連載
posted:2014.5.22 from:富山県南砺市 genre:活性化と創生
〈 この連載・企画は… 〉
世界遺産もあり伝統工芸も盛んな富山県南砺市と、
リバース・プロジェクトが組んだプロダクトの共同開発やエコビレッジ構想が始まった。
地域にまたひとつ新しい種がまかれる、その実践をレポート。
editor’s profile
Tomohiro Okusa
大草朋宏
おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。
富山県南砺市の井波彫刻は、寺院の修復や、住宅の欄間などを中心に栄えてきた。
しかし伝統彫刻ばかりでは、今後の先細りが予想される。
「技術を残していくためには、伝統的なデザインばかりにこだわっていてはダメです。
しかし私たちだけで新しいデザインを考えるのも難しい。
そこでリバースプロジェクトに力をお借りました」と、
南砺とリバースプロジェクトのコラボ彫刻のきっかけを教えてくれたのは
南砺市産業経済部長の原田 司さん。
「新商品開発と販路拡大がポイント。
売れることが彫刻師を守ることになります」というように、
井波彫刻のすばらしい技術を売れる製品に落とし込むことが至上命題だ。
デザインを担当したリバースプロジェクトのデザイナー、
平社(ひらこそ)直樹さんはいう。
「現代の生活様式に合ったプロダクトに落とし込むべきだと考えました。
ものが廃れずに存在するには、
生活に即した機能を持っているべきだと思うからです」
こうして考え出されたのが照明とお皿だ。
どちらも技術の高さを直接的に目で見て感じることができる。
一方では、井波彫刻の伝統に敬意を払い、
現代装飾であるモビールを、古典的な題材を用いてつくる試みにも挑戦した。
それが風神・雷神のモビール。
そもそも風神・雷神ならば、井波彫刻の職人にとってはお手のもの。
しかしモビールに用いるという発想は生まれない。
「彫刻師も次のステップに進まないといけません。
ここから先はこちらの話」と原田さんはいう。
リバースプロジェクトとのコラボから得た刺激を、
彫刻師がどう活かし、南砺市がどうバックアップしていくか。
「井波彫刻の職人さんたちは、通常、デザインから下絵、仕上げまで、
すべての工程をひとりで行います。
そんな職人魂に火をつけられるようなアイデアを提案しようと心がけました。
驚きや戸惑いのあるデザインを起こすことで、
慣習から離れ、新しいスタイルが生み出されればという希望をこめたつもりです」
井波彫刻の行く末は、こう語る平社さんの思いともリンクする。
「ものの価値はつくり手が一方的に決めるのではなく、
また市場が一方的に決めるものでもありません。
人々が潜在的に求めているものを探り続ける作業のなかから、
意味のある良いものが生まれます。
今回のプロジェクトでその螺旋階段を一段でも上ることができたのなら
ものづくりに関わる人間として幸せです」
お互いに刺激を与え合うコラボレーションによって、
それぞれのものづくりにフィードバックされていく。
そして井波彫刻もまた、新しいものづくりの地平に進むのだろう。
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