連載
posted:2016.3.25 from:兵庫県豊岡市 genre:暮らしと移住 / 活性化と創生
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〈 この連載・企画は… 〉
ローカルで暮らすことや移住することを選択し、独自のライフスタイルを切り開いている人がいます。
地域で暮らすことで見えてくる、日本のローカルのおもしろさと上質な生活について。
editor’s profile
Aya Yamamori
山森 彩
やまもり・あや●兵庫県生まれ。神戸市在住。ある取材をきっかけに、海と山が近く、潮の香りが漂うまちに移り住み、商店街やまちをおもしろくする活動中。取材に出かけて、人々のお話を聞き「思い」を言葉で伝えることがライフワーク。プロジェクトマネージメント/ライター。
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撮影:片岡杏子
supported by 豊岡市
豊岡市では、さまざまな移住推進の政策を打ち出しているが、
特徴的なのは、窓口が「大交流課」に一本化されていること。
特に2016年4月からは、住居、職、暮らしのことなど移住に関する
すべての情報が集約されるので、
気になるあれこれに応えてくれて、移住後のフォロー体制も万全だ。
移住にあたって気になるのは、やはり住まいのことだろう。
空き家バンクには、賃貸・売買を含め40軒以上の登録があり、
2015年からは問い合わせ件数も増加しつつある。
大交流課に相談すれば、ニーズにあわせた物件の紹介や、
リノベーションに関する相談、
耐震強度の検査の手続き方法など、細やかなフォローをしてくれる。
また、いなか暮らしを1日から気軽に体験できる「豊岡暮らし体験施設」も整備。
ここでは、日常生活に必要なものは揃えられていて、
担当者によると「身ひとつで来てもらえる」住居だ。
家族でも宿泊できる広さは、十分にあるので、一度トライしてみるといいかもしれない。
そして、移住の根幹となるのが仕事のこと。
豊岡市では、〈ジョブナビ豊岡〉という情報サイトを運営し、
最新の求人情報を調べられるほか、企業ガイドブックも発行し、
移住希望者と地元企業とのマッチングもしっかり行っている。
また、就農を希望している人におすすめなのが、〈豊岡農業スクール〉だ。
市が委託する米農家や野菜農家、畜産農家等で1年間本格的に“修行”し、
農業技術や経営のノウハウを学ぶことができる。
年間3名と競争率は高いが、市から月額10万円の給付金が支給されるほか、
4月からは、市外からのスクール生には家賃補助も行われる。
移住者を迎え、地域で働き、暮らし、子育てをしてもらう。
全国の自治体で移住への取り組みが展開されているが、
豊岡市は多くの政策の中でも、移住を特に重要と考え、
総合戦略でも
「暮らすなら豊岡と考え、定住する若者が増えている」
という言葉を掲げている。
どういう思いで取り組んでいるのかを中貝宗治市長に聞いた。
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「都市と地方を“格差”という尺度で見ると、
その“格差”はどうがんばっても埋まらない。
けれど、都市との“違い”こそが、豊岡市が持つ個性だと考えています。
このまちには、都市では味わえない自然の豊かさや人とのつながりがあります。
ものの見方を変える、つまり、価値観の“質的転換”が起きれば、
豊岡市の持つ個性が認められ、誇りと自信をもって住む人が増え、
定住につながるのではないでしょうか」と、中貝市長。
中貝市長が注目しているのが、
これから自分の手で何かを始めたい、イノベーションを起こしたいという、
いわゆる“スタートアップ層”の人たちだ。
いまや、「鞄づくりといえば豊岡」という地位を確立した鞄産業。
この業界が元気になってきたのは、OEMをメインとしつつ、
〈豊岡鞄〉というオリジナルのブランドを発信しはじめたからだという。
「豊岡市は、鞄づくりにおいて、世界に誇れる技術を持っている。
この技術があればまだまだセンスのいい鞄を
生み出していける余地があります。
ここから世界に発信できるブランドをつくり、豊岡の誇りにつなげる。
大企業があるわけではなく、小さなまちだけど、
ここでしかできないやりがいのある仕事をし、
自然との暮らしやアフターファイブも楽しめる。
そういったことに価値を見出し、
新しいことを起こしたい人には適したまちです」
また、若者だけではなく、
40~50代の人たちにも魅力を感じてもらえるだろう、と中貝市長は話す。
「たとえば、都会で実力をつけた人たちが、
地方でもうひと花咲かせるチャンスがあるのが豊岡です」
生きがいをもって働ける場がほしい人、
クリエイティブな人、やる気のある人ならば、
地方にはその人たちの役割がたくさんあると語る。
「多様性を受け入れる地盤はありますから、
“このまちでこそやれる仕事だ!”と、誇りをもって働きたい方、
また、豊岡に暮らすことの価値や魅力を、ともに探り、
まちづくりを担ってくださるような方々にぜひ来ていただきたい」
また、近頃では観光業にも大きな変化が見られる。
ここ豊岡市でも、外国人観光客が増加し、
2015年度の外国人宿泊者数は約3万4000人となり、前年比およそ2.3倍。
全国平均では、1.4倍ほどだから、その伸び率は圧倒的だ。
「城崎温泉は、欧米からの観光客がほかの観光地と比べて多い。
これは、日本的な情緒をたのしみたいという人たちを呼ぼうと、
数年前からターゲット戦略を練った結果です。
この結果、一年を通して城崎を訪れる人が増え、
いわゆるオフシーズンがなくなりつつあります。
旅館やホテルのスタッフの需要も増し、求められる仕事も変化しています。
外国人観光客への語学を使ったおもてなし、
そして、城崎のことはもちろん、日本文化を、
語学という技術をもって伝えることができる人。
こういった方たちが必要となってきているわけです」
豊岡の人口規模は小さい。
けれど、世界の人々から尊敬される素材、
世界へ打って出る素材はある。
「ローカル&グローバル、という戦略が豊岡にはあります。
“グローバル”と結びつくと、“ローカル”が輝くというものです。
たとえば、城崎国際アートセンターには、
フランス、オーストラリア、そして東京から、
世界的に活躍するアーティストが豊岡に集まってきています。
舞台芸術に特化したアーティスト・イン・レジデンスの
取り組みをはじめたことで、演出家の平田オリザさんや、
カンヌで主演女優賞を受賞したイレーヌ・ジャコブさん、
ダンサー・振付師の白井剛さんなどが城崎に滞在しました。
なぜ全国的、世界的に行われているアーティスト・イン・レジデンスのなかで
城崎が選ばれるのか。
それは、日本屈指の温泉街である城崎はおもてなしに溢れ、
古くから文筆家や芸術家を迎え入れ、世に送り出して歴史があるからです。
都会の喧騒から離れ、風情あるまち並みや
外湯を気軽に楽しみながら創作活動に専念できる。
そういった環境が、世界やほかの都市との“違い”を生み、
求められているからではないでしょうか」
つまり、豊岡は
“世界が認める”まちへと進化を遂げようとしているのだ。
そして、今後移住してくる人の意欲や能力がその推進力となると考えている。
豊岡市は、環境破壊によって日本の野外で一度絶滅したコウノトリの
野生復帰を成し遂げてきた。
この取り組みは、世界的にも注目をされている。
もうひとつ大事な要素は“子どもを安心して育てられる場所に”
との願いが込められている、ということだ。
「コウノトリも住めるまちとは、すなわち、
子どもたちも安心して住めるまちなのです。
コウノトリも暮らせるほど自然豊かな環境のなか、
子育てができるのです」
また、ローカル&グローバルを実践するために、
英語やコミュニケーション教育にも力を入れている。
「英語でふるさとのこと、自分のことを話すことができる子どもを育てたい。
その実現のため、すでに小・中学校のモデル校に外国語指導助手(ALT)を配置し、
小学校1年生から英語に触れてもらっています。
2017年度からは、取り組みをすべての小中学校に広げ、
ローカル&グローバルコミュニケーション教育の全面展開を図ります」
そして今後は、演劇的手法を用いたコミュニケーション教育の
授業も取り入れていくのだという。
「これらが実現すれば、
海外から来た人たちに、英語というツールをつかって、
演劇的手法で身につけたコミュニケーション能力をもって、
このまちの豊かさを伝えることができるようになるわけです。
ローカルで培ったチカラを、グローバルで発揮する。
そして、“豊岡でいいのだ”と誇りを持って暮らす人が増えれば、
この土地にしかない価値を見出していくことができる」
「豊岡が持っている土壌で、チカラがある人たちに活躍してもらいたい。
都会でいろんなもの収集して、豊岡で志を果たしてもらえたら」
“小さくても、ここでいいのだ”
そう思える素材が、ここ豊岡には詰まっている。
information
豊岡市移住促進プロジェクト〈TOYOOCOME(トヨオカム)!〉
information
移住促進メディア『雛形』では、3回にわたって「豊岡の教育」に関する記事をお届けしています。
地域の教育をより深く知りたい方は、こちらも併せてお楽しみください。
http://www.hinagata-mag.com/feature/toyooka
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