odekake
posted:2017.1.27 from:北海道釧路市 genre:旅行
PR 北海道体験観光推進協議会
〈 おでかけコロカルとは… 〉
一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。
writer profile
Chie Takekawa
竹川智恵
ライター。北海道釧路市生まれ、知床斜里町在住。世界遺産の自然や野生動物だけではない、知床斜里の文化や歴史、人々の営みを伝えるリトルマガジン『シリエトクノート』編集部の一員。おいしい!きれい!おもしろい!など、シンプルな感動が執筆の原動力。
シリエトクノート
http://siretoknote.main.jp
credit
supported by 北海道体験観光推進協議会
「冬の北海道でカヌーを楽しもう!」なんていうと、
「冬にできるの!?」「寒くないの!?」と驚く人が多いかもしれませんが、
カヌーのメッカ、道東の釧路湿原を流れる釧路川では、
冬のカヌーは近年人気のアクティビティです。
極寒の冬の朝こそ美しい〈釧路マーシュ&リバー〉の
カヌー&湿原ウォッチングツアーに参加し、白く輝く冬の絶景に出合いました。
氷点下20度近くまでしばれた(北海道弁で「冷え込んだ」の意味)2017年1月中旬の朝8時。
天気は快晴、風はなし。あまりの冷気に頬が少しぴりぴりしますが、絶好のカヌー日和です。
ツアーの始まりはドライスーツの着用から。
ガイドさんの手を借り、首、足首、手首がキュッとすぼまった防水性、
保温性に優れたスーツに身を包むと、「カヌーに乗るぞ!」という気分が盛り上がってきます。
ドライスーツの上から自分のアウターを着ることができるので、防寒もばっちり。
着心地も悪くありません。ただ体にぴたっとしたアウターより、
少し余裕のある大きさのものを着たほうが動きやすいかもしれません。
釧路川は屈斜路湖を源流とし、太平洋に注ぎ込む全長154キロの一級河川。
緩やかな傾斜、穏やかな流れが特徴で、
日本最大の湿原〈釧路湿原〉の豊かな自然を楽しみながら、カヌーで川下りができる場所です。
ちなみに冬の釧路川は冷え込みが厳しくなると河口に氷が溜まっていきますが、
完全結氷することはほとんどありません。そのため塘路湖(とうろこ)周辺の中流域では、
冬のカヌー体験が可能なのです。ただ今回は強い冷え込みが続き、
通常の釧路川本流コースに氷が増えて危険なため、
支流のアレキナイ川をゆったり往復することになりました。
ツアー発着地点は、事務所から車で約20分走ったところにある塘路湖そばのカヌーポート。
ライフジャケット着用後、釧路マーシュ&リバー代表でガイドの斉藤松雄さんが、
(今まで落ちた人はひとりもいないということですが、)
万が一、川に落ちたときにとる姿勢など注意点を教えてくれます。
その後、赤いカナディアンカヌーに乗り込み、いざ川へ!
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音もなくスーッとカヌーが川に滑り出すと、
目の前には水面からもくもく立ち上る不思議な霧=けあらしが広がります。
けあらしとは、水温より気温が低い場合、
水面から蒸発した水蒸気が大気中で急激に冷やされて起こるもの。
周囲の木々には白く輝く霧氷、川べりの氷の上にはフロストフラワー(霜の花)も現れ、
一気に別世界に飛び込んだようです。
これらも空気中の水蒸気が樹木や氷の表面にくっつき、
凍りついたもの。気温が氷点下になる冬の朝だけの光景です。
「今日は今シーズン一番の景色かもしれませんね」。
ガイドを務めてくれた松澤秀太さんも太鼓判を押します。
「雪と違って、霧氷の結晶は四角形が多いんですよ。
だから雪の上に落ちても目立ってキラキラするんです」
気さくな雰囲気で松澤さんが、いろいろな解説をしてくれます。
カヌーが倒木の近くを通ると、枝まで手を伸ばして霧氷を触ることも。
ふわっと空中を舞い、太陽の光に照らされ、
ハラハラと川に落ちる霧氷の姿はとても幻想的でした。
釧路マーシュ&リバーが冬のカヌーツアーを始めたのは10年ほど前から。
ドライスーツを着てオホーツク海の流氷の上を歩く
アクティビティ「流氷ウォーク」の存在を知った斉藤さんが
「安全確保さえすれば、カヌーだって冬もできる」と思い立ちスタートしました。
しかしドライスーツを揃えたものの、冬にカヌーのイメージはないためか、
最初のシーズンの参加者はほんの数組。
それでも斉藤さんは「冬だけの非日常の景色を見てほしい!」と
夏のお客さんに冬の良さを伝えてリピーターを増やし、5年ほど前から定着してきました。
「キュッ、キュッ」。静寂の自然の中、不思議な鳴き声が聞こえます。
「あの木の上のオジロワシが鳴いていますね」と、すかさず松澤さんが教えてくれて、
立派な風格のオジロワシが発する甲高い鳴き声に驚きます。
ほかにも水鳥のマガモやヤマセミが目の前を飛んだり、
「コンコン、コンコン」とアカゲラが木をつつく音が聞こえたり、
多くの野鳥が暮らす自然の豊かさを肌で感じました。
折り返し地点を過ぎ、塘路湖カヌーポートに戻る途中、
「ガサ、ガサッ」と草の音がしたと思ったら、
エゾシカが川岸からこちらをじーっと見つめていました。
釧路湿原で越冬するエゾシカにとって冬はエサが少ない厳しい季節。
樹皮も食べてしまうため、黄色い木肌がむき出しになった樹木が多く見られました。
鉄橋や道路の橋げたの下をくぐり、最後は釧路湿原最大の湖・塘路湖の入り口へ。
アイヌ語の「トー(湖)・オロ(の所)」が語源の塘路湖。
縄文時代から人々が暮らし、アイヌ民族のコタン(村)もあった場所です。
諸説ありますが、アレキナイ川の語源もアイヌ語で「アルキ(来る)・ナイ(川)」。
アイヌの人たちも丸木舟を使い、川や湖の移動や漁をしていたそうで、
こんな景色を見ていたのだろうかと思いを巡らせます。
約2キロ、1時間30分ほどのカヌーツアーの締めは、
温かいコーヒーサービスです。カヌーから降りてほっとひと息、冷えた体が温まります。
はっとするような景色や野生動物との出合いがあり、
カヌー上ではすっかり寒さを忘れていたことにびっくりしました。
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カヌーの次は湿原ウォッチングです。カヌーポートから車で数分移動し、
二本松の丘という展望地の近くへ。展望地は小高い丘の上にあるため、
ガイドの斉藤さんと一緒にスノーシューを装着して登り降りする約1時間の散策です。
「この穴に手を入れてみて。けっこう深いでしょう」
散策の途中、枝が落ちて幹にぽっかりあいた穴を、斉藤さんが指差します。
手を入れると確かに見た目より深く、木くずがふかふかしています。
「これは地面に近すぎるけれど、こんな穴をエゾフクロウやエゾモモンガが利用するんですよ」
ほかにもユキウサギの足跡やエゾシカの寝床など、雪上には動物たちの痕跡がいっぱい。
解説してもらうことで、動物たちが行き交う風景の想像が膨らみます。
少し急な坂を登り、少々息が上がったところで展望地に到着。
目の前には釧路湿原を見渡す壮大な眺めがありました。
蛇行する釧路川、冬枯れの木々、ボコボコと不思議な形状をした
湿原特有の草の塊・ヤチボウズ、遠くには釧路市街にある製紙工場のシルエットも見えました。
二本松とは、近くに大きなエゾマツが2本あることから名づけられた場所です。
斉藤さんは「ここは義経伝説があるところ。
北海道に逃げた源義経が休憩して弁当を食べ、
箸を差したのが2本のエゾマツになって成長したと言われています」
あくまで伝説ですが、確かにお弁当を広げてひと休みしたくなるのもわかる見晴らしのよさ。
美しい銀世界を前に、爽快感で満たされ、
「よし、明日からも頑張ろう!」なんて不思議と前向きな気持ちになります。
言葉で説明するのは難しいですが、自然の持つ大きな力に癒された気分でした。
釧路マーシュ&リバーの冬のツアーは1月初旬から3月まで。
釧路市内のホテルへの送迎もあるので、
冬道運転に自信がない観光客でも安心して参加できます。
釧路川や釧路湿原には冬だからこそ出合える景色があり、
野生動物たちの営みを垣間みることができます。
ガイドさんの豊富な知識に耳を傾けながら、
寒さ忘れる貴重な体験をしてみてはいかがでしょうか。
information
釧路マーシュ&リバー
住所:北海道釧路郡釧路町河畔4−79
TEL:0154−23−7116
釧路湿原ウインターカヌー&湿原ウォッチング
2名以上でお申し込みの場合大人1名10000円
(1名参加の場合は13000円、傷害保険別途500円)
※所要時間約4時間
information
北海道には、カヌーはもちろんラフティングやトレッキングなどのアウトドアから、食や工芸などの体験を楽しめるコンテンツがたくさん。詳しくはこちらから→
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