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先日は作業をしていたら20匹ほどの猿に囲れました。
狸がすぐ近くまでやってきたこともあります。
下田だけでなく農家の高齢化、後継者不足、
そして耕作放棄地の増加はどの地域でも起こっている問題です。
この土地のように、集落から離れた耕作放棄地は
鹿や猪、猿たちにとって絶好の棲み家になってしまうようです。
そうなると近隣の農地の獣害が
さらにひどくなってしまうこともあるといいます。
現に、ここのふもとの集落の畑では、以前は出なかった鹿が
昨年の夏から頻繁に出るようになりました。
タイミングを考えても、この土地がしばらく耕作放棄地となっていたことと
無関係ではない気がします。
そうなると、農家は獣害対策に追われ疲弊してしまう。
さらに耕作放棄地が増える。
さらに獣の棲み家が増える。
そしてさらに獣害が……。
まさに負の連鎖です。
調べてみるとこれはデータなどからも言われていることでした(参考資料)。
実際に里山で獣たちの存在を身近に感じながら作業をしていると、
その「負の連鎖」を身をもって実感します。
では、この「負の連鎖」を断ち切らないと日本の農業はどうなるのか?
日本の食料はどうなるのか? 日本の里山はどうなるのか?
とても深い問題です。
後継者がおらず、しばらくは耕作放棄地となっていた果樹園を
養蜂家が借り受ける。
果樹園を養蜂家が引き継ぐというのはかなり特殊な事例なのでしょう。
たったひとつの特殊な事例といえばそれまでです。
でも、負の連鎖を断ち切るひとつひとつの動きが
大切なのではないでしょうか。
地道な作業の繰り返しで枯れ木もなくなりました。
倒されて使えなくなった柵も撤去しました。
順調に作業は進んでいます。でも、まだまだ。
まだまだ、これからです。
花が咲き、果樹が実り、そしてミツバチが安心して飛び回れる
「ミツバチの楽園」。
それは半年や1年でできることではないのです。
この作業をするにあたり、僕は高橋養蜂から報酬をもらっています。
僕がこの作業を手伝うことで、いまのところ高橋養蜂に
利益をもたらしてはいません。
でも、鉄兵さんはなんとかやりくりしながら僕に仕事をふってくれます。
「ミツバチの楽園は夢ですから。
ひとりじゃできないので手伝ってくれて助かります!」
鉄兵さんのその言葉は、僕も含めて、仕事となると
目先の利益のことばかりを考えてしまう多くの現代人が
忘れてはいけない大切なことのような気がします。
それが「負の連鎖」を断ち切るひとつのヒントなのではと感じています。
いままで東京でいろんな仕事をしてきました。
でも、こんなにわくわくする仕事はなかったかもしれません。
石積みでも柵設置でも何でもやったる!
いま、そんな気持ちです。
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高橋養蜂