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TOPIC 柳津西山地熱発電所

100%Village
vol.006

posted:2012.4.18   from:福島県河沼郡柳津町  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  全国に52カ所ある、自然エネルギー自給率100%の地域 = 100%Village。
TOPICでは、全国各地の100%Villageやそれを目指そうとするモデルケースをひもとき、
STUDYでは、自然エネルギーにまつわる用語を解説していきます。

writer's profile

Takeshi Magami

馬上丈司

まがみ・たけし●千葉大学法経学部非常勤講師。千葉大学人文社会科学研究科公共研究専攻博士後期課程修了 博士(公共学)。専門はエネルギー政策論・公共政策論・環境マネジメントシステム論。

国内最大の地熱発電所。

国内最大級の河川水流量を有する阿賀野川に、
福島県喜多方市で合流する只見川は、その最大の支流であるとともに、
戦前から首都圏の電力需要を支えてきた国内最大の水力発電地帯です。
尾瀬を源流とし、年間降水量が3,000mmに達する多雨地帯にある只見川では、
明治の末頃から水力発電所の開発が計画され続けてきました。
戦後も、1951年に「只見特定地域総合開発計画」が策定されてからは、
次々と大規模水力発電所の建設が始まりました。
現在は、最上流部に国内第二位の貯水量を誇る人造湖、奥只見湖(銀山湖)と、
国内最大の水力発電所である奥只見水力発電所が稼働しています。
このような歴史を持つ只見川の流域に、福島県河沼郡柳津町はあります。
町内には、同総合開発計画で最初に建設された柳津発電所(出力75,000kW)があり、
さらに西山温泉のある西山地区には柳津西山地熱発電所(出力65,000kW)があります。
東北電力が運営する同地熱発電所は、
単独の発電施設として国内最大の出力を持ち、
1995年に運転を開始した国内では新しい地熱発電所です。年間発電電力量は、
直近3年間(2008~2010年)は約2.2~2.8億kWhで推移していて、
国内の再生可能エネルギーによって供給される電力の約1%を生産しています。
私は、2010年秋に現地を訪れ、この発電所を視察しました。
柳津町役場から車で40分近くかかる山中にある地熱発電所は、
通常無人で稼働していることから、道中にすれ違う車もありません。
現地では、発電所の稼働音だけが山中に響いていました。
ここでは、「シングルフラッシュ」という
熱水の蒸気だけを分離して発電する方式がとられていて、
発電所の周辺では地下1,500~2,600mまで掘削した、
生産井という蒸気を産出する井戸から立ち上る蒸気があちこちで見られます。
そして、23本ある生産井から発電所へと熱水を送り、
また水を地下へ戻す3本の還元井への導水管が、
山肌を這うように設置されています。
その設備の規模は、まさに国内最大の地熱発電所という言葉にふさわしいものでした。
わが国の地熱発電は、火山の周辺など有望な地熱開発地点の多くが
自然公園法による国立公園や国定公園に指定されているため、
開発に大きな制約がかけられています。
また、温泉地では地熱開発が温泉に与える影響への懸念などから、
反対が起きることもあります。
しかし、最近では、再生可能エネルギーへの関心の高まりと共に、
新たな地熱発電所の建設計画が立ち上がったり、
自然公園の開発規制が緩和されたりと、
停滞していた地熱開発が再開されようとしています。
古くからのエネルギー供給源である水力発電所と、
新しいエネルギー供給源である地熱発電所が稼働する柳津町は、
まさに日本の近代エネルギー政策の縮図といえるでしょう。

柳津西山地熱発電所

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