menu
記事のカテゴリー

下田の移住農家〈モリノヒト〉。
在来種のタネで作物を栽培する夫婦|Page 3

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.075

Page 3

東京から移住して
〈モリノヒト〉を起業

松川さんの家に続く山道

伊豆で最も賑わうビーチ「白浜大浜海岸」からもほど近い場所ですが
民家や宿泊施設が点在する地域を過ぎると、
白浜の喧噪が嘘のような静けさ。
そんなところに松川さんの家や畑はあります。

山の中に現れた松川さん宅

松川さんご夫妻は、移住前は淳一さんの実家にも近い
東京多摩地域に暮らしていました。
「食」や「暮らし」をもっと丁寧に自分たちでつくっていきたい
という思いから、地方での暮らしに興味はあったそうです。

そして、ふたり目のお子さんが生まれて間もなく起こった
2011年の東日本大震災とそれに伴う原発事故によって、
東京を離れる決意が固まったといいます。

干し柿

淳一さんがサーフィンをしていたことから伊豆にはよく来ていて、
その縁から移住先が決まりました。

薪ストーブのあるリビング

暮らし始めた当初はかなり朽ちていたというこちらの家。
淳一さんは美大でテキスタイルを勉強していたこともあり、
モノづくりはお手のもの。
内装の見える箇所のほとんどをDIYでリノベーションしたたそうです。

自作のピザ窯

自宅のデッキにあるピザ窯でピザを焼く淳一さん。薪は近隣の山から伐りだしたもの。

もともとふたりは飲食店厨房での調理経験者。
移住前から食へのこだわりは強く、
興味は自然と作物栽培へと向かったそうです。
移住してからは無農薬で野菜や米の栽培を始めました。

焼き上がったピザ

生地はいくえさん担当。生地も焼き具合も、家で焼くピザのレベルじゃないです。

お風呂場の外観

風呂は薪で沸かす五右衛門風呂。

五右衛門風呂の焚きつけ中

この日はいくえさんが焚きつけを。日々、工夫する楽しさがあるそうです。

移住してからさらにふたりのお子さんを授かった松川さんご夫妻。
作物も安定して収穫できるようになってきて、
自宅のリノベーションも落ち着いて……次のステップ、
作物や加工品をつくり販売するモリノヒト起業へと歩み出したそうです。

モリノヒトの黒米

実は、つい最近まで淳一さんは東京での飲食店勤務の経験を生かし、
宿泊施設の厨房責任者という職に就いていたのですが、
モリノヒトでの作物栽培や加工品製造に集中していこうということで
退職しました。いまは野菜や米、土地の人から引き継いだ果樹など、
多くの作物を無農薬で栽培しています。

無農薬栽培の畑

そんな彼らモリノヒトのこだわりは、
無農薬であるということだけではありません。
「タネ」にもあります。

いまスーパーに並ぶ作物は「F1種」と呼ばれるタネから
育てられたものがほどんど。
対して、松川さんが育てているのは
「在来種」「固定種」のタネから育てた作物なのです。

松川さんご夫妻がつくられた作物たち

松川さんご夫妻が丹精込めてつくられた作物。この冬の「季節のおまかせ野菜セット」のラインナップ。里芋、大浦ゴボウ、安納芋、大蔵大根、紅芯大根、津田蕪、日野菜蕪、天王寺蕪、ゆるぎ赤蕪。注文のタイミングによって内容は変わるそうですが、7~10種類の野菜が入って3000円(税込・送料別)。(写真提供:モリノヒト)

F1種、在来種、固定種について、松川さんに教えていただきました。