のみだけで仕上げる井波彫刻の技術力を活かして 後編
伝統彫刻の先を見据え、現代的プロダクトに融合する。
富山県南砺市の井波彫刻は、寺院の修復や、住宅の欄間などを中心に栄えてきた。
しかし伝統彫刻ばかりでは、今後の先細りが予想される。
「技術を残していくためには、伝統的なデザインばかりにこだわっていてはダメです。
しかし私たちだけで新しいデザインを考えるのも難しい。
そこでリバースプロジェクトに力をお借りました」と、
南砺とリバースプロジェクトのコラボ彫刻のきっかけを教えてくれたのは
南砺市産業経済部長の原田 司さん。
「新商品開発と販路拡大がポイント。
売れることが彫刻師を守ることになります」というように、
井波彫刻のすばらしい技術を売れる製品に落とし込むことが至上命題だ。
デザインを担当したリバースプロジェクトのデザイナー、
平社(ひらこそ)直樹さんはいう。
「現代の生活様式に合ったプロダクトに落とし込むべきだと考えました。
ものが廃れずに存在するには、
生活に即した機能を持っているべきだと思うからです」
こうして考え出されたのが照明とお皿だ。
どちらも技術の高さを直接的に目で見て感じることができる。


波打つ細工の上にアクリル板を配して、プレートに仕立てた。食事しながら、同時に彫刻の美しさを堪能できる。
一方では、井波彫刻の伝統に敬意を払い、
現代装飾であるモビールを、古典的な題材を用いてつくる試みにも挑戦した。
それが風神・雷神のモビール。
そもそも風神・雷神ならば、井波彫刻の職人にとってはお手のもの。
しかしモビールに用いるという発想は生まれない。

伝統彫刻の風神雷神はさすがの出来栄え。宙に浮かぶモビールとして、生まれ変わった。
「彫刻師も次のステップに進まないといけません。
ここから先はこちらの話」と原田さんはいう。
リバースプロジェクトとのコラボから得た刺激を、
彫刻師がどう活かし、南砺市がどうバックアップしていくか。
「井波彫刻の職人さんたちは、通常、デザインから下絵、仕上げまで、
すべての工程をひとりで行います。
そんな職人魂に火をつけられるようなアイデアを提案しようと心がけました。
驚きや戸惑いのあるデザインを起こすことで、
慣習から離れ、新しいスタイルが生み出されればという希望をこめたつもりです」
井波彫刻の行く末は、こう語る平社さんの思いともリンクする。

初めて井波彫刻を見たときに「すごい技術だと思った。同時にすごく手間がかかっているので、高くなるのも仕方ないと感じた」という平社さん。
「ものの価値はつくり手が一方的に決めるのではなく、
また市場が一方的に決めるものでもありません。
人々が潜在的に求めているものを探り続ける作業のなかから、
意味のある良いものが生まれます。
今回のプロジェクトでその螺旋階段を一段でも上ることができたのなら
ものづくりに関わる人間として幸せです」
お互いに刺激を与え合うコラボレーションによって、
それぞれのものづくりにフィードバックされていく。
そして井波彫刻もまた、新しいものづくりの地平に進むのだろう。

「風神・雷神の背中を見たことがありますか?」というのが原田さんの売り文句!