連載
posted:2016.7.15 from:兵庫県神戸市東灘区 genre:暮らしと移住 / 食・グルメ
sponsored by 神戸市
〈 この連載・企画は… 〉
旅するように暮らす、暮らすように旅する。それができるのが神戸の魅力。
ブックレット『CLASS KOBE』で紹介した場所、そして、オリジナル記事も加えた、
神戸の暮らしを訪ねたくなるコロカルの神戸案内です。
text & illustration
kao.ri hirao
平尾 香
ひらお・かおり●イラストレーター。神戸生まれ、独自の個性を発揮した作風で、世界的ベストセラー「アルケミスト」を始めとする書籍のカバーや、雑誌の挿絵、広告などで活躍。個展も多数開催。現在は、逗子の小山にアトリエを構え、本人の取材やエッセイなど活躍の幅は広い。著書本に「たちのみ散歩」(情報センター出版局)「ソバのみ散歩」(エイ出版社)
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Supported by 神戸市
神戸出身で、コロカルで『たびのみ散歩』を連載中のイラストレーター平尾香さん。
お酒好きな平尾さんが、日本酒の産地である神戸灘五郷をめぐる旅をお届けします。
後編は、〈福寿〉をつくる〈神戸酒心館〉へ。
神戸の酒どころ灘五郷をめぐる2日目は、〈神戸酒心館〉へ。
5つある郷の中でも一番西側に位置する御影郷にある蔵元です。
阪神電車の石屋川駅から川沿いの遊歩道や公園を歩いて向かいます。
〈福寿〉という銘柄の酒をつくるこちらは、2日前までに電話で申し込みをすれば、
酒蔵見学が個人で気軽にできるのです。
11時の集合時間には、思っていたより多い見学者が集まっていました。
学生さんらしきグループ、トートバックを肩にかけたニット帽青年、
旅行中らしきカップル……。
日本酒が好きな人の幅は増えてるようで、なんだかうれしい。
そして、私は、お酒は舐める程度の母と一緒に参加です。
半被を着た社員の吉田さん、入社2年目とは思えない慣れた口調で、
日本酒について話してくださった後に、ビデオ鑑賞。
六甲山から吹く風、六甲おろしや、六甲山の花崗岩層を通過して西宮に湧き出る
ミネラル分量の多い水は宮水と呼ばれ、灘の酒づくりに欠かせないこと、
江戸時代にさかのぼった歴史のことなど。
この灘の土地だからこそのおいしいお酒ができるってことですね。
その後、いよいよお酒ができるまでの工程の見学。
エレベーターで3階まで上がってスリッパに履き替えます。
横に置かれた棚の上段には、会長、社長、常務とマジックインキで縦書きされた
白い長靴がきれいに並んでいます。
この会社の細やかな秩序は、生産量を多くせずに、
手づくりで丁寧に良質なお酒をつくるという酒造方法にも、
つながっているように感じたのでした。
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真横にあるドアのガラス窓部分から覗くと、中は湯気っぽい。
大きな釜で酒米が蒸し上がったところを杜氏さんが大きな木尺でかきまわしています。
見学は、廊下に沿って窓ガラス越しに中の様子を見ながら説明を受けるというもの。
地上2階分の高さのある大きなタンクに酒母と麹、蒸米、宮水が入って、発酵、熟成中。
タンクを上から見られるように3階までエレベーターで上がってきたというわけ。
熟成して醪(もろみ)となったものを圧搾濾過して生酒となります。
圧縮したときに残った板状のものが酒粕です。
福寿では、袋しぼりという吊るした袋から滴り落ちる希少なお酒もつくっていて、
雑味がない贅沢なお酒だそう。
火入れ、調合、殺菌をして清酒となり、瓶詰めしたなら、できあがり。
出荷前のケースに入った一升瓶を上から目線で覗けます。
ほんのり酒の甘い香りに包まれながらの見学は終了。
最後はいよいよ利き酒タイム。
1階へ降りて、蔵元ショップで手渡されたプラスチックコップに
お酒を注いでもらっては、飲み、ふむふむ。
手を伸ばして次のお酒を飲みと繰り返します。
下戸に近い母も関西人魂で手を伸ばすものだから、私はふたり分の
生酒、純米、にごり酒、純米吟醸、大吟醸、スパークリングと
豊富な日本酒をいただいてたら、ふわっといい気分に。
いろいろ飲むと自分の好みもわかるというもの。
ノーベル賞授賞式の晩餐会でも振る舞われたというこちらの純米吟醸は、
すっきり飲みやすくておいしい。青の四合瓶も美しい。
緑の通い瓶にその場で生酒を詰めてもらうというのは、蔵元に来た人だけの買い求め方。
柄ゆきも神戸らしくモダンかわいいワンカップ。酒粕の種類だって豊富に3種類。
ショップには、日本各地のおつまみや調味料などの食材も並んで、
おみやげ選びも楽しいひととき。
もう少しお酒が飲みたいならカウンターコーナーへ。
ゆっくり腰かけて、暑い日なら、凍結酒をスプーンで
シャリっといただくのもいいかもしれません。
お昼は隣の古い蔵を移築改築した食事どころ〈さかばやし〉へ。
平日でもほぼ満席の賑わい。
雰囲気もあって、お食事もおいしいとなれば、リピーターも多そうです。
2階は団体用のお座敷、麹をつくっていた場所だそう。
瀬戸内海のお魚に豆腐やそばなど、
母とゆっくりおしゃべりしながらいただくランチは贅沢な時間。
お酒は80ミリと小さめのグラスでいただけるのもうれしいところ。
昼酒に、高い天井の窓から午後の明るい日差しも入り込んで
なんとも気持ちがいいのです。
奥の古い蔵はホールとして、コンサートなどのイベントも定期的にあるそう。
創業1751年、灘五郷の中では規模は大きくない酒造会社ですが、
酒蔵にお客さんを招くことで、たくさんのお客さまに愛されて、
おいしい手づくりの日本酒の味は、広がってゆくのかな。
帰りに黒の杉板と白の漆喰のコントラストがきれいな蔵の壁をバックに
記念写真を撮り合って、手にはお土産物をぶら下げて。
楽しい時間はあっという間。
information
神戸酒心館
住所:兵庫県神戸市東灘区御影塚町1-8-17
TEL:078-841-1121
蔵見学、ショップ営業時間:10:00~18:00(見学は要申し込み)
さかばやし営業時間:11:30~14:30(L.O 14:00)、17:30~22:00(L.O 21:00)
さかばやし予約・問い合わせ 078-841-2612
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