細川敬弘さん
伝統ある備前焼を次世代へとつなげる若手作家の想い。
細川敬弘さんがなぜ人気があるのか、作品を見ればすぐにわかる。
「渋い」と形容されることの多い備前焼を、
やさしい色で焼き、使いやすいかたちにひしゃげる。
今までの備前とは違うことが、器からひしひしと伝わってくる。
備前焼作家であった祖父に弟子入りし、
「10年は一緒に仕事をして、教えてもらえる」と思っていたが、
祖父は1年ほどで体を壊して窯を去ってしまう。
細川さんは、他の作家の窯焚きを手伝いながらつくり方を覚えていく。
でも、どの作家も「同じことを言わない」。
となれば、自分なりに磨くしかない。
「同世代の友達に見せると、“なにこれ”ってズバズバ言われます(笑)。
備前焼を知らない友達のほうが直感的に言ってくれる。
そこから使いやすいものって意識が生まれていったのかも」
花器をつくるために、華道を習い、食器を焼くために、料理店に取材に行く。
徹底して、「用の美」にこだわることが、細川さんの個性であり、強みなのだ。
「まず眼に留めてもらわなきゃいけない。
だから色にはすごくこだわります。
手に取ってもらえたときのために、質感も大切にしなければいけない。
買ってもらうって、すごいことだから」
窯焚きを終え、冷まして取り出すまでの数日間。
自分の仕事が試される瞬間を前に、細川さんは情緒不安定になってしまう。
ようやく窯を開けてもすぐ、「次の窯焚きではこうしよう」と考えてしまうから、
作陶をやめることはできないと、細川さんは笑う。
エンドレスな試行錯誤。
その覚悟が、細川さんの備前焼にかける思いなのだ。

2つのカップを重ねて焼いた異色の作品。自由な発想も細川さんならでは。お店に訪れて気に入ったものをオーダーすることも可能。