colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧
記事のカテゴリー

連載

8300枚の棚田再生に汗を流し、
千年の里山風景を堪能する

NIPPON 47 Beer Spots&Scene!
全国、心地いいビールスポット
vol.001

posted:2016.4.25   from:岡山県美作市  genre:食・グルメ

sponsored by KIRIN

〈 この連載・企画は… 〉  その土地ならではの風土や気質、食文化など、地域の魅力を生かし
地元の人たちと一緒につくった特別なビール〈47都道府県の一番搾り〉。
コロカルでは、そのビールをおいしく飲める47都道府県のスポットをリサーチしました。
ビールを片手に、しあわせな時間! さあ、ビールのある旅はいかがですか?

writer profile

Kaori Kai

甲斐かおり

かい・かおり●執筆・編集。長崎県生まれ、東京在住。日本各地を取材し、ものづくりや地域コミュニティ、里山・郷土文化、農業をテーマに取材し、雑誌やウェブで紹介しています。小さな集落を歩く地味旅が好き。でもハイカラな長崎が秘かな誇りでもある。

credit

撮影:内田伸一郎

credit

Supported by KIRIN

47都道府県、各地のビールスポットを訪ねます。
岡山でコロカルが向かったのは、美作市の棚田が広がる集落。

新緑の季節、千枚田の里をめざして

岡山市内から北東に向けて、吉井川沿いに車を走らせること約1時間。
一路、山奥へ山奥へ。若葉の淡い緑が車窓を流れます。
この時期の木々はふつふつと音がしそうなほど生の力に満ちていて、
山の空気に、都会での疲れがすっと抜けていくよう。

向かうは、岡山県美作市上山地区。
山間を縫うように走り、この道でまちがってないよね……
と不安になりかけた頃、ようやく上山の看板が見えました。
ぱっと視界が開け、目に飛び込んできたのは田んぼ、田んぼ、田んぼ――。
視界の端から端まで、大空の下に一面の棚田が広がります。

〈上山の千枚田〉は、奈良時代が起源ともいわれ、
最盛期には8300枚が連なっていたというほどの規模だったのだとか。
精緻に積み上げられた石垣はいまも健在で、ちょっとした遺跡のよう。
6月になれば田んぼには水が張られ、秋には稲穂が黄金色に。

その景観を見るだけでも心は洗われるのだけれど、上山での過ごし方のおすすめは、
この棚田づくりに参加するという、新しい旅のスタイル。
土地の人たちとふれあい、みんなで田んぼで汗をかく。
普段とはひと味違う、田舎を体験できそうです。

上山の千枚田は、四季折々の顔を見せてくれます。(写真提供:英田上山棚田団)

8300枚の棚田を復活させたい

いまでは美しい上山の棚田ですが、実はほんの10年前まで、
ここ一帯の田んぼは雑草に埋もれ、見る影もありませんでした。

1970年代に始まった減反政策の頃から、大きな機械の入らない棚田は、
どんどん耕作放棄されていったのです。

その荒れた土地を、約10年前から再生し始めた希有な集団があります。
その名も〈NPO法人 英田上山棚田団〉。
大阪からの通い人と、移住者から成る集団です。

棚田団は、メンバーのひとりのお父さんが上山へ移住し、
水路掃除を手伝ってもらおうと大阪の息子を呼び寄せたことに始まりました。
息子さんは友人知人と連れだって、頻繁に上山へ通うように。
このメンバー十数名が、いつしか「8300枚の棚田を見てみたい」と、
田んぼを覆っていた草を刈り始めたのです。

めいっぱい太陽の光を浴びて、青空の下で汗をかく。
真夏にはちょっと過酷では……と思われる草刈りも、
普段都会で暮らす彼らにとっては、爽快な楽しみに。

「みんなで汗を流したあとの温泉と、ビールが最高!」と、
毎週のように東京や大阪から通ってくる人も現れ始めました。

活動9年目にして、約1600枚(15ヘクタール)の田んぼが
元の姿を取り戻しています。

2008年、活動開始から2年目。まだ草ぼうぼうの状態だった、荒れた棚田。(写真提供:高田昭雄)

2015年、活動8年目。ひとつ前の写真と同じ場所から撮影した再生後の棚田。昔と同じように、手作業の櫨干し(はぜぼし)が行われています。(写真提供:高田昭雄)

次のページ
「ここでならできるかも」と移住してきた若者

Page 2

自分の手で景観をつくる楽しみ

「もちろん、棚田が復活したらいいなという思いで活動していますが、
目に見えてどんどん風景が変わっていくのは達成感があります。
自分の手で再生した田んぼに、蛙が鳴いたり、秋になると稲穂が実る。
それって、風景を自分の手でつくり出しているようで楽しいスよ」

そう話すのは、2012年に移住してきたひとり、梅ちゃんこと梅谷真慈さん。
岡山大学大学院の土壌管理学分野で研究していた梅ちゃんは、
学生の頃から上山へ通っていて、卒業後、決まっていた内定を断って、
ここで暮らそうと決心したのだそう。

「持続可能な暮らしと口で言うのは簡単ですが、
本当にそう暮らしたいと思ったとき、ここでならできるかもって。
自分を鍛えられるんじゃないかと思ったんです」

移住して、今年で5年目の梅ちゃん。つなぎ姿の梅ちゃんが草を刈る様子は、上山ではすっかりおなじみ。

梅ちゃんは、長いこと手つかずだった集落の竹薮をたったひとりで刈り払い、
地元の人たちを驚かせました。

「あっという間に竹林がなくなっちまうんだもの。ほんとにびっくりでよ」

棚田団のおかげで集落の風景がみるみる蘇っていくことに一番驚き、
わくわくしたのは、地元のお年寄りたちだったよう。
「もうみんなあきらめとったからねぇ」

毎年春から、オレンジ色のつなぎを着た棚田団のメンバーがウィーンと唸る草刈り機を手に、田んぼで立ち働く様子が見られます。

昔はよく行われていた、薮に火をつけて一気に焼き払う「野焼き」も、
棚田団の手で再び行われるようになりました。

地元のおじいたちには教わることが本当に多いと、梅ちゃんは話します。
野焼きの方法、田んぼに水を引く水路の管理、田んぼの修理の方法、狩猟のこと。

いま、梅ちゃんが目指すのは、自分の手で衣食住などを整えることができる
知恵と術を身につけること。
そして、ひとりでも多くの人に、ここでの暮らしを体験してほしいと話します。

焼き払ったあとには、数十年埋もれていた石垣が姿を現します。

すこんと見渡せるようになった棚田を、
高い位置から見下ろすのは格別と、棚田団のメンバーは口を揃えます。

棚田団では、5月からの水路掃除、6月の田植えに始まり、草刈りや稲刈りなど
1年を通して誰でも参加できる棚田作業の日を設けています。
一緒に働きたい人は、いつでも大歓迎。

「棚田でみんなで働いて汗をかくのはホントに気持いいですよ。
一緒に草刈った棚田を見下ろして、ビールを飲みましょう!」

今回飲んだのは、
〈キリン一番搾り 岡山づくり〉

労働のあとのビールは気持ちがいい。「晴れの国」として有名な岡山ならば、存分に太陽を浴びているからなおさらです。〈キリン一番搾り 岡山づくり〉ならば、きっと疲れを吹き飛ばしてくれるでしょう。

キリン一番搾り 岡山づくりとは?

問合せ/キリンビール お客様相談室 TEL 0120-111-560(9:00~17:00土日祝除く) 
ストップ!未成年者飲酒・飲酒運転。

information

NPO法人英田上山棚田団

NIPPON 47 Beer Spots&Scene! 全国、心地いいビールスポット

Feature  特集記事&おすすめ記事