連載
posted:2023.4.10 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島のなかでもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
https://homemakers.jp/
4月、小豆島ではあっちこっちで春の景色が広がっています。
私が暮らしているところは、小豆島の肥土山(ひとやま)という農村集落で、
家のすぐうしろは山、家のまわりには畑や田んぼが広がっています。
わかりやすくいうと田舎です(笑)。
田舎にもいろいろあると思いますが、北海道みたいに遠くまで畑の風景が続くような
広大な田舎もあれば、小豆島のようにとってもコンパクトな田舎もあります。
ご近所さんの家がすぐ隣にあったり、家と家の間に小さな田んぼがあったりと、
狭いエリアに家や畑がぎゅっと集まっていて、それがこの場所の魅力でもあると思います。
さて、こんな場所で暮らしていると、
季節の移り変わりを教えてくれる要素がたくさんあります。
春がやってくるとき、最初に感じるのは「光」の変化。
2月上旬、立春の頃から、太陽の光が強くなっていき、
風景の色が少しずつ変わっていきます。
まだまだ気温は低く、山や畑も枯れ葉の茶色が目立ちますが、
日差しが強くなってくると、風景のコントラストも強くなっていき、
静かで穏やかだった冬もそろそろ終わりが近いなぁと
(農家としては繁忙期に入ってくるので)、ちょっとハラハラしてきます。
3月になると、わが家の庭のサクランボの花が咲き始めます。
サクランボの花は、観賞用の桜よりも1か月くらい早く咲きます。
うっすらピンク色の小さくて素朴な花ですが、
このサクランボの花が咲くといよいよ春がくるなといつも思います。
続いて、ご近所さんの家のハクモクレンが華やかに咲きほこり、
畑ではアブラナ科の野菜の黄色い菜の花や、
ルッコラの小さな白い花が次々と咲いていきます。
今年特にきれいだなぁと感じたのは、赤峰大根の花。
大根もアブラナ科なのですが、薄ピンク色の赤峰大根の菜の花がかわいいんです。
ちなみに食べるとピリ辛。
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小豆島には観光スポットになるような大きな花畑はないけれど、
庭や畑や道ばたなど島のあっちこっちに春の花が咲いています。
そういう暮らしのなかに点在している花がなんだかいいなぁと思います。
花がたくさん咲き始め、気温があがってくると、鳥たちも増えてきます。
朝洗濯ものを干していると、たくさんの鳥の鳴き声がします。
「ホーーホケキョ!」
鳥の鳴き声の教科書があったなら、それに載りそうなくらい上手に大きな声で鳴いています。
静かな朝の農村で、その鳴き声がよく響き渡る!
山の木々や畑の野菜、庭の花々など植物が近くにたくさんあって、
そこには虫や動物もいる。
当たり前のように広い空を眺めることができて、
太陽がどーんとあって、さんさんと照らしてくる。
そんな環境で暮らしていると、冬から春へと季節が移り変わっていく様子を
毎日とてもよく感じることができます。
小豆島で暮らすようになって、春夏秋冬という季節をよく感じ、味わうようになりました。
今はそれが当たり前だけど、まちで暮らしていたときは
そうではなかったよなと、ふと思います。
寒い時期に味噌を仕込んだり、梅が収穫できたら梅干しを漬けたり、
そういう仕込み仕事も自然のタイミングにあわせて行っていくこと。
季節の流れに上手にのれると、もっと心地よく暮らせるのかもしれないなぁ。
実は春は私にとって、ちょっとざわざわする季節だったりします。
目がかゆくなったり鼻がむずむずしたりするし、
農家としては繁忙期に入る大変なシーズン……。
そして人間にとってあまりうれしくない、いろんな虫も活動を始めます。
そんなことも含めて、季節を感じながら、日々過ごしていくのが田舎暮らしなんですかね。
今年も春夏秋冬、それぞれの季節を味わいすぎるほど味わいながら
進んでいくことになりそうです。
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