連載
posted:2024.11.29 from:全国 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
山や海、自然が身近にある暮らし、古い建物を改修しながら住まう人、
都市と地域での多拠点生活など、コロナ禍を経て、住まいを選ぶ自由度は高まっている。
「非日常的な旅」と「日常の暮らし」の境目はなくなりつつあり、
たくさんの選択肢があるからこそ考える、これからの暮らしと、住まい。
writer profile
COLOCAL
コロカル編集部
住まいの選択肢が広げるリノベーション。
戸建てやマンションといった枠にとらわれず、古い物件を活用したり、
自分たちの暮らし方に合わせて工夫してみたり、その自由度は高く、
さまざまな選択肢も豊富に揃ういま、本当に住み心地のいい部屋は、
どのようにしつらえばいいのか。
今回は自分らしい家づくりと暮らしを楽しむウェブマガジン
「TOKOSIE(トコシエ)」で取り上げてきた取材事例のなかから、
心地よさを追求した5つのマンションリノベーションの
事例とともに、自分らしい住まいづくりのヒントを探る。
Index
現在2匹の愛犬と暮らす松野さん夫妻は、横浜の山下公園の
近くの市街地で暮らしたのち、山口県の古民家を借りて移住。
しかし数年して横浜に戻ることになり、新たな物件を購入した。
古民家暮らしで、都会よりも自然に囲まれた生活に魅力を感じていた。
犬もいて既存の物件を探すのは難しさや
暮らしの拠点を移した心境の変化があり、
市街地から離れた丘陵地に建つ築53年、95平米のスケルトン物件を
購入し2LDKにリノベーションすることに。
山口で暮らしていたため、手がけた〈SHUKEN Re〉との
打ち合わせのほとんどはリモートで行われた。
施工中は来ることができず、初めて自宅を見たのは引き渡しの時だったという。
現在2匹の愛犬と暮らす松野さん夫妻。
住まいには自分たちが暮らしやすいだけでなく、
一緒に暮らす愛犬たちも、快適に過ごすための工夫が随所に見られる。
床材に足場板を使用し、全体的に淡く不規則な色合いが
周りの白壁と交わり柔らかな空間に。
「足場板は山口の古民家で使おうと購入したものでした。
自分たちで塗り直して色を統一したり、削ったりしていたんです。
でもプランナーさんが、塗っていない裏面を使いませんかと
提案してくれたんです」
表面は艶があってワントーン暗く、全体のバランスを考えると
裏面を使って正解だったと振り返る。
愛犬への愛情はキッチンにも見られる。
寝室の扉はリビングダイニングの奥にあるが、
自由に愛犬たちが回遊できるようにとキッチンにも、
寝室に繋がる通路を設けて「基本的には開けっぱなしです」
と裕史さん。
空気の循環にも役立ち、特に調理中のキッチンは
熱がこもりがちだが、空気の流れをつくることで解消された。
「広めにつくったキッチンには、おやつづくりに使う
スライサーなどの機材も置けてお気に入りです」
「昔は便利な市街地がいいと思っていましたが、
今は静かなほうがいいなと思いますね。こうして自宅で
家族や愛犬と過ごしている時間が、とても落ち着きます」
賑やかな大都市の中心地から地方へ移住した経験や、
これまで一緒に暮らしてきた愛犬たちとの思い出が、
日々の暮らしや住まいづくりに詰まっている。
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3年ほど前に築50年に近い都心のマンションを購入し、
自邸としてリノベーションした〈小大建築設計事務所〉の小嶋さんご夫妻。
もともと和室のある竣工当時のままの3LDKに、
そのままの状態で1年暮らしてみたことで、間取り計画にも役立ったという。
光や風の入り方、暑さ、寒さなどが体感でき、
プランニングに活かすことができ、断熱性などの機能面に加えた。
全体の面積の70%ほどを占めるLDKに、さまざまな機能を
持たせることで、ひとつの空間でいくつもの過ごし方ができる。
妻の綾香さんは京都出身、アメリカへの留学をきっかけに
日本の文化をもっと知りたいと思うように。
「日本人にとって居心地のいい空間とは何か追求して、
自分たちの住まいに取り入れたい、と考えたんです」
テクスチャーのある珪藻土、無垢のオークの床材、
ラワンを染色した建具……。和の設えを取り入れるときに、
自然素材にこだわることも外せなかった。
日本の美を今の暮らしに溶け込ませた心地よい空間。
それぞれのスペースにそれぞれの機能を散りばめながらも、
一体感を持たせた「間」が、コミュニケーションを生み、
豊かな暮らしを感じさせてくれる。
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2年ほど前に逗子にある築54年のマンションを購入し、
フルリノベーションをして暮らしている安達家は、
夫婦と1歳になる息子・柑太くんの3人暮らし。
全然まちのことを知らなかったので、
ふたりはこの物件を購入する前に、
まずは賃貸アパートに引越したという。
平日は肉屋さんや花屋さんで買い物をしたり、
休日は行きつけのコーヒーショップに顔を出したり。
実際に住んでみると、コンパクトなまちの中に個性豊かな
お店が点在し、それでいてすぐ隣は、観光客で賑わう鎌倉。
この土地に惚れ込んだ理由について、
「都内にも1時間弱でも出られるし、少し足を延ばせば
子供と遊べるレジャースポットもある。
そのバランスが、とてもいいなと思っています。
あと僕はサーフィンをやるので、海へのアクセスの良さも魅力ですね」
と話すのは、夫の賢(まさる)さん。
ほとんど自宅で仕事をする賢さんは、書斎が欲しいこと、
サーフボードやキャンプ用品を収納するスペースとして
土間をつくりたいことを前職の同僚でもある、
設計士の松山敏久さんに依頼し、それを受けて、
玄関の横のスペースに広い土間を設置。
天井まである大きな棚で空間を仕切りながら、
賢さんが仕事に集中できるワークスペースを用意した。
このまちに暮らして5年目。気がつけばご近所友だちが増え、
馴染みの海の家もできたという安達家。
「のんびりした田舎と刺激のある都会のバランス感が心地よいです。
小さなコミュニティがいくつもあり、住んでいて孤独感がない。
子どもが生まれてからは、よりその存在を心強く感じますね。
家を行き来できる友人も増えたので、しばらくはこのまちを
離れたくないなと思っています」
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Page 4
〈アフタヌーンティー・ティールーム〉で
商品開発をしている坂下真希子さんは、
有名建築家が手がけたヴィンテージマンションを、
16年前に購入し、2LDKへとフルリノベーション。
現在は夫と息子さん、娘さんの4人で暮らしている。
物件購入の決め手となったのは窓から広がる新緑の景色。
リノベーションの設計は、このマンションでリノベーションを手がけた
経験のある設計士の増田浩隆さんに依頼をした。
「同じ物件をリノベした経験のある、増田さんにお話を聞きに
行ってみたら、『実はその事例はうちの自宅なんです』と言われて。
実際に住んだ人だからこそできる提案をたくさんしてくださいました」
たとえば、玄関とリビングの間に造作した長さ3.15メートルの本棚。
玄関とリビングを仕切るパーテーションの役割を兼ねつつ、
両面から収納できる仕様に。
子供たちの成長と共に手狭になり、
広いところへの引越しを検討した時期もあったという。
しかしこの物件以上に自分たちの暮らしに
ぴったりなものには巡り会えず、週末だけでもゆっくりと家族で過ごせる場所として、
8年ほど前に山梨県にも中古物件を購入。それ以来、週末は毎週のように家族で山梨へ。
家族みんなで山登りをしたり、焚き火でバーベキューをしたり、
自然と共に過ごす時間を楽しんでいる。
正直、最初は『別荘をもつなんて特別な人だけがする
贅沢なんじゃないの?』という気持ちもあったが、
車ほどの値段で買える格安物件だったこと、
売却時も同価格くらいで売れる見込みのあったことが
後押しして、2軒目の購入を決めた。
「そろそろ下の娘にも個室を考えたいし、
息子の進路によっても生活スタイルが変わっていく。
あと2、3年したら山梨の別荘を手放すことも視野に入れつつ、
やりたいことを見つけて、また別の場所を買うのもいいかなと。
その時々で自分たちのライフスタイルに合わせて、
暮らしていきたいと思っています」
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Page 5
築56年の都内にある物件を購入し、2年前にフルリノベーションをして
暮らしている中島さんご夫妻。結婚して家を買おうと決めてから、
新築やコーポラティブハウスなど、計30軒ほど内見をしたという。
「何も手を加えなくてもオシャレ! みたいな家があればいいなと
思っていたのですが、そんな理想を全部叶えてくれる家って、
なかなか巡り合えない。ふたりで考えた末、中古マンションを
リノベーションすれば、自分たちの好きなデザインにできるし、
コスパもいいと思って。そこからリノベ会社を探しはじめたんです」
と話すのは、妻の彩衣子さん。
特にこだわったのは、ベッドルーム、洗面スペースも兼ねている「寝室」。
「夏は暑いし冬は寒いし、洗面所という空間が苦手で。
だからドライヤーを持ってリビングに行って乾かしたり、
メイク道具もリビングに持ち込んだりして。
それだったら洗面も部屋にあったらいいよねという気持ちで、
寝室の一角につくったんです」今回のリノベーションでは、
ふたりのやりたいことだけを詰め込んだと話す彩衣子さん。
今年の夏からは聖太さんの仕事の都合で、
2人の二拠点生活もスタートした。
「今後はライフステージに合わせて、寝室に新たに壁を立てて
個室をつくってもいいかもしれないし。あまり先のことまで考えずに、
今の暮らしに合わせてつくりました。これから1か月のうち東京に半分、
地元・名古屋に半分のデュアルライフ、とても楽しみです」
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日本の美を散りばめた空間や、2拠点を見据えた暮らしなど、
マンションのリノベーションにおける、新しいスタンダード、
その選択肢もますます広がっている。
自分にとって何が心地よいか? どんなふうに暮らしていきたいか?
日々の暮らしと深く向き合ったときに、住まいにおいて、
何を大切にしたいのか、そのヒントが見つかるはずだ。
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TOKOSIE(トコシエ)
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