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なぜ移住? なぜ下田?
若者に伝えたい
「東京ではできない暮らし」|Page 4

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.143

Page 4

「つくる暮らし」はどこでできる?
移住先探しの旅へ

2016年に勤めていた会社を辞めて、
その夏から「移住先探しの旅」をしました。
移住先探し? というのも、
先ほど書いたとおり僕も妻も東京育ちで地方に縁がなかったので、
我らが目指すような暮らしができる土地を探そうではないか?
となったのです。
実はこの連載はその旅とともに始まりました

どこにたどり着くのか? 移住は成功するのか?
まったく見えないのに、よく連載を始めたものだと
当時の自分たちに驚いてしまいます。

ワンボックスカーを改造中

車を車中泊仕様にDIYでカスタムして旅にでました。良き思い出です。

岡山や徳島、淡路島をまわり、三重県にたどり着き、
縁があって紹介してもらった三重と奈良との県境にほど近い
山奥の集落の家に出合い、
移住先探しの旅は終わったかのように見えました。

敷地の中に田んぼがあり、畑をする土地も十分にあって、
自分が思い描いていた「つくる暮らし」をするには
もってこいの環境で、意気込んで暮らし始めたのです。
ところが便利すぎる東京でしか暮らしたことがなかった
我ら3人にとって、その山奥の家はハードルが高すぎました。
いろいろと思うようにいかない点があって、
結局はそこに移住することを諦めたのです。

そして、再度移住先を探す旅をすることにしたのですが、
その場所として選んだのが伊豆半島でした。
実は、伊豆半島は当初から話に出たことがあったのですが、
「観光地」のイメージが強すぎて、
自分たちの求めるような暮らしはできないと思い込んでいたのです。

でも、いくら暮らしに必要なものを「つくる暮らし」とはいっても、もちろん稼がなければいけません。
観光という産業があれば、
仕事を見つけたりつくったりもしやすそうだ。
そうした思いも、一度山奥での暮らしを
挫折した経験があったからこそのものだったといえます。

観光地での「つくる暮らし」?

そして伊豆半島をめぐって、先端に近い下田に行きついたのです。

下田の海を散歩する津留崎さんと娘さん

その海の美しさ、開国の歴史や人を受け入れて成り立つ
観光地ならではともいえる開放的な人柄にとても惹かれました。
また、伊豆南部の中心地ということで、
人口2万人という小さな自治体でありながらも行政機関、病院、
高校、スーパーやホームセンター、家電量販店、
カーディーラーなどが集約されていて暮らしやすそうです。
ここでは米づくりはできないか? とも感じるほどに
田んぼは少ないのですが、知り合った人が田んぼをやっていて、
米づくりできるよと聞きホッとしました。
そして、条件のいい賃貸の家を
紹介してもらえることになったのです。

山から見下ろした下田のまち並みと下田富士

海と山に囲まれた開国の港町、下田。主幹産業は観光ですが、漁業も盛んで名物のキンメダイは全国一の漁獲高を誇る。

三重の山奥の家で挫折した経緯から、
いきなり購入するというのは避けたく思っており
条件のいい賃貸の家はとてもありがたかったです。
その家の立地は、コンビニやファミレス、
牛丼チェーンに加えて海水浴場や日帰り温泉施設まで徒歩圏内、
観光地ならではの飲食店が立ち並ぶ「まちなか」エリアにも
自転車で行けるという、
当初想定していた「田舎暮らし」とはだいぶ方向性が違いました。

とはいえ、広い庭では野菜をつくることもできそうだし、
近場に釣りスポットも多くあったりと、
この地ならでは、自分たちなりの「つくる暮らし」ができるのでは? と
その家を借り始めたのです。

真っ青に澄んだ下田の海

こんな綺麗なビーチが徒歩圏内に!? 当初はまったく思い描いていなかった移住先ですが、子育てには最高の環境といえます。

移住して1年ほどしてから始めた念願の米づくり。
下田の隣、南伊豆町の米農家 中村大軌さんや
下田の友人たちのサポートがあって始めることができました。

田植え作業

初めての田植え。田植えまでの段取りは? どうやって植えるの? どう育つの? 水はどうやって引いてどう貯めるの? とにかく、わからないことだらけでした。

さらには、知り合った猟師さんがシカやイノシシをさばくのを
手伝ったり(免許もとりましたが、
未だに自分ひとりでは何もできないペーパー猟師です……)、
仕事では農園の開拓を手伝ったりと、
いわゆる「田舎暮らしスキル」もそれなりに身につけていきました。
結果としては、コンビニや飲食店が近くにあったり
海水浴場の近くだったりという
日常を便利に楽しめるような立地でありながら、
米づくりなどの「田舎暮らしスキル」も身につけることができて、
本当にありがたい環境だと感じています。

その後、賃貸では物足りなくなり、
同じ集落に古民家の空き家を見つけて、
不動産業者を通さずに直接購入し
(同じ集落に移住してきていたから
こうしたやり取りが成立したのかと思います)、
自分たちの暮らしにあうようにDIYでリノベーションしました。

購入した2棟の古民家

古民家の隣の離れも一緒に買わせてもらい、離れには東京でひとり暮らしをしていた僕の母親が移住してきて暮らしています。この2棟の住宅とさまざまな果樹が植わっている庭、10台は停めれる駐車スペースで、東京でいったら小さなマンションも買えないような金額で購入させてもらいました。すっからかんになりましたが、ローンを組まずに購入できたので、家賃もローンもかからずで本当にありがたいです。

古民家の床をリノベーション中

妻と娘も参加してリノベをしました。解体や大工工事、塗装、タイル貼りはほとんどを業者に頼まず自分たちで。

古民家では使っていなかった井戸を復活させたり、
あらたに太陽熱温水器や薪ストーブを導入したり。
まだまだ発展途上ではありますが
自然の資源・エネルギーを無理なく取り入れる暮らしを
探求していきたいと思っています。