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十日町「根茂織物」の伝統とデジタルの融合

セコリプレス
vol.001

posted:2014.4.2  from:新潟県十日町市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  生地をつくったり、染めたり、縫製したり。
日本には、地域ごとに、色とりどりの服飾のものづくりが存在しています。
土地の職人とデザイナーをつなげる、セコリ荘が考えるこれからの日本の服づくり。

writer's profile

Shinya Miyaura

宮浦晋哉

ファッションキュレーター。1987年千葉県生まれ。London College of Fashion在学中に書いた論文をきっかけに、日本のものづくりの創出と発展を目指した「Secori Gallery」を始業。産地をまわりながら、職人とデザイナーのマッチング、書籍『Secori Book』の出版、展示会の企画、シンポジウムの企画、商品開発などに携わる。産地のハブを目指したコミュニティスペース兼ショールーム「セコリ荘」を運営。

ニッポンの服飾職人たちに出会う旅へ

日本の各地には、高い服飾技術を持った職人がたくさんいるのですが、
分業体制のなか彼らの技術がなかなか生かされにくいのが
アパレル業界の現状です。
日本の服づくりはもっと面白くなる。
そう感じた僕が始めたのは、各地の服飾職人とデザイナーを結ぶこと。
日本の各産地に点在している
糸紡ぎ、機織り、染色加工などのさまざまな工房や工場を訪れ、
彼らのつくる素材を預かり、デザイナーに紹介する。
これまで、どこを訪れても、感動と発見の連続でした。
今は東京の月島で、築90年になる古民家を借り、
東京と産地を結ぶ場として「セコリ荘」も運営しながら、
平日に産地を訪れています。

セコリ荘は「コミュニティスペース兼ショールーム」です。

実際にものづくりの現場を見てみたいという知り合いのデザイナーや
学生をつながりのある工場にお連れすることもしばしば。
奥田染工場の奥田博伸さん、JUBILEEのデザイナー清水谷泰伸さん、
Masashi KONDOのデザイナー近藤正嗣さん、phro-floのデザイナー吉田留利子さん、
シャツブランドの廣瀬勇士さんは、産地訪問でお馴染みの顔ぶれです。

静岡の遠州産地を訪れたときの集合写真です。

今回の十日町訪問も、プチ産地ツアーとなりました。
参加したのは、デザイナーや服飾の専門学生など。
ちなみに、奥田さんたちとこれまでにも、
丹後ちりめんで有名な京都の丹後産地、高級綿織物で有名な静岡の遠州産地、
多品種素材を生産する山梨の富士吉田産地など、生地の産地を訪れています。

新潟県十日町市は「雪ときもののまち」と言われ、
1年の半分ほど雪が土地を覆うため、
きものづくりの礎となる糸紡ぎや機織りの技術が発達しました。
現在も全国有数のきものの総合産地として
数多くの織物と染織の工場があります。
2月初旬。みんなで車に乗り込み早朝の東京を出発し、豪雪の十日町市へ。
昼食をとった小島屋総本店の駐車場にあった、凍り付いた水車が印象的でした。

この日の外の気温は日中でも零度を下回っています。

そして、根茂織物の工場へ。
十日町に多い織物工場は、後染め用の無地のきもの地を織っています。
創業1938年の根茂織物も、そんな十日町産地を象徴するような
きもの製造の長い歴史を持ちつつ、
2005年にはハイテクインクジェット機を導入して、
和装だけでなく、洋装の染色にも力をいれています。

根茂織物の伝統的な和柄を見せていただきました。

企画の佐藤拓也さんに工場の案内をしていただきました。
佐藤さんはインクジェット機を使用した柄の企画や、
2013年に立ち上げた自社ブランドのデザインも担当しています。
伝統的な型染めをする職人さんと一緒に、
東京で服飾を学んできた佐藤さんのような若い技術者が一緒に働いていることは、
ものづくりの可能性が広がる理想のかたちだと思います。

最初に見せていただいたのは、昔ながらの型染め。
生地を染色室の端から端まで張り、引き染めされます。
長い生地を刷毛で染めていくので、
着物一反分を均一にムラ無く染めるのは職人技です。

昔から変わらない、型染めに使う刷毛です。

こちらは、和柄の型染めをする捺染台。反物にリピートを出すためにこんなに長くなっています!

一方、こちらは、導入されたハイテクインクジェット機です。
蓄積してきたデザインや伝統的な版もデータ化して、
プリントすることができます。

インクジェット機。

この機械では、和柄から洋柄までさまざまな柄が染められています。
ちなみにセコリ荘ののれんもこの機械で染めていただきました。
データを渡してから届くまで期間は、1週間ほどだったので驚きの早さです。
使用している反応染料は綿・麻・シルク・ウールなど
天然繊維に主に使用されていて、色落ちが少なく、彩度が高いのが特徴です。

インクジェットと聞くとプリンターを想像して
容易に柄が出力されるイメージがあるかもしれませんが、
生地を染めているので、前処理、データ設定、洗いまで、
さまざまな工程を経て仕上がります。
それも繊維から染色まで熟知しているからこそ、
このクオリティが出せるのです。
長年培ってきた染色加工の技術とノウハウが、
インクジェット機での染色においても発揮されています。

この日一緒に工場を訪問した文化服装学院の今福華凜さんは
卒業後、つくり手としての道を考えているようです。
彼女からはこんな感想が出てきました。
「産地の工場に伺ってみて、身のまわりにある服の背景を見る意識が
より鮮明になりました。今後は、産地の方を含め、
関わった人が見えてくるようなものづくりをしていきたいです」

引き初めをする染色室では、手元を照らす為に蛍光灯が低いのが特徴。「刷毛を色ごとに分けて使用する」など、佐藤さんは丁寧に説明をしてくれました。

最近、世の中に温度や匂いを感じないモノが多いなと思います。
やはりものづくりの魅力は現場にあります。
現場とは「工場」だけを指すのではなく各「地域」を訪れると、
地域ごとに染み付いた香りをしみじみと体感できます。
そして地域ごとに、さまざまな分野に特化した職人さんがいて、
色とりどりのものづくりが存在します。

職人さんが糸を織り、染めて、加工をして洋服となる生地をつくります。
昔から変わらないこの光景と、
現場に流れるものづくりの魅力を少しでも多くの方に伝えていけるように、
産地訪問を続けていければなと思います。

次は、毛織物の産地として有名な愛知県一宮市の工場訪問を予定しています。

information

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セコリ荘

住所 東京都中央区月島4-5-14 電話 080-5378-0847
http://secorisou.blogspot.jp/

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