連載
posted:2017.9.9 from:北海道上川郡東川町 genre:旅行
PR 北海道観光振興機構
〈 この連載・企画は… 〉
“北海道の屋根”と言われ、日本最大の〈大雪山国立公園〉を有する大雪山。
深く美しい大自然のなかで、コテージや温泉宿に滞在しながら、北の暮らしを旅します。
photographer profile
Asako Yoshikawa
吉川麻子
フォトグラファー。北海道苫小牧市生まれ。札幌市在住。2006年からのスタジオ勤務を経て2011年より独立し、フリーランスとなる。主にポートレイト、衣食住、それらに関わる風景など幅広く撮影。おいしいものといい音楽があると笑顔になります。
気のいい犬1匹と現在二人暮らし。
writer profile
Akiko Yamamoto
山本曜子
ライター、北海道小樽生まれ、札幌在住。北海道発、日々を旅するように楽しむことをテーマにした小冊子『旅粒』発行人のひとり。旅先で見かける、その土地の何気ない暮らしの風景が好き。
旅粒
http://www.tabitsubu.com/
大雪山のふもとで、真摯な家具づくり、家づくりをしながら
めぐる季節に寄り添う暮らしをのびのびと楽しむご夫妻がいます。
東川町道の駅から車でおよそ10分。山沿いを走るクラフト街道の先に現れる、
木々に囲まれた、まるで北欧の村のような建物群。
廃校となった小学校に家具工房を構え、
オリジナルの道産無垢材の家具づくりや自然素材の家づくり、
また生活雑貨ショップ、カフェを営むのが〈北の住まい設計社〉です。
自然を生かし、自然に寄り添う北国の暮らしをトータルで提案するショップには、
雰囲気ごと持ち帰り、長く大切に使いたくなるものとの出会いが待っています。
北の住まい設計社入り口に建つ大きな家。2階はオリジナル家具のショールーム、1階は雅美さんがプロデュースする生活雑貨を扱うショップ。
代表の渡邉恭延さん、雅美さんご夫妻は北の住まい設計社を1977年にスタート。
工房となる廃校の小学校に出会い、東川へ移り住んだのが1985年のことでした。
「自分たちの生業として、できることを通して人生や暮らしに触れながら、
北海道の四季折々の自然にリズムを合わせた生き方を表現していくと決め、
北の住まい設計社という名前をつけたんです」
雅美さんは、設立当時の思いをそう語ってくれました。
北の住まい設計社の家具は、元小学校の工房で加工を、別棟で乾燥や布貼りを手がけています。どの作業も職人の手仕事が中心。
その頃から家の設計を手がけることもあった渡邉さんご夫妻は、今と同じ
無垢材や天然素材の塗料を使った家づくりを提案していたものの
一般的にはその意識が浸透していなかったことから、
はじめの一歩として、オリジナルの家具づくりを始めます。
大手企業の下請けの仕事を経てオリジナルの家具を手がけ始めた頃、
研修に入っていたスウェーデン人学生デザイナーとの出会いが、
ご夫妻のものづくりに北欧デザインの要素を吹き込んでいきます。
すべて道産材でつくられる〈THE FOREST〉シリーズ一番人気、幅のサイズを変えられる〈エクステンションテーブル〉。ベテランの職人が熟練の技で組み立てていく。
乾燥中のエクステンションテーブル。仕上げに塗るのは体やさしい植物性のオイルなので、工房の中は木のいい香りが漂う。
「1年間ここで働いた学生の彼がここに残してくれた家具づくりの情報や
人とのつながりは大きく、そこから、自分たちのいいと思う北欧テイストの
生活雑貨も取り扱うようになったんです」
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家具づくりでの転換点があったのは、20年ほど前。
道南にある厚沢部町で、愛情を持って貴重な北海道の木材を長年集め
生かそうとしてきた〈鈴木木材〉社長との出会いが、
輸入にかかるエネルギー的にも負担が少なく、環境や森を守ることにつながる
道産材へのシフトを考えるきっかけとなります。
スタッフが訪れた際に撮られた鈴木木材さんの写真記録が、工房の廊下に貼られていました。
そして2016年に、主力だったチェリーやウォルナット材をやめ
すべての家具づくりを道産材に切り替えることを決意。
2017年、すべてのパーツをさまざまな道産材でつくり上げる
一点もののテーブルのブランド〈THE FOREST〉を立ち上げ、大きな注目を集めます。
「鈴木木材さんに出会わなければできなかったこと。鈴木さんは
私たちの使う道産材を、パーツごとに合わせて製材してくれているんです」
樹種ごとに分けられて乾燥している木材の保存庫。道産のイタヤカエデなら、最後の人工乾燥を合わせて2年ほど乾かすそう。木を乾かすところから家具づくりが始まっている。
機械の使用を最小限に抑え、職人の匠の技でひとつひとつ
丁寧につくられる、北の住まい設計社の家具。
ショールームには、北海道の自然を生かしてつくられた
手仕事ならではの美しさと機能性をもつ、一生ものになる家具が並んでいます。
時を重ねて味わい深くなる木のぬくもりを直接感じてみましょう。
手前が完成した〈エクステンションテーブル クラシック〉。金具をひとつも使わない昔ながらの工法でつくられています。独特のマットな色合いはエッグテンペラと呼ばれる自然な塗料を使用。
どれも一点ものの道産無垢材の天板は左からニレ、クリ、カバ。樹種でナンバリングしていて、オーダー時に選べる。手前はスウェーデンが誇る名品〈リッラ・オーランド〉のチェア。
家具製作時の、さまざまなは樹種の端材を使った個性あふれるカッティングボード(3672円)は贈り物にもおすすめ。雅美さんのかねてからのアイデアをかたちにしたもの。
別棟のカフェのドアを開けると、いい香りの立ち込める道産小麦のベーカリー、雅美さん愛用の安心食材を揃えたグローサリー、ワインセラーが。その奥は落ち着けるカフェスペース。
ものづくりへのこだわりは、暮らしの軸となる食にも行き届いています。
もともと安心安全な食材やオーガニック食品を好んで選んできた渡邉さんご夫妻。
東川近郊や道内で、体に優しい食材を手がける生産者から仕入れた素材を使い、
その魅力をたっぷりと引き出したランチやスイーツメニューは、おいしさもお墨付き。
北海道の誇る良質な恵みを味わいに、ぜひ訪れてみて。
旭川で大規模な有機栽培を手がけている、おいしいトマトで名高い〈谷口農園のトマトジュース〉(2017年からは700ml 800円)も取り扱う。爽やかな甘みが人気の商品。
ローストなすとモッツアレラチーズのトマトソースパスタ(ドリンク付き1300円)。自家製トマトソースも谷口農園さんのトマトを使用。雅美さんの菜園で採れたてっぺんのバジルが香り立つ。
コストはかかるものの、素材の質をもっとも重視しているという雅美さんは
自家菜園も手がけています。シーズンにはカフェメニューにも登場する
ベリーやトマト、葉物、ハーブまで、幅広い作物が
自然な状態で生き生きと育っています。
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ミニトマトも元気に成長中。ハウスの中にはさまざまな作物が共存共栄しています。
ハウスの中には、色づき始めた立派なラズベリーが。
自然体で自分たちの信念を大切にしながら、この地に暮らし、妥協のない仕事を続ける渡邉雅美さん。その豊かなライフスタイルに憧れる人は多い。
「昔からこうやって自分で作物を育てるのが好きなんです。
なかなか手に入らないハーブや野菜なども、種を取り寄せてここでつくっています」
現在は、ワイン用にと昨年植えたブドウの成長が楽しみだそう。
こちらはブルーベリー。最盛期には期間限定で畑のベリーがたっぷり乗ったケーキも登場するとか。
ハスカップの木が柔らかな実をつけているのも発見。
敷地の一画に植えたワイン用のブドウを眺めながら、遊びに来ていたお孫さんと。
畑やご自宅の周りはもちろん、北の住まい設計社を囲むようにそびえる木々は、
実はそのほとんどが、代表である恭延さんが移住前からこつこつと植えたものだそう。
「彼は木を植える男なんです」と笑顔を見せる雅美さん。
近くの山の若木を移植したというその木々は今や、30年の歳月を経て
たくさんの鳥や生き物の訪れる立派な森に成長しています。
家までのアプローチにはハーブがたくさん植わっています。
土止めにと植えた、毎年愛らしい実をつける野いちご。甘酸っぱく口の中でホロリとほどけます。
北海道の気候風土に合った生活スタイルを、未来を見据えながら提案していく。
渡邉さんご夫妻のものづくりに共鳴したつくり手たちが道内外から集まり、
北の地ならではの短い夏を祝う〈夏至祭〉も、年々大きくなってきています。
この地に根を下ろし、自らが描く暮らしを体現し表現する。
その思いはやがて森のように育ち、多くの人に本物の豊かさを伝えています。
北の住まい設計社は、旅の目的地にしたい、東川の誇るランドマークです。
すてきなご自宅前でお孫さんの恵樹(けいじゅ)くん、知人から譲り受けた希少な北海道犬のハナちゃんと。
information
北の住まい設計社 東川ショールーム
information
北の住まい設計社 カフェ&ベーカリー
TEL:0166−82−4556
営業時間:10:00~18:00(LO食事16:00、デザート&ドリンク17:00)
定休日:水曜日
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