和紙の魅力の虜になる。
「いい紙をつくると、楽しい生活ができる。
いい紙をつくるのに、この場所は合っているね」
と流暢な日本語で語るのは、和紙作家ロギール・アウテンボーガルトさん。
高知市から車で約2時間。
ロギールさんとその妻の千賀子さんが営む「梼原和紙&紙漉体験民宿 かみこや」は、
和紙作家であるロギールさんの工房でもあり、
この地へ赴いたお客さんをおもてなしする場所であり、
和紙の魅力を伝えていくための場所でもあります。
ロギールさんは生粋のオランダ人。
グラフィックの学校を卒業して初めて就いた製本の仕事場で、和紙と出会いました。
「和紙に惹かれた理由は、その素材感の強さだね」
コウゾやミツマタ、桑、雁皮といった山で栽培される原料から漉き上げる和紙は、
原料の種類や加工の度合いでその表情をさまざまに変えていきます。
原料の繊維が紙を織りなす様がはっきりと見える「Washi」は、
ロギールさんの心を一瞬でわしづかみにしてしまったのです。

和紙との初めての出会いから1年も経たないうちに、
ロギールさんは日本へやってきます。
各地の和紙の産地を巡った後、
家を構えたのは土佐和紙の一大産地である高知県伊野町(現在はいの町)。
高知を選んだのは、コウゾやミツマタなど和紙原料の最大の産地だからだそう。
和紙の持つ、原料とその素材感に惹かれたロギールさんにとって、
高知以外の選択肢はなかったのかもしれません。
以来30年。
しっかりと日本に根を張ったロギールさんは、
原料の表情がはっきりと見える紙を漉き続けています。
コウゾやミツマタのほか、桑やベンガラ、赤土、木炭、杉皮。
さまざまな素材を使いながら、試行錯誤を繰り返して一枚一枚、丁寧に漉き上げます。
山から採取した葉っぱや花も、紙に漉き込まれる大事な素材。
水もわき水しか使わないというこだわりようです。
荒々しさと繊細さ、それが同居しているのがロギールさんの和紙の魅力なのです。

「もともと日本は家の中でたくさんの紙を使う文化でした。
襖や障子、壁紙……ヨーロッパにはそういった文化はありません」
ロギールさんの紙は、ランプや壁紙などインテリア要素の強い紙が多いのも特徴です。
「かみこや」の客室の壁紙は、ロギールさんの和紙。
訪れたこの日も、土佐紬という、今はもうなくなってしまった織物と
和紙原料を混ぜて漉いた、淡いピンク色の紙を壁に貼り込む準備をされていました。

「かみこや」では、雪で閉ざされることの多い12月から2月を除き、
いつでも宿泊を受け付けています。
ロギールさんやスタッフの方の手ほどきを受けながら、
簡単な紙漉き体験から長期滞在まで、
さまざまなかたちで和紙づくりのプロセスに触れることができます。
日本人がもっと誇るべき、そして知るべき和紙の文化。
そのことをゆっくりと感じに訪れてはいかがでしょうか。
