連載
posted:2012.2.5 from:岡山県和気郡和気町 genre:ものづくり
〈 この連載・企画は… 〉
伝統の技術と美しいデザインによる日本のものづくり。
若手プロダクト作家や地域の産業を支える作り手たちの現場とフィロソフィー。
editor's profile
Toshiya Muraoka
村岡俊也
むらおか・としや●神奈川県鎌倉市生まれ、茅ヶ崎市在住。カルチャー誌を中心に、旅、本、写真などをテーマに活動中。
credit
撮影:平野太呂
細川敬弘さんがなぜ人気があるのか、作品を見ればすぐにわかる。
「渋い」と形容されることの多い備前焼を、
やさしい色で焼き、使いやすいかたちにひしゃげる。
今までの備前とは違うことが、器からひしひしと伝わってくる。
備前焼作家であった祖父に弟子入りし、
「10年は一緒に仕事をして、教えてもらえる」と思っていたが、
祖父は1年ほどで体を壊して窯を去ってしまう。
細川さんは、他の作家の窯焚きを手伝いながらつくり方を覚えていく。
でも、どの作家も「同じことを言わない」。
となれば、自分なりに磨くしかない。
「同世代の友達に見せると、“なにこれ”ってズバズバ言われます(笑)。
備前焼を知らない友達のほうが直感的に言ってくれる。
そこから使いやすいものって意識が生まれていったのかも」
花器をつくるために、華道を習い、食器を焼くために、料理店に取材に行く。
徹底して、「用の美」にこだわることが、細川さんの個性であり、強みなのだ。
「まず眼に留めてもらわなきゃいけない。
だから色にはすごくこだわります。
手に取ってもらえたときのために、質感も大切にしなければいけない。
買ってもらうって、すごいことだから」
窯焚きを終え、冷まして取り出すまでの数日間。
自分の仕事が試される瞬間を前に、細川さんは情緒不安定になってしまう。
ようやく窯を開けてもすぐ、「次の窯焚きではこうしよう」と考えてしまうから、
作陶をやめることはできないと、細川さんは笑う。
エンドレスな試行錯誤。
その覚悟が、細川さんの備前焼にかける思いなのだ。
2つのカップを重ねて焼いた異色の作品。自由な発想も細川さんならでは。お店に訪れて気に入ったものをオーダーすることも可能。
profile
TAKAHIRO HOSOKAWA
細川敬弘
備前陶芸センター卒業後、祖父・竹村永楽の元で、作陶活動を始める。岡山県内だけでなく、日本全国で個展を開催。購入は、細川さんの工房である「陶 細川」(住所:岡山県和気郡和気町父井原69)まで。
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