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里山を悩ませる「負の連鎖」とは?
「ミツバチの楽園」づくりで
土地を再生させながら考えたこと|Page 3

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.028

Page 3

なぜこんなに果樹園が荒れてしまったのか?

「再生」というのも、その土地はひどく荒れてしまっていたのです。
そこを里山の中に切り開いた地主の農家さんは、
高齢になり後継者もいなかったことから
しばらくは手をかけることができなくなっていました。
人が手をかけなくなった果樹園は、鹿や猪、猿などの獣たちにとっては、
それこそ楽園だったのでしょう。

無残にも倒された電気柵。

そして、果実を食べるだけならまだしも、
鹿はみかんの樹皮を食べてしまいます。
ひどく樹皮を食べられてしまったみかんの木は枯れてしまうのです。

上の写真の斜面のみかんの木は比較的被害は少なかったのですが、平地の木はことごとく鹿に樹皮を食べられ枯れていました。

こちらはキウイ畑。背の高い鹿は入りにくいからか、みかんの木に比べると被害は少ないです。でも、こちらは猿の楽園……? あるときは20匹ほどの団体様に出くわしました。

その土地は民家や畑が点在する集落から
5分ほど林道をあがったところにあります。
そこに行くためだけの林道です。

ふもとの集落から里山の中へと入っていく林道。ここにもよく鹿が出没するようです。このあたりの木も樹皮を食べられています。

林道の整備から、広大な土地を切り開き、
獣害対策をしてみかんやキウイの木を育てることまで、
地主の農家さんたちが行っていたのでしょう。
ここまでするのにどれほどの労力がかかったのか? 
考えると途方に暮れてしまいます。

「先人の苦労が忍ばれる」とよく聞きますが、まさにその言葉通りです。
でも、手をかけないとあっという間に獣たちに荒らされてしまうという
厳しい現実(手をかけていなかったのは2~3年間なのです)。
ここまで開拓した先人たちの努力に報いるためにも、
ここを再生させたい、そんな気持ちにもなります。

春になると鉄兵さんは本業の養蜂で忙しくなるので、
その前に枯れ木を片づけて獣害対策の柵を設置する予定です。
獣害対策がうまくいったら、ミツバチの蜜源となる
さまざまな果樹の苗木や草花を植えて、そして育てる。
花が咲き、実がなり、ミツバチが飛び回る「ミツバチの楽園」となるのです。

そんな「ミツバチの楽園」への道のりは、まだ始まったばかりです。
いまは獣害対策の柵を設置する、苗木を植えるための準備段階。
木を切ったり運んだり、石を運んだり積んだり。
地道な作業の繰り返しです。

筋トレ? というような作業も。そして、その成果で石垣と道ができてきました! この段差をユンボや一輪車が通れると、今後の作業性があがります。

林道の倒木や大きな石も通るたびに片づけています。

東京で暮らしていたいままでの感覚だと 「誰かが直してくれるだろう」なのですが、ここでは自分たちで直さなければ荒れていく一方です。

獣害対策は、この土地の全体を柵で囲う計画です。
現状は獣害対策はできていないので、まだまだ獣たちの楽園。
いつ行ってもホヤホヤの鹿の糞があちこちにあります。

柵を設置する予定の場所。手前の黒く丸いものは鹿の糞です。こんな景色のいいとこでなさってるのか……。