」Journal!
ものづくり・しくみづくり・ひとづくり・食づくり、場づくりetc、
貝印 × コロカル × earthradioチームが、フレキシブルにテーマを取り上げていきます。

writer's profile

Tomohiro Okusa
大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer

Suzu(Fresco)

スズ●フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。
http://fresco-style.com/blog//

障がい者作業の工賃アップ作戦!

〈琉Q(ルキュー)〉は、沖縄県産にこだわったブランド。
海水塩や島胡椒のピィパーズ、コレーグース、アセローラジャム、
パッションフルーツバター、塩パインバターなどを発売している。

この生産には、県内の障がい者の方々が製造に関わっている。
おもな作業は掛け紙、ラベル貼り、梱包などだ。
施設でビンの管理をしてもらい、近くの工場まで配送するという仕事もある。
これらの仕事をコーディネートしているのは、
障がい者を支援する県の外郭団体である〈一般財団法人 沖縄県セルプセンター〉の
萱原景子さんだ。

「施設それぞれで、商品をつくっては売るということをやっていますが、
もちろんものづくりも販売もプロではなく素人集団。
デザインの概念もありませんし、同情で売れていることが多いです」という萱原さん。

沖縄県セルプセンターの萱原景子さん。

全国の障がい者の就労施設では、施設利用者がさまざまな仕事に従事している。
しかしその工賃は、
全国平均で1か月に14,377円(平成25年度/厚生労働省障害福祉課調べ)だ。
国は、工賃を倍増させようと試みているが、なかなかうまくいかないのが現状である。
商品の力をつけて売る手法を考えないと、利用者の工賃を上げることはできない。
そこで〈沖縄広告〉とともに、このような現状を打破すべく動き出した。

「各施設でつくっているものをお祭りやフェアなどで販売するお手伝いから始めました。
しかし、どうしても商品のクオリティが高くないなかで、情で買われてしまいます。
そういうコミュニケーションの仕方には、限界があると思うんです」
と話してくれたのは、沖縄広告の仲本博之さん。

社会貢献として捉えられてしまい、一時的な売り上げにしかならない。
日常としては受け入れてもらえない。そこで考え出されたのが、〈琉Q(ルキュー)〉だ。
ブランド化し、障がい者のストーリーはあくまでバックグラウンドにすることで、
消費者に感覚的に共感してもらえる商品でなくてはならない。
まずは、沖縄の各地でつくられている滋味豊かな食を、
デザイン性も高く、パッケージする。
ここに共感を持ってもらうことが大切だった。

沖縄広告の仲本博之さんは、沖縄生まれのしまんちゅ。

これまでは施設が自由につくったものを売るという流れだったが、
ひとつのブランドをつくり、
その中のいくつかの作業を施設に発注していくという流れに変えた。
ものづくりのフローを逆向きにし、まずは商品力を高める。
結果、売り上げが伸びることで、生産数を増やしたり、
新しい商品や工程を生むことで工賃に還元できる仕組みだ。

“もの自体の良さ”で売っていくということは、
市場のものと同じ土俵で勝負するということ。その意味では、クオリティも重要だ。
クオリティを一定に保って、納期を守る。
ごく当たり前のことのように思えるが、施設だとそれが難しい場合もある。
消費者に言い訳はきかない。ここに矛盾があるという。

「仕事ではあるけど、施設にとって、一番は利用者さん。
無理をしてまでやらせたくないという心情が働きます。
それで納期が遅れていくということもあります」(萱原さん)

「国が工賃アップといいながらも、福祉とビジネスは切り離して考える風潮があります。
日本が抱える問題がコンパクトなかたちで表れていると思います」(仲本さん)

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クリエイターのデザイン感覚やクリエイティブな視点をとり入れる。

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クリエイターと恊働してキャンバスバッグを縫う

もっと主体的に障がい者が関わるブランドもつくった。
それが〈4NA4NA〉だ。“誰かにあげたくなる、おみやげ”がコンセプト。

琉Qとは逆に、施設がもとから持っていた特技を生かしたものづくりだ。

「もとからある施設の商品を利用して、
そこにクリエイターさんの力をお借りして新しい商品をつくりました」
と萱原さんが言うように、クリエイターとコラボレーションして、
デザイン感覚やクリエイティブな視点をとり入れている。
まずは各施設ができる能力をリサーチ。
その能力とコラボレーションできそうな県内在住のクリエイターを探した。
木工ができる施設や陶器をつくっているところ、畑を持っている施設もあった。

手縫いのアクセントが利いたキャンバストートバッグは、
〈ドリームワーク そてつの実〉という社会福祉法人の施設が製作している。
ここはもともと、縫製などをやっていたので、
その技術を生かせるクリエイターを探し、〈nana san maru〉が担当することになった。
nana san maruは、上原 智さんと島袋零二さんのユニットで、
一点ものの衣装やユニフォームなどを手がけている。

「まずは何ができそうか、現場を見学しに行きました。
施設利用者ができるちょうどいいものは何かを考えました」(上原さん)

絵を大きくデザインして、糸やリボンを縫いつけて装飾したキャンバスバッグ。photo:編集部

nana san maruの上原 智さんと島袋零二さん。オリジナルブランドも手がけている。photo:編集部

そてつの実では、これまでにも不要になった洋服を解体して
シュシュやティッシュカバーなどをつくっていたので、縫製の能力が高かった。
しかし施設利用者にとっては、仕事ではないので、
それを専従してやっているわけでもないし、
必ず毎日一定の時間を作業に充てられるわけでもない。
それゆえに、生産数もまちまちになってしまいがち。
その“ちょうどいい”ところを探すのが難しい。

「同じ施設のなかにも、技術の差が当然あります。
だからなるべくみんなができることを探しました」(上原さん)

難し過ぎることをやらせることもできない。そこで、みんなに絵を描いてもらった。
その絵がインパクトのあるものだった。

「すごく独創的な絵がたくさんあったんです。
だからそれを中心にしてみようと思いました」(島袋さん)

そてつの実のサービス管理責任者である石川あけみさん(左)と池原奈緒さん(右)。

ひと針ひと針、ていねいに縫っていく、根気のいる作業。

小さなキャンバスバッグの中心に、その絵をプリントする。
それを作品と見立て、周囲を額縁のように手縫いで縁取りしていく。
縫う箇所には、ガイドがプリントされていて、それに従って縫っていくようになっている。
プロジェクト立ち上げ当初は、何度も施設に出向き、
手取り足取り、技術指導を行ったという。

作業内容はやりながら改善していった。
初期モデルでは1日で1枚分しか縫えなかったが、
だんだんと1日で4、5枚縫えるようにシンプルなモデルに改善した。
そして今ではまったくノータッチ。

「めちゃくちゃ明るくて、楽しそうに作業してくれているのが、なによりうれしいです。
単純作業だけど、ひとつの才能ですね」(上原さん)

そてつの実のサービス管理責任者である石川あけみさんも言う。
「同じことを繰り返し作業していることで、自分で考えて作業するようになりましたね。
とにかく継続して仕事があることはうれしいことです」

この日は、2名が作業にあたっていた。壁には縫い方のマニュアルが。

そてつの実では、バッグにリボンを縫いつける技術を生かして、ヘアゴムもつくってみた。
4NA4NAによって、できる技術をひとつ増やすことができ、
ほかの商品もアレンジすることができるようになっている。

これによってプライドや達成感が生まれる。
シンプルな作業にすることで成果物が増えたほうが、達成感が大きいのだろう。
施設利用者である障がい者にとって、自分の手がけた商品が、
大きなデパートや空港などの店頭で売られていることに大きな喜びがある。

「実際、売り場に見に行っている方もいます。
いろいろな人の目にふれるとやはりうれしいですよね。
今後のやる気にもつながります」(萱原さん)

各施設のみで個別に商品をつくっていただけでは、なかなかそんなチャンスは生まれない。
施設はそもそもものづくりのための場所ではないし、
ひとつの施設でできることも限られている。

「それぞれの施設だけでは、お金をかけられません。
だからうちのような施設を横断して見ることのできる団体が必要なのです」(萱原さん)

沖縄県セルプセンターのような団体と、施設に工賃を生み出す仕組みが重要だ。
それが、だれしもが参加しやすい社会への第一歩かもしれない。

後編【“食と職”を大切にした日常の沖縄 琉Q 後編】はこちら

Information

琉Q

http://ruq.jp/

4NA4NA

http://4na4na.jp/

沖縄県セルプセンター

http://www.okiselp.jp/

社会福祉法人 そてつの会

http://www.sotetsunokai.com/

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