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小さな畑や家業が里山の風景をつくる

小豆島日記
vol.041

posted:2014.1.27   from:香川県小豆郡土庄町  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。

writer's profile

Hikari Mimura

三村ひかり

みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が異様に強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HomeMakers」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、カフェ、民宿をオープンすべく築120年の農村民家を改装中。
http://homemakers.jp/

この風景を残し続けるために。

1月末、大寒から立春までのこの時期が、1年でいちばん寒い季節。
今朝も外に置いてある水鉢に立派な氷が張っていました。

庭の水鉢に張った立派な氷。

この時期、畑作業は比較的のんびりしています。
もちろんやることはてんこ盛りなんですが、
草刈りと水やり、次々と育つ作物の収穫をしなくてもいい分、
夏に比べると余裕があるという感じ。
そして何より気候的に体が楽。
夏の日中は暑すぎて、外での作業は本当に過酷。
冬は防寒対策さえしっかりすれば、日中の作業は穏やかです。

私たちが暮らしている肥土山(ひとやま)の集落全体もいまはそんな雰囲気。
ゆっくりと育つ白菜や大根を少しずつ収穫しては、
自分の家で食べたり、おすそ分けしたり。
そして空いた時間に、切り干し大根をつくったり。

肥土山の冬の畑と田んぼ。白菜や大根がそこら中の畑で育てられています。

おばちゃんと一緒に切干大根づくり。こういうのも肥土山の風景。

干した大根と人参。これで長いこと保存できるようになる。

肥土山には共同の水洗い場がぽつぽつとあって、
そこで収穫したお野菜を洗ったりできます。
おばちゃんが野菜を洗っている、そういう風景に出会うとなんだか嬉しくなる。
あー、まだこの水洗い場は現役なんだなあと。

共同の水洗い場でお野菜を洗うおばちゃん。

そしてもうひとつ、冬の小豆島と言えばお素麺。
肥土山にも何軒かお素麺屋さんが残っていて、
この季節の天気の良い日中は、お素麺が天日干しされています。
真っ白なお素麺と澄んだ青い空のコントラストがほんとに美しい。
寒い時期につくられる「寒そうめん」は、
少ない塩でつくることができ、コシが強くておいしい。
そんなおいしいお素麺をつくるために、この時期は午前3時頃から作業するそう。
続けていくのが大変な仕事です。

天日干しされる「寒そうめん」。

娘の幼稚園のお友だちの家。素麺づくりが暮らしの一部。

跡を継ぐ人がいないと、この風景も肥土山からなくなってしまう。

肥土山はいまはまだ現役の集落。
こんなふうにして、そこに暮らす人たちが畑を維持したり、
家業を続けることで、風景が保たれてる。
でも、これがあと10年もするとどうなるのかなと時々考える。
畑を手入れする人が少しずつ減り、やがてそこは山に戻っていき、
お素麺屋さんも跡を継ぐ人がいないと、あの天日干しの風景はなくなってしまう。
この風景を残し続けるためには、ここで豊かに暮らし続けるためには、
そういうことを続けていく人を減らしちゃいけないんだなと思う。

きれいに手入れされた田んぼと家々。だんだんと山が迫りつつある。

冬の夕暮れ。ひとつひとつのシーンがきれい。

そんなことを考えながら、私たちはここに拠点を構えて人を招き、
そして畑を耕し野菜をつくることで、この集落と風景を保つことに
少しでも関われたらいいなと思っています。

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