連載
posted:2012.3.15 from:山梨県北杜市 genre:活性化と創生
〈 この連載・企画は… 〉
全国に52カ所ある、自然エネルギー自給率100%の地域 = 100%Village。
TOPICでは、全国各地の100%Villageやそれを目指そうとするモデルケースをひもとき、
STUDYでは、自然エネルギーにまつわる用語を解説していきます。
writer's profile
Hidefumi Kurasaka
倉阪秀史
くらさか・ひでふみ●千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。 専門は環境政策論・環境経済論。著書に、『環境を守るほど経済は発展する』(朝日選書)、『エコロジカルな経済学』(ちくま新書)、『環境-持続可能な経済』
八ヶ岳連峰と甲斐駒ヶ岳に囲まれた北杜市は、
その豊かな水資源を活用して小水力発電にも取り組んでいます。
小水力発電とは、ダムを造らずに水の流れを利用した発電で
国際的にはおおむね出力1万kW未満のものを指します。
年間降水量世界第6位の日本は、
地形が急峻でダムを造らずとも発電に必要な落差を得ることができるため、
小水力発電に適した国といえます。
2007年4月に運転を開始した「村山六ヶ村堰水力発電所」は、
古くからある農業用水の水を活用して、
直径60cmの水管を農業用水脇に1.27km敷設し、
85mの落差を利用し、発電しています。
建設費用が4億4000万円かかっていますが、設置以来の稼働率は90%を超えており、
きわめて効率よく発電が行われています。
平成22年度の稼働率は96.3%ということでした。
出力が320kWの小水力ですが、稼働率が高いため、
年間の発電量はおおむね220万kWhです。
この数字は、前回紹介した「北杜サイト太陽光発電所」の約200万kWhを上回る数字です。
このように、再生可能エネルギー設備は、出力のみで比較できないところがあります。
稼働率が異なる(六ヶ村堰小水力90%超、北杜サイト太陽光約14%)ため、
この小水力は、見た目の出力は小さくとも、年間発電量で比較すると、
メガソーラーと同等かそれ以上の電気が生み出されるのです。
この成功をふまえて、丸紅が村山六ヶ村堰に
さらに3か所の小水力発電所(計650kW)を設置する工事を進めています。
昨年8月に現地を見学したところ、
建物の内部にチェコ製のフランシス型の水車が設置されていました。
内部では騒音がありますが、建物の外ではさほど気になりません。
農業用水など開水路を利用した小水力発電は、
落ち葉やごみなどの流れ込みが問題となりますが、
この小水力発電所では、取水口に自動巻あげ式の落ち葉・ごみ除去装置が設置されていました。
水流を利用して、落ち葉やごみをもとの流れに戻す仕組みです。
このような工夫が稼働率の高さを支えています。
この小水力発電所で作られた電気は、近くの浄水場に供給されます。
つまり、浄水場で節約された電気料金分が収入ということになります。
2011年度の年間売電収入は、2,000万円を見込んでいるということでした。
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