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写真家・在本彌生の旅の記録 
おいしいものと、人のご縁。
懐の深い、北海道とは。|Page 2

おでかけコロカル|北海道・道北編

Page 2

海道はとにかく広い。道東をめぐったときもそんなことを言ったと記憶しているが、今回の道北をめぐる日々も、移動に移動を重ねた。

北海道のなかで移動していると、大地のスケールの大きさに、
自分がいつもより小さくなって、歩いても歩いても
端まで辿り着けないような、そんな気になる。
その感覚はもどかしいようで、実のところ少し心地いいのだ。

自分ではどうにもコントロールできない自然、
とてつもなく大きなものに身をゆだねるしかない。
そう感じるから、あっけらかんとした、大らかな心持ちになる。
何を見てもおもしろく、よくぞここで私と出合わせてもらえたものだと
いま目の前にあるもにの感謝してしまう。

役所を定年退職して、楽しいオブジェの王国をつくってしまったご主人、
愛嬌のある素敵な奥さまはアスパラをつくっていた。
黙々とチェーンソーを操るご主人は真剣な表情で、
話しかけるのもはばかられるようだった。
それでもひとたびご挨拶すると、温かく迎えてくださって、
とても丁寧に作品の説明をしてくれた。

北海道で見る日本海は、その先にある違う世界をにおわせている。
冷たく強い風にブルッと震えながら、
長い長い海岸線に夕日が沈むのをしばらく眺めた。
強くて、止まることがない存在がそこにある。
こうしていつも五感で何事も捉え、日々を過ごせたら素晴らしい。

北海道の真ん中、旭川でも素敵な人たち、おいしいものとの出合いがあった。
気さくなご主人と愛らしい奥さまのふたりがつくる
〈みづの〉のしょうがラーメン。
このまちに住む友人が週に一度は来るというこの店の馴染みの味を、
さらさらとすすった。
素直なおいしさに、身体がすっかり温まり、はい、もう一軒。
〈ぎんねこ〉では、焼き鳥と、めずらしい“鳩燗”をいただいた。

どうしても気になって立ち寄った〈川村カ子トアイヌ記念館〉で、
私の好きな女性ボーカルグループ、マレウレウの歌声が聞こえてきた。
喜んでいたら、声をかけてくれた副館長さん。
あら、メンバーの久恵さんではないですか!
このまちではこんなふうに人のご縁がつながっていくから素敵だ。