屋久島〈送陽邸〉の朝ごはん。 毎日でも飽きない絶品の朝食には トビウオは欠かせない。

薄味でシンプル。実は毎日でも飽きない、屋久島定食。

毎年数多くの観光客を迎えている屋久島。
観光客にとって欠かせない楽しみのひとつが、
その土地ならではの食事であろう。
そこで屋久島の永田地区に1992年にオープンし、
屋久島の海から聞こえる波の音をBGMに
泊まることができる宿「送陽邸」の朝ごはんを覗いてみた。

食卓にあがったのは、ごはん、みそ汁、お漬物、のり、屋久とろ、
そしてトビウオとシンプルな献立。古き良き日本の魚定食だ。
やはり屋久島名産というだけあってトビウオは欠かせない。

「塩に漬けてひと晩置いたものです。うちでは焼かずに湯がきます。
焼くより塩分が落ちるのでヘルシー。それに焼くより簡単(笑)」と
こっそり打ち明けてくれたのは、家族経営のなかで、
料理の総監督を務める奥さまの岩川エツ子さん。
かつての屋久島はトビウオ漁が大きな産業となっていたが、
最近では漁獲量もかなり減ってしまったという。
屋久島出身のエツ子さんは、トビウオ漁の昔話をしてくれた。

「昭和40年代くらいまでは、トビウオ漁に何十台もの漁船が出ていました。
大漁だと漁船が旗を立てて戻ってくるんですね。
すると村にはサイレンが鳴って、
学校にいた子どもたちも港に行ってお手伝いをしたものです。
すぐに塩漬けにして、樽に頭を揃えて並べて一晩漬けました。
翌日はゴザを敷いて、その上にそのトビウオを並べて干すんです」

トビウオは昔から屋久島のひとに食べられてきた魚で、
今も変わらず愛されている。保存するためにとられた塩漬けの製法が、
食べたときのほんのりとした塩味となる。
トビウオは淡泊で脂分が少ないので、
少し塩味を加えるだけで飽きずにずっと食べられてきたのだ。
他にも首折れサバなど、屋久島名産にはやはり淡泊な魚が多い。
このトビウオ以外にも全体的に味は薄味で、塩分控えめ。
九州の味付けは一般的には甘めだと言われるが、
屋久島はトビウオからもわかるように、薄味が好まれるようだ。

屋久島産の屋久とろは、通常の山芋よりも粘りが強く、
みそ汁をつくっているときに入れるとそのまま団子状になるというほど。
ご飯にかけてツルッと、というより食感もしっかりしていて、
食べごたえがある。立派なおかず感覚。

みそ汁にも、もちろん屋久島産の具がたっぷり。
なるべくたくさんの品目を入れたいと、10種類程度は野菜などを入れている。
これが味に深みを与えてくれる。
野菜や屋久とろなどは、近くの農家からもらえることも多く、
土地の恵みがたっぷりつまったみそ汁だ。

食後には、黒砂糖がひとつ用意されるのが「送陽邸」流。
屋久島のひとたちはよくお茶菓子として食べている。
これ一粒で元気が出てくる気がするから何だか不思議。
これから山登りするのに、最高のエネルギーチャージとなるのだ。

送陽邸の食堂はほぼ海の上。
海からの風を感じながらいただくトビウオが格別なのはいうまでもない。

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