colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧
記事のカテゴリー

連載

赤羽〈まるます家〉
うなぎに鯉のあらいに、
冬にはスッポンなどの鍋ものも

たびのみ散歩
vol.006

posted:2014.10.31   from:東京都北区赤羽  genre:食・グルメ

〈 この連載・企画は… 〉  イラストレーターとして活躍する平尾香が、各地の粋な飲み屋をご紹介。
旅して飲んで、おいしいお酒と肴と人に出会います。

text & illustration

kao.ri hirao
平尾 香

ひらお・かおり●イラストレーター。神戸生まれ、独自の個性を発揮した作風で、世界的ベストセラー「アルケミスト」を始めとする書籍のカバーや、雑誌の挿絵、広告などで活躍。個展も多数開催。現在は、逗子の小山にアトリエを構え、本人の取材やエッセイなど活躍の幅は広い。著書本に「たちのみ散歩」(情報センター出版局)「ソバのみ散歩」(エイ出版社)
http://www.kao-hirao.com/
https://www.facebook.com/Kao.0408.hirao

イラストを拡大

明るい時間から、ほろ酔い気分。

とにかく明るい。引き戸は開け放たれたままの
秋の初めのこの日の入店時間は、午後3時、おやつの時間。
朝の9時から開いてる「鯉とうなぎのまるます家」表には、
お持ち帰り用の鰻がケースに並び、さばくまな板台や焼き場も。
うな重を食べるお昼ごはんの客は引いて、呑み助の時間で熱気むんむん、
運よく座れていつも満席状態。
角地にあるこの店は、出入り口がふたつ、コの字カウンターもふたつ。
直角ボックスのテーブル席を背にカウンターを陣取れば、
けたたましいぐらいに目に飛び込んで来るのが赤文字の短冊メニュー。
薄いグリーンのテーブルとそこにニョキニョキ立ってる名物「ジャン酎」の
水色ラベルの1リットルボトルも店内の明るさに一役たっているよう。

キョロキョロ、壁という壁に貼られたメニューの中から今日のアテを選び抜かねば……。
人は「始めました」という言い回しに弱いもの、
「きのこおろし始めました(自家製)」は則決定。
流れで土瓶蒸し、ここで、頼まなかったことはないかぶと焼きなど。
フライものは、値段に合わないボリューム満点。
鯉のあらいに、冬にはスッポンなんかの鍋ものなど、選び放題のメニューがうれしい。
ジャン酎モヒートでお願いすると例のボトルがドン! 氷の入ったグラスがドン! 
小皿に乗ったライムとミントがついてくるので、
自らマスターになったつもりでモヒートを作ります。
ジャン酎の正体は、酎ハイのジャンボ瓶。結構お強いお酒ですが、
ライムとミントの爽やさで、気がつけば、継ぎ足してるから驚きです。

次のページ
カウンターの呑み客はいい顔揃い

Page 2

置かれたお皿が隣のお客のエリアを邪魔しないように気遣いながら、
カウンターの呑み客は、いい顔揃い。
斜め向いの若手サラリーマンふたり組の食欲が止まらない様子。
どんぶりサイズのモツ煮込みをかきこんでたかと思ったら、
ゲソ天の山と格闘してるご様子、あれ、その前メンチカツ食べてましたよね。
向こうのカウンターの後ろ姿のカップルの女性が髪をかきあげて、
男性がうなじを見たかと思えば、シュシュでまとめあげてしまいました。
会話は聞こえないけど、ふたりの仕草で仲睦まじい関係が覗けたような……。
その向かいの女性ふたり組の、ハンドタオルで口を押さえつつの
泣き笑いの会話は止まらない様子。

小さな間口から厨房へ料理の注文を通す女将と女性店員の
目と耳が隅々まで気をきかせて、店が回転しているのだけれど、午後のひととき、
この居心地のよさを知ってしまった大人たちの回転率はめっぽう悪いから、
お酒は3本までと決まってる。そんな強者になったことはないけれど、
このジャン酎も1本カウントというから、かなりゆっくりできちゃうかも。

ほろ酔いで店を出ても外の世界は、まだ明るい。
目と鼻の先の小学校から帰るランドセル少年、
買い物袋いっぱいの主婦が行き交う夕方の明るいまち並み。
赤羽を散歩がてらにもう1軒、いや、あと2軒!

イラストを拡大

イラストを拡大

Information


map

鯉とうなぎのまるます家

住所:東京都北区赤羽1-17-7

TEL:03-3901-1405

営業時間:9:00~21:30

定休日:月曜休

Feature  特集記事&おすすめ記事