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posted:2016.6.17 from:全国 genre:食・グルメ
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writer profile
Yu Miyakoshi
宮越裕生
みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。
いま、全国のダムのあるまちで、
ダムに見立てたカレーライス〈ダムカレー〉が次々とつくられているそうです。
このカレー、見た目が楽しいだけではなく、まちを盛り上げようという
地元の方の思いやダムへの思いがあふれる、とっても熱いご当地メニューなんです。
上の写真は、愛知県北設楽郡豊根村でつくられている〈新豊根ダムカレー〉。
カレーの監修者は、ダムマニアとして知られ、
〈日本ダムカレー協会〉のサイトの管理人でもある宮島咲さん。
「豊根村には佐久間ダムと、その水を汲み上げ発電をする新豊根ダムがあります。
この2つのダムは、日本のインフラに無くてはならないダムでしょう。
豊根村はひっそりとした静かな村ですが、
じつは電力供給という非常に大きな役割を果たしているんです」と、宮島さん。
こうしたダムのうんちくにふれられるのも、ダムカレーの醍醐味!
宮島さんいわく、国内のダムカレーの数は2016年5月現在で
72種類以上を超え、ますます増加しているのだとか。
ダムカレーの起源をたどると、実在するダムの名を冠したカレーや
ルーを貯水池に見立てたカレーは以前からあったようですが、
最近増えているダムの機能を忠実に再現したカレーの源泉は、
墨田区にある宮島さんのお店〈三州家〉にありました。
〈三州家〉は、和食を中心としたレストラン。
ダムカレーはもともと、このお店のまかないとして誕生し、
当初はダム愛好家に向け、ひっそりと提供されていました。
ところがそのカレーが新聞に取り上げられると
問い合わせが多く寄せられたため、裏メニューとして提供することに。
それからテレビや新聞で取り上げられるようになり、
2009年頃から全国でつくられるようになったそうです。
現在三州家では、ごはんでルーをせき止めるタイプの
ダムカレーを4種提供しています。(要予約)
「せき止めなくちゃダムじゃない!」とは、宮島さんの弁。
ダムカレーにはどんな種類があるのでしょうか?
宮島さんが監修した群馬県利根郡みなかみ町の〈みなかみダムカレー〉を見ながら、
ごはんの造形美を楽しめるダムカレーをご紹介していきましょう。
アーチ型の堤体がうつくしいのは、
矢木沢ダムをモチーフにしたアーチ式の〈矢木沢ダムカレー〉。
宮島さんの解説によると、矢木沢ダムは
「利根川最上流に位置する巨大な湖を持ったダム。
関東平野の水瓶で、このダムの水位が下がると関東地方は
危機的な状態におちいる。アーチのラインがとても美しいので、
ぜひとも見学してもらいたいダムである」とのこと。
こちらはナッツで堤体の石を表現したロックフィル式の〈奈良俣ダムカレー〉。
「これがダムかと思えるビックリデザイン。
ロックフィルという型式で岩をピラミッド状に積み上げてつくられたダムである。
使用している石が非常に白く、この世のものとは思えない神々しい光を放っている。
みなかみ町で一番おすすめなダムである。
資料館やレストランもあるので、家族連れ、デートにも最適」(宮島さん)
こちらは正当派デザインのダム「藤原ダム」をモチーフにした重力式の〈藤原ダムカレー〉。
「雨が降るとよく放流するダムなので、運が良ければ
クレスト部からの放流を眺める事ができる。
また、下流に水を流すためのホロージェットバルブを備え、
虹が出るほど豪快に放流している」(宮島さん)
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利根川源流のまち、みなかみには大きなダムが5つもあることから、
水上温泉旅館協同組合青年部より「ダムをまちの活性化に役立てたい」という声があがり、
宮島さんに協力を依頼し〈みなかみダムカレー〉をつくるようになったのだそう。
同組合の阿部理香さんに話をうかがうと、
ごはんの形にはかなりこだわったのだとか。
「宮島氏の協力のもと、皿は東京合羽橋で探しまわり、
ごはんの型は金物で有名な新潟・燕三条の職人さんと制作しました。
提供店には、早く正確にダムを再現できるよう、
盛りつけ方のルールをつくり、型と皿も統一をはかっています。
ただしカレーの部分は、水質(味)はもちろん、
湖面に浮かべる流木をまいたけで表現したり、
立木をブロッコリー、カヌーをポテトフライで表現するなど、自由です。
それぞれのお店が工夫し、楽しみながらオリジナルの
ダムカレーを提供しています」(阿部さん)
ごはんの型をつくる際には、燕三条市まで皿と粘土の型を持って出掛け、
職人さんと相談してつくったのだとか。
ところが下請け工場がなかなか見つからず、
職人さんが5、6件ほどの工場をまわり、ようやく見つかったのだとか。
「決して利益の多い仕事ではなかったのに、私たちの心意気を買って下さったのでは」
と阿部さんは語ります。
ダムカレーは、各お店のカラーやおもてなしも、楽しみのひとつ。
太宰治ゆかりの宿として知られる水上温泉の〈旅館たにがわ〉には、
江戸時代からこんこんと湧き続ける温泉と
ダムカレーを楽しめる宿泊プランがあります。
日帰り入浴や、ダムカレーの食事のみの利用もOKだそう。(ダムカレーは要予約)
食事とセットでゆっくり楽しみたい!
ダムマニアとして知られる宮島さんですが、
かつての情景を思う気持ちも忘れません。ダムマニアの公式サイトには、
「ダムにより水没した自然や生き物は、二度と戻って来ないんだよ。
あんなに楽しかった峠道も、今じゃ立派なつけ替え道路になってしまったんだね。
その頃の曲がりくねった細道が懐かしい…」
という言葉が添えられています。
今や宮島さんのダムカレーへの情熱を支えているのは
「ダムカレーを通じ、ダムを抱えるまちに少しでも多く人が訪れますように!」という思い。
ダムのことを知ると、そのまちのことまで見えてくる。とても深いご当地メニューですね。
いま全国では、ここでご紹介したほかにも、
ユニークなダムカレーがどんどん生まれています。
information
日本ダムカレー協会
Web:日本ダムカレー協会
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