連載
posted:2016.7.23 from:埼玉県川越市 genre:食・グルメ
sponsored by KIRIN
〈 この連載・企画は… 〉
その土地ならではの風土や気質、食文化など、地域の魅力を生かし
地元の人たちと一緒につくった特別なビール〈47都道府県の一番搾り〉。
コロカルでは、そのビールをおいしく飲める47都道府県のスポットをリサーチしました。
ビールを片手に、しあわせな時間! さあ、ビールのある旅はいかがですか?
writer profile
Miki Hayashi
林みき
はやし・みき●フリーランスのライター/エディター。東京都生まれ、幼年期をアメリカで過ごす。女性向けファッション・カルチャー誌の編集を創刊から7年間手がけた後、フリーランスに。生粋の食いしん坊のせいか、飲料メーカーや食に関連した仕事を受けることが多い。『コロカル商店』では主に甘いものを担当。
photographer profile
Kazue Kawase
川瀬一絵
かわせ・かずえ●島根県出雲市生まれ。2007年より池田晶紀が主宰する写真事務所〈ゆかい〉に所属。作品制作を軸に、書籍、雑誌、Webなど各種メディアで撮影を行っている。
http://yukaistudio.com/
credit
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47都道府県、各地のビールスポットを訪ねます。
埼玉でコロカルが向かったのは、ノスタルジックな蔵づくりのまち並みが残る
〈小江戸 川越〉。
30数棟の蔵づくりが軒を連ねる川越一番街。
江戸の景観を受け継ぐそのまち並みは、
国の「重要伝統的建造物群保存地区」にも選定されています。
そんな趣き豊かな一番街でコロカルが訪れたのは、江戸末期の1867年の創業以来、
6代にわたって一番街に店舗を構えている〈中市本店〉。
かつおぶしを中心に、昆布や煮干などの海産物や乾物を取り扱うお店です。
創業当時は鮮魚屋として、生の魚を取り扱っていた中市本店。
「海のない埼玉で鮮魚?」と不思議に思う人もいるかもしれませんが、
当時は新河岸川の水運を利用して、海からの品物を仕入れていたのだそう。
「でも太平洋戦争をはさんで、乾物を取り扱うようになったんですよ」
と話してくれたのは、6代目の落合康信さん。
「この辺りも戦時はだいぶ混乱していたようで、
川の水運で魚を運ぶことができなくなってしまったらしくて。
そんななか、海のものを取り扱うことは変えずに、手に入るもので商売を続けようとした
3代目と4代目の知恵によるものだったと思います」
落合さんが子どもの頃は、卸売りを専門にしていた時代もあったという中市本店。
しかし落合さんの代となる少し前、大河ドラマ『春日局』が
放送されたことをきっかけに変化が訪れます。
「このドラマで川越が注目されて、地元以外のお客さんも来るようになって。
そこで『卸だけじゃもったいないから、小売りも再開しようか?』となったんです」
そんな中市本店の店頭に並ぶ商品のなかには、かつおをスモークした燻製鰹や、
いわしの削りぶしなど、量販店では見かけない珍しいものも。
「商品を取り扱うかどうかを決めるときに基準にするのは、
やっぱり味がおいしいことと価格。
初代からの教えである『いいものを、お求めやすいお値段で』を守っています」
「3つ目に重要視しているのが、うちに来ないと手に入らない商品を置くことです。
うちは小さいお店なので、量や種類でいったら
ホームセンターやスーパーといった量販店には絶対に勝てない。
そこで、こだわりのあるおいしくていいもの、
珍しいものを探して仕入れるようにしているんですよ。
製造元とのつきあいも長いことあり、いろいろと融通を利かせてくださっていて。
いいものがあると、すぐ教えてもらえるので本当に助かっています」
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基本的には地元のお客さんが多いという中市本店ですが、
観光で川越を訪れるのは若い人が多いのだそう。
そんな人たちにも、削りたてのかつおぶしのおいしさを知ってもらおうと
店頭での販売を始めたのが、いまやお店の看板商品となった
〈ねこまんま焼きおにぎり〉。
「かつおぶしには本枯節と荒節があることが、特に若い方には知られていなくて。
本枯節と荒節では、香りや味わいが全然違うことをどうアピールするかを考えたとき、
実際に食べてもらうのがいいと思ったんです」と落合さん。
「あと我が家には昔からずっと使っている、
かつおぶしでだしをとった自家製のだし醤油があって。
おいしいし、かつおぶしのおいしさがわかるので、
このだし醤油は使いたいなと考えたとき『焼きおにぎりがいいかな?』と思ったんです。
おにぎりとかつおぶしはすごく合うし、手軽に食べられる。
だし醤油とかつおぶしで、ほかのお店にはないものをつくれることもあり、
販売を始めました」
かつおだし粉を炊き込んだ白米でつくったおにぎりを、
炭火でじっくりと焼き上げる、ねこまんま焼きおにぎり。
側面までパリッと焼き上げてからだし醤油が塗られるのですが、
この瞬間に立ち上るのが、食欲をそそる香ばしい香り。
日本人なら誰もが抗えないであろうこのおいしそうな香りに、
つい足を止めてしまう人が続出していました。
だし醤油の焦げ目がついたら網から外し、
ふわふわの削り節をたっぷりとまぶして、ねこまんま焼きおにぎりの完成!
「かつおぶしを上からまぶすっていうのがほかにあまりないからか、
メディアで取り上げられまして。そこから口コミがだんだん広がり、
販売を始めた頃は1日50個売れるか売れないかくらいだったのが、
いまでは土日だと400~500個くらい売れるようになりました。
ここまで反応があるとは思っていませんでしたし、
何せうちは家族3人でやっているので、
てんてこ舞いになっちゃうこともあります(笑)」
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まぶされる削り節は2種類あり、本枯節の〈かつお節〉と、
にぼしの削り節である〈いわし節〉のどちらかを選べるスタイル。
「いわし節は静岡の由比でつくられている珍しいもの。
いわしのにぼしはクセのある印象が強いですが、
これは頭とハラワタをきれいに取ってから削られているので、
くさみや苦味がないんですよ。
なかなか味のイメージが沸かないと思いますが、
リピート率はいわし節のほうが高いですね。
あと焼きおにぎりに使っている削り節を買って帰るお客さんも多くて。
その点では、うまくお店と連動できましたね」
中市本店の店内にはイートインスペースも設けられていますが、
一番街のあちこちには休憩所など、まち巡り中にひと休みできる場所があります。
せっかくなので、まち並みを眺めつつ味わおうと、
熱々の焼きおにぎりを手にお店を後にしました。
広場のベンチに腰をおろして焼きおにぎりをひと口頬張ると、
口いっぱいに広がる削り節の旨み。
力強いかつお節の風味とご飯の黄金コンビのおいしさと、
いわし節の潮を感じさせる上品な味わいは、
思わず「日本に生まれてよかった……」と、つぶやきそうになるほど。
ひと口食べるたびに、滋味が体にしみわたるのが感じられ、
食べ終える頃には心も体もほどよくゆるんだリラックス状態に。
目に映る小江戸の風景も相まって、都会にいるときよりも
時がゆったりと流れているように感じられました。
都心から、ちょっと離れるだけで体験できる、ゆるやかな時の流れ。
めまぐるしい日々や都会の喧噪から少しだけ逃げ出したくなったとき、
ふらりと川越を訪れてみてはいかがでしょう?
やわらいだ心地で飲むビールも、
いつもと少し違う味わいや楽しさをもたらしてくれるはずですよ。
※一番搾り 埼玉づくりは、埼玉の誇りを込めてつくった、埼玉だけの味わいです。
問合せ/キリンビール お客様相談室 TEL 0120-111-560(9:00~17:00土日祝除く)
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