〈 この連載・企画は… 〉
コシヒカリの最「幸」級米を目指すプロジェクト、RICE475。
新潟県魚沼の米屋 廣新米穀店の4代目・覺張雄介が、日本の食卓と農業の未来を語ります。
writer's profile
Yusuke Gakuhari
覺張雄介
がくはり・ゆうすけ●1980年3月27日新潟県生まれ。A型。株式会社WV 代表取締役。 米どころ越後魚沼で戦前より続く米屋「廣新米穀」4代目。幼稚園の頃の夢は「悪魔」だったが、米屋を営む祖父の背中を見て、小学校3年生の文集には「米屋になりたい!」と無事に人間の道を選んだ。高校卒業後、アパレル業界へ進むために故郷魚沼を離れ、トレンドの移り変わりの速い業界で商売を学び、家業復活のために帰郷。 農業の様々な問題に直面し、魚沼を愛するひとりとして、次の世代に残せる地域づくりや農業の新しい形を勝手に模索中。
雪が溶けるとRICE475は、3度目の田植えがスタートします。
お米は1年に1度しか収穫できません。
米農家にとって大切な1年を預からせていただいている身分として、
豊作祈願と自身の精神を整理しに、寒行に行って参りました。
魚沼の八海山尊神社では、節分祭までの7日間、
凍てつく寒さと雪の中、寒行が行われています。
行者さん達は朝と深夜、水垢離をとり、五穀を断ち、護摩祈祷を行います。
僕のような一般人でも、予約を入れると1回のみの参加もOKのことでしたので、
収穫祭でもお世話になった
越後湯沢のプリンスこと、高橋五輪夫さんに手引きしていただき、参加してみることに。
僕が参加したのは2月3日の朝の回。
ちょうど大寒波が襲来! 一晩で車が完全に隠れるくらいの大雪。
農家山本家のご家族に心配されながらも、
もう後には引けぬと3m超えの積雪の中、山の神社へ向かいました。
まずは滝行。
たどり着くや否や裸になり、渡された行衣に着替え列に並びます。ちょ~寒い!
そもそもサウナの水風呂さえ苦手なのに、
なぜこの雪の中、わざわざ滝に打たれに来たのかと、まずは後悔。
滝に入る順番が近づくと、先達さん(行者を導いてくれる人)が背中に塩を塗ってくれます。
僕の番になると、
「兄ちゃん何しに来たの? サラリーマンか?」
と珍しそうに先達さん。
僕が「気合を入れに来ました!」と答えると、背中をバチンと叩かれ、いざ滝の中へ。
凍らないのが不思議なくらいの水温の水を浴びながら、
今年も美味しいお米が収穫できますようにと祈りを込めました。
水の音越しに、お経とホラ貝の音が心にしみ込む感覚。
寒さを忘れ、先達さんから引っ張られるまで、遠くの世界へ行ってました。
危なかったのかな。笑
放心状態で滝から上がると、
集落の方々のご好意により焚き火をしながらタオルを温めて待っていてくださいました。
濡れた行衣を脱がされて、ほかほかタオルに包まれた瞬間に、現実世界へカムバック。
頭も体もスッキリ蘇りました!
その後、着替えを済ませ、里宮に上がり護摩行へ。
護摩とは火中に供物を投じ、護摩木を投じながら祈願をすることです。
行者が火を焚きながら祈りを捧げる行為は非常に尊く美しく感じました。
護摩行が終わると、箱からふかしたじゃがいも登場。
護摩の火で炒られた塩をつけて腹ごしらえを。
これがまた美味い☆ 僕はそこに神様を感じました。笑
その日は節分ということもあり、集落の方々と豆まき開催!
さすが魚沼、大根やキャベツも飛んで来ました。笑
そんな感じで、僕の寒行初体験は終了。
感謝の気持ちと日本文化の美しさを実感でき、
非常に実りのある寒行になりました。
帰ってから、周囲にこの話をすると、「来年は行きたい!」という人が殺到!
来年は寒行ツアーを組むことに。
収穫祭の座禅も好評でしたが、断食体験なども人気です。
身も心も研ぎ澄まされたいという願望の方が多いのですね!
僕も寒行が毎年の恒例行事になりそうです。
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