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東京に戻ることも考えていた?
移住してから5年、
ようやく「始まった」下田での暮らし|Page 4

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.135

Page 4

東京に住む母とのことが気がかりで……

私が東京に後ろ髪を引かれていたもうひとつの理由は、
実家にいる母のことでした。
高齢の母と、あとどれくらい過ごすことができるのだろうか。
同居している姉にばかり
母のことを任せてしまっていていいのだろうか。
そうした思いがつのるたびに、
東京に戻った方がよいのではないかと心が揺れていたのです。

その母が今年の夏に骨折をし、
それをきっかけに施設に入所することになりました。
そんなことになるなんて、
今までまったく想像できていませんでした。
想像力にかけていたのです。

一緒に住むという選択肢は、ある日を境に突然なくなりました。
あのとき東京に戻っていたら……、
と思うこともやはりあるのですが、
ありがたいことにまだ母は元気でいます。
基本的には施設で生活するのですが、
月に数回は東京の自宅で過ごすことになりました。
その日は私も東京に通って、母と一緒に過ごします。

日本橋のまちを歩く津留崎さんの娘さん

今でも時折、娘を東京に連れていきます。文房具好きの娘は銀座の〈伊東屋〉が大のお気に入り。都市部や地方に限らず、いろいろなものを見て感じてほしい。

娘の変化や母のこともあり、
東京に戻ったほうがよいのでは? という迷いがなくなりました。
そして最近、下田で暮らすことの素晴らしさを改めて感じています。
たとえば匂い。
3、4年前のことになりますが、
撮影でご一緒した料理家の先生がこんなことを話してくれました。

「下田に移住したことは娘さんにとって絶対にいいことだよ。
東京では感じられないことをたくさん感じられる。
匂いだって都会とは全然違うでしょ」と。

その当時は下田の匂い? と、あまりピンときていなかったのですが、
最近は先生の言葉がとてもよく理解できます。
娘に、東京と下田って匂いが違う? と聞いたことがあります。
東京は何かわからない匂いが混じっているそうで、
下田は海と山のいい匂いだそう。
朝、玄関をパッと開けて外に出ると思わず
「いい匂い〜」と言葉がもれます。

そうして深呼吸、土の匂い、海の匂い、植物の強い匂いが
身体に染みていくのです。
私にエールを送ってくれた料理家の先生は、
その数年後に長野の森の中に第2の拠点を構えました。
海の匂いをかぎながら、時折、先生の言葉を思い出します。

下田の朝焼けの景色

朝起きると娘が「みてみて!」と。2階の窓からみえる朝焼けは、本当に美しいものです。

そしてもうひとつ、下田って本当にいいよ〜と思うこと。
度々この連載でもお伝えしていますが、
本当にいろんな方が畑に呼んでくれてお野菜をくださるのです。
私はいま48歳になるのですが、
正直なところ体も心も不調になるときがあります。
浄化したい、軽くなりたいというとき、
東京に住んでいた頃は友人と飲みに行ったり
健康ランドに行ったりしていました。

下田でも温泉に出かけたり飲みに行ったりもちろんするのですが、
それに加え、知り合いの畑にふらりと寄らせてもらうのです。
笑顔で出迎えてもらい、ピカピカのお野菜を一緒に収穫して
なんてことない話のやりとりをすると、
そのうちにすっと軽くなります。

大根を収穫する様子

先日、友人から「大根いる?」との連絡が。一家総出で畑にうかがい、大根をたくさん抜かせていただきました。こうした時間がとても楽しくてありがたい。

水路で収穫したばかりの大根を洗う

義母も一緒に畑におじゃましました。水路で大根を洗う娘と義母。

私も夫も今年で48歳、もうすぐ50歳です。
下田の知り合いのご夫婦のように、
友人たちと田んぼや畑でお茶をしたりして楽しむ。
いつかはそんな暮らし方もいいな〜と思ったりもします。
自分がこれからの人生で何をしたいのか、
どんなことが心地よくて、何を優先したいのか。
じっくり考えよう思います。

軒先きで天日干しされている大根

毎年仕込んでいるたくあん。今年はいただいた大根でつけました。数日間、天日干しにするのですが、猫が傍らで気持ち良さそうに寝転がっており、なんとも平和な風景がひろがっています。

大根にさつまいも、かぶやピーマンなどたくさんの野菜

いろんな方にお野菜をいただき、こんな贅沢なことに。あぁ、幸せ。