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東京に戻ることも考えていた?
移住してから5年、
ようやく「始まった」下田での暮らし|Page 3

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.135

Page 3

娘の気持ちを考える

そんなきっかけから地方への移住、
下田への移住をすることになったのですが、
なぜ東京に戻りたいと思ったのか。
その理由のひとつが娘のこと、
そしてもうひとつが東京の実家で暮らしている母のことでした。

雪が積もる中、三重県に引っ越した津留崎さん一家

三重県の山深い地域に移住することを決め、一度は引っ越しをしたのですが……。(詳しくはこの連載のvol.10前後に書いています)

娘はいま小学5年生になりますが、
下田に移住したのは幼稚園の年長のときです。
一度は三重県への移住を考えトライしたもののうまくいかず断念。
三重への移住がうまくいかなかった理由は、
娘がそれまで東京で同居していた従兄弟たちと
離れることの寂しさからでした。
生まれてからずっと一緒だった従兄弟たちとの別離、
今までとはまったく違う環境への不安。

そうして東京に一度戻り、
東京と行き来しやすい場所で
もう一度だけトライしてみようと決めたのが下田でした。
下田に移住してからも、
実は何度か東京に戻りたいと娘が私に言ってきたことがありました。
その度に私の気持ちはとても揺れました。

この子にとって、何を優先したらいいのか。
安心できる環境にすぐ戻すべきではないか。
幾度となく夫と話し合い、
東京の実家に毎週末連れて行きながら様子を見てきました。
何度も迷いながら、不安になりながら、
この5年間を下田で過ごしてきたのです。

本棚の前で写真集を眺める津留崎さんの娘さん

下田の海でシュノーケリング中

幼稚園のときに出会った友だち。同じ小学校に通っていて、娘が自然体でいられる親友です。

娘は来年、小学6年生になります。
このまま下田の中学校に進学することもできますが、
もし娘がのぞむなら進学のタイミングで
東京の実家に戻るのもありなのではないかと私は考えていました。
今年の夏には、娘と一緒に東京の中学校の見学にも行きました。
両方の選択肢を与えたなかで、
最終的に本人に選ばせようと考えていたのです。

そうして本人が選択したのは、下田の学校でした。
理由は? と聞くと、小学校の友だちと離れたくないのだそう。
東京の学校に行けば新しい友だちもたくさんできるし、
実家にまた住むことができるよ? と私が伝えると、
「いいの、下田がいいの」と。

そして、今までは私の東京出張に同行したがっていた娘でしたが、
最近では夫と一緒に下田に残ることを選びます。
自分の部屋で絵を描くのが好きだったり、大好きな飼い猫がいたり。
下田での暮らしは、今となっては居心地がよいようです。

娘さんが描いた、いろんなポーズの猫のイラスト

下田に移住してから猫を飼い始めました。それがきっかけで猛烈な猫好きになり、気づくと猫の絵を描いているほどです。LINEスタンプをつくってみようよ! と描いた猫たち。

ヤギと散歩する様子

下田にはいろんな動物を飼っている友人がいます。娘は動物が大好きで、友人宅にあそびにいくと率先して動物に触れ合います。ヤギを散歩中。

もし下田に移住しなかったら?
東京に戻りたいと言われたタイミングで戻っていたら?
と、今でも考えることがあります。
もちろん、下田に移住したから得られたことも
たくさんあるのですが、
いとこたちと離れて寂しい思いを抱えさせたことは事実です。
あのときの娘の叫びに応えてあげられなかった自分を
責める気持ちも、どうしても残ってしまいます。

そのうえで、下田の暮らしを前向きに楽しもうとしている娘を
見守りたいと思っています。
娘が自ら下田での暮らしを選択したのだから、
私も過去にとらわれずに前を向かなくては、
と自分に言い聞かせています。
そうやってようやく、少しずつ着地できるのかもしれません。

鴨を抱きかかえる娘さん

こちらも友人が飼っている鴨。うれしそうな表情を浮かべる娘「ふわふわでかわいい〜」だそうです。