連載
posted:2024.11.29 from:茨城県笠間市 genre:アート・デザイン・建築
sponsored by BESS
〈 この連載・企画は… 〉
ライフスタイルの基本は、やはり「家」。
ログハウスなど木の家を得意とする住宅ブランド〈BESS〉とともに、
わが家に好きなものをつめこんで、
最大限に暮らしをおもしろがっている人たちをご紹介します。
writer profile
Rihei Hiraki
平木理平
ひらき・りへい●静岡県出身。カルチャー誌の編集部で編集・広告営業として働いた後、2023年よりフリーランスの編集・ライターとして独立。1994年度生まれの同い年にインタビューするプロジェクト「1994-1995」を個人で行っている。@rihei_hiraki
photographer
Daisuke Ishizaka
石阪大輔(HATOS)
「狩猟をやっていると、自分はほかの動物の命に生かされていることに
気づかされるんです。
自分で命を獲ったものを、自分で解体して食べる。
その“命をいただく”感覚に感動したんです」
茨城県笠間市の郊外で、BESSの「ワンダーデバイス」に暮らす菅谷一成さんは
「狩猟」の醍醐味をこう語る。
菅谷さんは自動車ディーラーで営業の仕事をするかたわら、
わな猟の狩猟免許を取得している。
笠間市は近年イノシシやハクビシンなどの獣害に悩まされており、
一成さんは地域の捕獲団体に所属して、イノシシなどの獣害対策に当たっている。
家の周辺にはいくつかの箱罠を仕掛けており、これを毎朝チェックするのが日課だ。
「もしイノシシが入っていたら、その後仕事に行かなければならなくても
朝のうちにシメます。
営業と狩猟というなんだか両極端なことをしているものですから、
どうやら会社では『菅谷ってやべえ奴だぞ』と、評判が立っているようですが(笑)」
狩猟にのめり込んだきっかけは、3年ほど前にたまたま見た、
伝説の罠猟師・片桐邦雄を追ったドキュメンタリー番組だった。
「もともと猟には興味があったのですが、
片桐さんの生き様を見ていたらもう一気に狩猟の世界に惹き込まれてしまいまして。
本格的に狩猟をやってみたいと思い始めました。
そうしたらちょうど住んでいる地区にあるイノシシの駆除隊から、
メンバーに入ってくれないかとお誘いがあったんです」
願ってもないタイミングで声がかかり、迷わず駆除隊に入隊することを決めた菅谷さん。
偶然にも笠間市には茨城県の狩猟者研修センターがあり、
狩猟免許を取りやすい環境も整っていた。
そして憧れの片桐さんと同じく、「わな猟師」の免許を取得した菅谷さん。
この日は一成さんのお気に入りの場所だという広いウッドデッキで、
仕留めた猪肉を振る舞ってくれた。
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もともと車の整備士としても働いていた一成さん。
肉が焼けるのを待つ間、一成さんは狩猟で使う道具に対するこだわりも語ってくれた。
「整備士の仕事は『段取り八分、仕事二分』といわれています。
だから工具がものすごく大事。それで仕事のスピードや質が決まってくるんです。
狩猟もそれと同じで、用途によって適したナイフも変わってくる。
そうなると素材の違いやらでいろいろな種類がありますから、
こだわりだすとキリがないんですよ」
炭火で焼いたロースと肋骨の部分から香ばしい匂いがしてきた。
飼い犬のマロンちゃんも物ほしそうにこちらを見ている。
「このカリカリに焼いた肋骨についた肉を剥ぎ取るようにしゃぶりついてください。
それをビールで流し込むのが最高です」
猪肉はほとんど臭みもなく、肉の弾力も抜群で旨みたっぷり。
味付けはシンプルに塩と胡椒。しかしそれだけで十分。
目の前に広がる綺麗に管理された庭を眺め、
命への感謝と共にいただく猪肉は絶品だった。
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BESSの家に暮らし始めたことで生活は大きく変わった。
「趣味の延長上の家」と一成さんは表現していたが、
この家の暮らしを快適にするために、
生活と密着した「趣味」といえるものが増えたという。
そのひとつが先ほどの「狩猟」だが「庭の手入れ」もそうだ。
家を建てたこの場所は一成さんの実家の所有地で、元々は畑だった。
そのため土地は耕作に適した黒土で、
特に雨が降るとひどくぬかるんだ状態になっていたという。
そこで、菅谷さんたちは家を建てた当初から庭となる場所の“改良”を始めた。
初めはスギナだらけで途方にくれたと振り返るが、
もともと植えられていた柿、梅、栗、イチジクなどはそのまま残しつつ、
グランドカバーにはホームセンターで見つけたヒメイワダレソウを採用。
植えてみると、瞬く間に地面を覆っていったという。
そして庭の一部には新たに花壇を設け、
今ではパンジーなど季節の花々を恵子さんが管理している。
「この家に住んでから始めたので得意というわけではないんですけど、
実家で母がよく花を育てていたことを思い出しながらのんびりやっています。
ときどき私の両親が水戸から来て花のお世話をしてくれるんです」
BESSユーザーの多くが家に住み始めてからの最初の仕事を
「薪棚をつくること」だと語るが、菅谷さんも自身で薪棚をつくるようになったひとり。
DIYの経験はなかったそうだが、
一成さんは「いや、今の時代なら簡単ですよ。
ググっちゃえば設計図が出てくるんですから」と、あっけらかんに語る。
家の前にはずらりと薪棚が並ぶ。現在は3〜4年分もの薪がストックされているそう。
「薪は基本的には私が所有・管理している山林からとれる量で十分賄えるんですけど、
近隣の住人からいただく機会も多いんです。
支障木が出ると当然伐採しなければならないのですが、
産業廃棄物扱いになってお金がかかることもあるので、
処理に困っている人も多いんですよね。
時には家の前を車で通りがかった人が薪棚を見て、
『うちの木も引き取ってください』と言われることもあるんですよ」
その願いに応えるにつれ薪も増え続け、現在は「在庫過多です」と一成さんは笑った。
一成さんは、雨の日でも作業ができるように小屋もつくろうと動いているという。
さらに、わな猟師としての免許だけではなく、
銃猟免許もいずれは取得したい気持ちがあるそうだ。
やりたいことはまだまだ尽きないようだ。
BESSの暮らしから始まった趣味は、これからも暮らしの楽しみを拡張していく。
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BESSの家に住んで一番大きく変わったことは
「家に帰ることが楽しみになったこと」だと語る一成さん。
「BESSの家に暮らす前は水戸市内のアパートに暮らしていました。
当時は仕事で溜まったストレスや疲れが抜け切らないというか、
自宅だけど完全にリラックスできていたわけではなかったと思うんです。
それが今では、家の前に車を停めた瞬間に『家に帰ってきたぁ』と感じて、
完全にスイッチがカチンと切り替わるようになりました」
もともと、ログハウスでの暮らしに憧れがあった。
その発端は学生時代に観たドラマ『北の国から』だそうだ。
主人公・黒板五郎の生き方に深く共感した一成さんは、
ログハウスでの暮らしを夢見るようになる。
そして長男が小学校に上がるタイミングでいざ家を建てたいと考えたとき、
雑誌や周囲の話からBESSの存在を知り、
当時水戸にあったLOGWAY(BESSの展示場)を訪れてみて、
その無垢材に囲まれた家に一目惚れしてしまった。
当初、妻の恵子さんは市街地で白壁のプロヴァンス風の家を建てたいと考えており、
一成さんと意見が対立してしまった。
「便利な世の中だからこそ、不便な生活を営みたいと思っていました。
徒歩で少し歩いたらコンビニやスーパーがあるとか、そうした便利な生活もいいけど、
あえて周りに何もないこんな場所での暮らしを
子どもにも経験してもらいたいと思ったんです。
不便さを通じて、便利さを痛感してほしいなと」
最終的に一成さんのそのような思いに折れたかたちとなった恵子さんも、
今のBESSの暮らしについてこう語っている。
「やはり周囲の環境を気にしない生活はすごく楽ですね。
カーテンも開けっぱなしですし、大きな音を立てても、
外でバーベキューしても近所の方に配慮する必要がないので。
ストレスフリーな環境だと思います」
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「便利な世の中だからこそ、不便な生活を」という一成さんの思いは、
しかしある意味で裏切られることになる。
「実はここらへんの子どもたちは、みんなスクールバスで学校に通うんですよ。
だから都会の子よりも圧倒的に運動不足かもしれません(笑)」
そう笑いながら語る一成さんだが、
ふたりの子どもは小さい頃から自然豊かな環境とBESSの暮らしを堪能してきた。
ワンダーデバイスでは、家を建てる際にさまざまな“装置”を設置することができる。
夫妻は子どもたちのためにと、ウンテイやハンモック、クモの巣スイングなどを設け、
そこで小さい頃は遊び回った。恵子さんは語る。
「2階にはそれぞれの子ども部屋があるんですけど、
基本的にふたりとも自分の部屋に籠らずに1階で過ごすんです。
やっぱりこの家に居心地の良さを感じてくれているんだと思います。
兄妹の仲もいいですし、
この前息子が帰省したときにはふたりで庭でバドミントンをしてましたよ」
ふたりの子どものうち長男は大学進学を機に家を出たため、
現在は夫婦と娘、そして飼い犬のマロンちゃんとの3人と1匹暮らし。
自らのログハウスへの憧れから選んだBESSの家だが、
一成さんは最後にもうひとつの決め手を語ってくれた。
「家って、自分たちが生涯住む場所だということを考えたら、
子育て期のことを考えるのも大事なんですけど、子どもたちが家を出て、
妻とふたりきりになっても長く快適に暮らせる家がいいと思ったんです。
もちろん足腰が弱くなったらマンションのほうがいいかもしれないですけど、
私と妻はこういう自然の中で暮らすのがいいよねと。
近所の目も気にせず、気持ちよく自分たちの暮らしを満喫できる暮らしなら
妻とずっと楽しく過ごせると思うんですよね」
今は高校生の長女も、いつかはこの家を旅立つときがくる。
子育ての忙しさや責任から解放されたとき、
BESSの家だからこその手間を楽しむストレスフリーな暮らしは、
夫婦の時間をさらに充実させるものになるだろう。
子どもたちのため、そして自分たち夫婦のため。
菅谷家の人生にBESSの家は生涯寄り添っていく。
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