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下田の移住農家〈モリノヒト〉。
在来種のタネで作物を栽培する夫婦|Page 2

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.075

Page 2

諦めきれない
「森の中での田舎暮らし」

けましておめでとうございます。
今年も「移住のリアル」をモットーに、
移住について、暮らしについて綴っていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

この春には伊豆下田に移住して丸3年、
そんな僕らが移住前に目指していた暮らしがありました。

自分たちで手をかけた家は鳥のさえずりが響く人里離れた森の中。
食べる米、野菜は家族で育て自給する。
暖房や風呂は薪で。生活の水は井戸水や湧き水。
子どもは手づくりのツリーハウスやブランコで遊び回る。

「田舎暮らし」という言葉で
多くの人がイメージする暮らしかもしれません。
手間はかかるけど、自分たちでつくることに価値をおく、
そんな暮らしです。

下田の夕日

そんな暮らしができそうな地域と家を探す旅をして、
ここだ! と見つけた三重の山奥の家。
そこへの移住を試みたものの、都会モンには
いきなりこんな山奥での田舎暮らしは厳しい……
と実感するもろもろがあり、あえなく断念しました
(その経緯について詳しくはこちら)。

そして、もう少しまちに近い立地での
「初心者向け(?)田舎暮らし」を始めてみようと伊豆を旅して、
下田のいまの家を見つけたのです。

ここでの暮らしは、まちに近いだけあって、
当初目指していたイメージとはかなり違います。

「森の中」どころか、自宅周辺は郊外の住宅地という雰囲気。
徒歩10分ほどでコンビニや牛丼チェーンがあったり。
でも、いま取り組んでいる養蜂場の仕事では
森の中で過ごすことも多いですし、
また、自宅から少し離れた場所ではありますが、
田んぼを借りて、念願の米づくりもできました。

まちに近くとも、それなりに田舎暮らしはできるのではないか? 
自分たちにはそれくらいがちょうどよかったのだ。
そんな風にも感じています。

下田の夕焼け空

とはいっても、当初思い描いていた
「森の中での田舎暮らし」への憧れもあります。
いつかは……と思うものの、なかなか踏み出せない。
一度挫折した身としては、そんな暮らしを実践している人が
近くにいると心強い。

そう思ってはいるのですが、ここは海のまち、観光地伊豆下田。
そんな人にはなかなか出会いません。
一度、移住を試みた三重にはそんな人が多くいました。
同じ伊豆でも、下田の隣町の南伊豆町になら、
そうした暮らしをしている人が多くいます。

そんななか、下田市の中でも最も観光地的要素の強い白浜地区に暮らす
若き移住農家、松川淳一さん、いくえさんご夫妻と、
あるイベントで知り合いました。
松川さんは作物や加工品の販売をする〈モリノヒト〉を営んでいます。

「モリノヒト」……!?
森の中での田舎暮らしへの憧れが捨てきれない自分としては、
なんとも気になるネーミングです。
やがて縁がつながり、フォトグラファーのわが妻に、
制作中のモリノヒトホームページ用写真の撮影依頼をいただきました。

森の中の家に向かう松川さんご一家

妻が撮影してきた写真を見せてもらうと……。

森の中の家。
DIYでつくったというツリーハウスや遊具。
お子さんと一緒に作物を収穫する様子。

まさに僕が移住前に思い描いていた
森の中での「田舎暮らし」ではないか?
ぜひ、その暮らしを覗いて、いろいろとお話をうかがいたい……。

果物を収穫中

そんなことを思っていた矢先。
松川さんから、自宅にあるピザ窯でピザを焼くので食べに来ませんか? 
と、なんともうれしすぎるお誘いをいただきました。
そして、ぜひぜひ~と図々しくもお邪魔してきたのです。

そこで見た松川さん一家の暮らしは、
僕の想像を超える、手間のかかった暮らしでした。

ツリーハウス