〈 この連載・企画は… 〉
ひとつの商店街(地域)をねり歩きながら、パンと具材を集めて勝手にサンドイッチを作る旅。
そこでしか食べられないオリジナルなサンド、果たしてどんなものができるのか?
writer's profile
Kozakai Maruko
小堺丸子
こざかい・まるこ●東京都出身。読みものサイト「デイリーポータルZ」ライター。江戸っ子ぽいとよく言われますが新潟と茨城のハーフです。好きなものは犬と酸っぱいもの全般。それと、地元の人に頼って穴場を聞きながら周る旅が好きで上記サイトでレポートしたりしています。
「商店街サンド」とは、
ひとつの商店街(地域)で売られているパンと具材を使い、
その土地でしか食べられないサンドイッチを作ってみる企画。
以前東京の3つの商店街(戸越銀座、麻布十番、巣鴨)で試してみたところ
どれも個性的なサンドイッチができあがり、感動するほど美味しいものができたので
それを日本各地の商店街でもやってみよう、というのがこの連載の趣旨である。
また、美味しいものが食べられるだけでなく
同時にまちの様子を知ることができるという一挙両得の旅でもあるのだ。
今回やってきたのは静岡県静岡市葵区にある浅間(せんげん)通り商店街。
静岡駅から歩いて15分ほどの所にあり
手前の大きい鳥居から「静岡浅間神社」まで
南北600メートルほど続く商店街だ。
浅間神社には1000年から2000年以上の歴史をもつ社があり
「東海の日光」と呼ばれるほどの漆塗り極彩色の美しい建築が見られる。
歴代幕府の崇敬を受けているが、
竹千代(家康の子どものころの名前)が元服を行ったことから
特に徳川家に厚く保護されたのだとか。
家康は住処を移しながらも、
幼少期、壮年期、大御所時代、とあわせて25年間をこの静岡市で過ごしたそうだ。
駅前や、すぐ近くの駿府城では家康の像が置かれていたり
毎年4月には有名人が家康に扮し、御台所や大名たち総勢400名を引き連れて
この浅間通りを含むまちを練り歩く大イベントも行われている。
来年の2015年は没後400年とあって、
家康にちなんだいろいろなイベントが催される予定のホットな地域なのである。
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今回ご縁があり一緒にサンドイッチをつくってくれることになったのは
見るからに優しそうな静岡県観光協会の今井利昭さん。
通っていた中学校がなんと駿府城の中にあったそうだ、超地元である。
先に浅間神社にお参りしたあと、商店街を案内してもらった。
商店街のぱっと見た印象としては、にぎやかというよりもノンビリ。
観光地の前に続く商店街としては派手な看板もなく、落ち着いている。
とはいえ、静岡の特徴がギュッとつまった商店街ということがこのあとわかる。
静岡といえば黒いツユでお馴染みの静岡おでんが有名だが
この商店街にも1軒、サザエさんのオープニングにもモデルとして出た
静岡おでん屋さんがあったり、
突如プラモデルのお店があったりする。
静岡にはガンダムのプラモデルをつくっているバンダイの工場やタミヤ模型といった、
私でも知っているようなプラモデルメーカーが数多く集まっている。
その起源を聞くと、さきほどお参りした静岡浅間神社や、
のちに家康の墓所となる久能山東照宮の造営のために
家康が日本各地から優秀な職人を集めたことにあったそうだ。
その後、残った職人たちが雛人形や竹細工などの木工細工に携わり、
金型・木型を使った製品からプラスチック模型などの
プラモ産業へと移行していったとか。
ぜんぜん知らなかった……!
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さすが歴史のあるまちである、ちょっとまわっただけでも静岡らしいいろいろな情報が入ってくる。
案内してくれる今井さんは隣で
静岡のお酒は(最近はビールも)いいお酒でね、と
洞爺湖サミットで出された「磯自慢」というお酒の美味しさを語っている。
しかしアレだ、お酒やお茶も美味しいけれど、そろそろサンドイッチづくりも始めたい。
すでに1時間たっているが使えそうな材料がまだ一品も見つかっていないのだ。
心配になった私に「食べ物はここから先にありますよ」と今井さん。
確かにその先はテンポよく食材を見つけることができた。
途中で今井さんのかかりつけ病院も紹介されつつ、後半で一気に食材が揃った。
というのもこちらの商店街、入り口の鳥居から真ん中辺りまでに食べ物屋さんが
集中していたのだ。
サンドには挟めないが、他にも限定5枚までしか売ってくれない
こだわりのどら焼き屋さんやお茶がかかったラスク屋さんなど
名物のお菓子屋さんもいくつか並んでいた。
それはおやつに後でいただくとして、、
さて、いよいよ商店街オリジナルサンドづくりだ!
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この美しいバランスはどうだろう。
手のひらサイズの可愛らしいパンに
みずみずしい葉物とヘルシーなオカラ、
そしていかにも美味しそうなローストビーフが乗っていて
パリジェンヌが飛びつきそうなほどオシャレでヘルシーなものができてしまった。
しかし、それだけでは終わらないのが静岡名産「桜海老」のかき揚げの存在だ。
改めてみると桜海老とたまねぎの重なり具合が
先ほど拝んできた浅間神社の見事な彫刻を想起させ、
それが乗ることで安定した日本の美を感じさせる。
美しいだけでなく、栄養も満点である。
もっちりとしつつも噛みごたえある天然酵母のパンにかぶりつくと
桜海老の風味ががぱあっと鼻に抜けた。
サクサクとした食感も嬉しいそのかき揚げの優しい甘みと、
ゴマやコーンや人参が入ったオカラのマヨネーズの酸味が非常にあう。
さらにワサビとポン酢のたれをつけた
厚さ7㎜ほどの柔らかローストビーフは噛みしめるごとに旨みを引き出し
地元の農園でとれた爽やかでありつつも適度な苦みを演出するリーフミックスが
それらの味を引き締めてくれていた。
静岡出身の今井さんがお茶よりも「ワインが飲みたい」、と言ってしまう気持ちがわかる。
すごいのだ、高級感が。
「一富士・二鷹・三なすび」という、
初夢で見ると縁起がよいとされる言葉がある。
一説には、家康が好きなものを並べたもので
天下を取った家康にあやかろうという意味もあるらしい。
もしタイムスリップができたら家康にぜひこのオリジナルサンドを食べてもらいたい。
茄子にするかサンドにするか、きっと迷うはずだ。
・ボンヌールの天然酵母食パン(大)…453円
・DON幸庵のローストビーフ…907円
・たんぽぽの桜海老かきあげ…120円
・あくつのベビーリーフとオカラ…334円
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合計 1814円
商店街サンド#02 -- Spherical Image -- RICOH THETA
Information
静岡浅間通り商店街
住所:静岡県静岡市葵区馬場町60
http://www.sengendori.com/
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