連載
posted:2025.7.24 from:岐阜県郡上市 genre:食・グルメ
〈 この連載・企画は… 〉
生活必需品からお菓子、地元の名産から日本が誇る技術まで。
日本各地には、地元自慢の様々なプロダクトを生み出すメーカーが存在します。
世界にも知ってほしい、ローカルで愛される企業の秘密を取材。
人気商品や、社員がおすすめするオフィス近くのランチスポットなど。
ローカルで愛されるメーカーに聞いた、“あなたの会社のいろいろ”をランキング形式で紹介します。
writer profile
Asako Inoue
井上麻子
いのうえ・あさこ●編集者/ライター。京都生まれ古書店育ち。2012年よりフリーランスとして、お店から農家まで日本全国の食と酒を取材。学芸大学の書店「COUNTER BOOKS」ではイベント企画を担当。5000円あったらコスメよりもリッチなランチが食べたい。
IG:@achalol
岐阜県民にとってハムといえば「明宝ハム」。1953年の創業当時から変わらない製法や、素材にも徹底的にこだわった名産品です。実はハム以外にも地元ではお馴染みの商品がいろいろとあるんだそう。今回は「明宝ハム」を製造している〈明宝特産物加工株式会社〉の人気商品ランキングと、70年以上愛され続ける商品の魅力を営業部・鷲見拓也さんに教えてもらいました。
【1位:明宝ハム】
もちろんトップは全商品の売上の70%を占めるというこちら。少し値段がリッチなのは、並々ならぬこだわりの証です。原料は一度も冷凍していないフレッシュな国産豚もも肉。塊のお肉から包丁を使って赤身だけを取り出しているので、かみごたえがあり肉肉しい、豚肉のおいしいところが凝縮されています。
岐阜ではお土産や贈答品の定番でもあり、家の冷蔵庫に必ず入っているという“ソウルハム”です。
【2位:ポークソーセージ】
明宝ハムをつくる時に出る新鮮なスジ肉を使ったソーセージ。
香辛料をピリッと効かせたシンプルなポークソーセージ。「明宝ハム」をつくる時に出たスジ肉をミンチ状にして使っているのでお肉の質は抜群です。価格は明宝ハムよりもお手頃。
「ボロニアソーセージというジャンルの中でも太めのサイズです。歯ごたえがあり、ピリッとした味わいなのでビールにぴったり。地元ではお肉の代わりに料理に使う方もいます!」
そのまま食べるのはもちろん、お肉の代わりにポテトサラダや野菜炒めに入れるのもおすすめ!
【3位:フランクフルト】
1本70gのボリューミーなフランクフルトは子どもたちに大人気。地元ではイベントや道の駅などで焼いて売られている定番商品なんだそう。
鷲見さんが個人的に一番好きだというフランクフルトは、プリッとした食感がやみつきに。すじ肉と脂身を合わせてミンチにしているので、肉肉しさとジューシーさも楽しめます。
地元では学校給食に採用されており、イベントや道の駅では定番のスナックとして親しまれていて、ホットドッグに使う飲食店もあるそうです。
〈明宝ハム〉はもともと農協の食肉加工所として1953年に創業。自然豊かな村の恵みを生かし、地元の人々の生活の糧となる一品としてハム製造が始まります。
「一番の目的は村の中で雇用の場をつくること。また戦後の食料不足のなか、タンパク質が豊富で保存性のある食べ物を地元に届けようと考えられたのがハムだったんです」
当時の地名だった明方村から「明方ハム」と名付けられたハムは、1980年にメディアに取り上げられたことで一気に知名度が全国区に。生産が追いつかないほどの人気を得たことで一時は入手困難になり、“幻のハム”と呼ばれたそうです。
「人気を受けて、村の特産品として育てていこうと増産の計画が持ち上がったのですが、隣町に工場を移転する話に村が猛反発。最終的に会社を分けることになり、創業の地に残ったのが弊社です。名前は“明方村の宝を残す”という意味を込めて〈明宝ハム〉になりました。ちなみに『明方ハム』もまだ生産されていて、スーパーでは2つが並んでいることもありますよ」
〈明宝ハム〉のこだわりは、「大手メーカーでは真似できないほどコスパが悪いです」と鷲見さんが笑うほど、ほぼ人の手で作る昔ながらの製法と原料です。使うのは国産豚肉のもも肉のみ。それも冷凍していないフレッシュなものだけに限ります。肝となるのは下処理で、7〜8kgほどある塊のお肉をひとつひとつ熟練の職人が包丁で解体していくのです。量にして1日に2t、お歳暮時期などの繁忙期には3tもの量をさばくそうです。
「明宝ハム」はプレスハムという日本独自の製法で作られており、ぎゅっと詰まった肉肉しい食感が自慢。添加物を極力ひかえ、加水もしていないので、一般的なハムとはまったく違う味わいです。東海エリアを中心に、岐阜県内ではスーパーやお土産店に並ぶ定番商品。〈道の駅 明宝〉では「明宝ハム」を使った料理も楽しめるので、岐阜に来たらぜひ味わってほしいと鷲見さん。
〈道の駅 明宝〉で提供しているメニュー
「いろんな土地のハムを食べてきましたが、『明宝ハム』の右に出るものはいないと自負しています。営業として胸を張って、商品を売ることができるのは幸せです。全国のみなさんに味わっていただきたいですね」
オリジナルキャラクター「ブーボー」「ブービー」「ブーブー」は、それぞれ郡上名物の郡上踊りが大好きだったり、磨墨太鼓の特訓を重ねていたりと、地元・郡上市への愛が詰まっています。また名前にはこんな秘密も。
「郡上弁で男の子を『ぼー』、女の子を『びー』と呼ぶことから、この子たちの名前がつきました。『ブーブー』はおそらく“ばびぶ”の流れ(笑)。郡上市のことを知ってもらうきっかけになればと思っています」
オリジナルキャラクター「ブーボー」「ブービー」「ブーブー」
郡上市明宝にある工場では工場見学を実施。豚肉の解体から出荷前のチェックまで、「明宝ハム」ができるまでの流れをばっちり見学できます。実際に見れば、「明宝ハム」のおいしさの秘密を体感できるはずです。
「明宝ハム」づくりの心臓部。大きな豚もも肉の塊から、細かな筋や脂身を切り取っていく姿はまさに職人技。解体したあとはサイコロ状にカットし、一定の温度で1週間ほど熟成させて旨味を凝縮させます。
お肉を詰める工程も手作業! 3人1組で行います。一番左の人はパッケージにお肉を詰める係。隙間なく均等に入れるのは至難の業です。お肉が入ったパッケージを網目状の型にはめるのが真ん中の人。お肉の量が適量かどうかもここでチェックします。最後に右の人がクリップをつけて封をしてボイルの工程へ。
網目状の型をはめたままボイル。熱を加えることでお肉が膨張しギュッとプレスされるので、あのポコポコした形になっていたんですね。鷲見さんいわく、茹でたての「明宝ハム」は格別のおいしさだそう……なんとかして食べられる日を夢みます。
X線検査で異物混入がないかを確認。重さが適正でないとレールで弾かれるシステムになっています。最後は目視で細かいところまで品質をチェックしてようやく出荷。ほぼ手づくりのため、繁忙期でも1日に6000本ほど作るのが限界だそうです。
小さな村で生まれた手づくりハムが、岐阜県を代表する名産品へ。70年前から変わらない手間暇をかけた製法は、「明宝ハム」だけの個性になっています。岐阜を訪れたらぜひ味わってみてください。
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明宝特産物加工株式会社
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