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〈大野へかえろう
卒業式プロジェクト〉
これから旅立つ高校生たちへ
父母からサプライズ

コロカルニュース

posted:2016.3.24  from:福井県大野市  genre:活性化と創生

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。

美しい山々と水田にかこまれた、福井県立大野高等学校。
2016年3月3日、同校の卒業式から179人の生徒さんたちが巣立っていきました。

いつもなら、つつがなく式が終わるころ。
“いつかはふるさとへ帰ってきてほしい” そんな保護者のみなさんの思いが
『大野へかえろう』という歌になり、高校生たちに贈られました。

『大野へかえろう』
作詞:日下慶太 作曲:松司馬拓

山が世界を切り離し

世界はこの町だけのよう

自然にあわせて時は過ぎ

人はゆっくり生きている

夕日が田んぼを照らしてる

里芋の葉が揺れている

小さな町の子どもたち

夢を求めて旅立つよ

大野へかえろう

言い出せないから歌にする

大野へかえろう

広い世界に出るといい

いつでも大野は待っているから

『大野へかえろう』より一部抜粋

この卒業式プロジェクトは、
大野市の地方創生プロジェクトとして行われたもの。
コロカルでも以前大野市を訪ねました。
※記事はこちら

準備は生徒さんたちに内緒で行われ、
ほとんどの保護者の方が家や車の中などで
CDを聞きながら練習していたのだそうです。
当日はリハーサルをするわけにもいかず、ぶっつけ本番状態でした。

プロジェクトの企画者は、コピーライターの日下慶太さん。
『大野へかえろう』の作詞も手がけました。

事前に行われた合同練習の様子。一部の保護者30人が集まり、作曲家の松司馬拓さんが指導しました。

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“戻って来い” と言えなかった

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日下さんは昨年から大野市の地方創生プロジェクトに関わりはじめ、
昨年の夏には大野市在住の高校生たちが
大野のお店のポスターをつくる〈大野ポスター展〉を開催しました。

大野ポスター展

「大野高校の卒業生の約6割が、卒業後は市外に出ていきます。
大野市内には大学がなく、大人たちは若い人に
“出て行かないでくれ” とは言えない状況。
そして若い人たちの周りには、自分の親や親戚しかロールモデルがいない。
そこで僕は、もっと高校生たちに “大野にはこんなにおもしろい大人がいる” ということを
知ってもらうことが大事だと思い、ポスター展を企画しました」(日下)

大野ポスター展 グランプリ受賞作品

日下さんはその後、大野で活躍している大人を学校に招く講演も企画。
続いて実施したのが、卒業式プロジェクトでした。

「とにかく残るものをつくらなきゃ、と思っていました。
動画がバズって終わり、というやり方はどうもしっくりこなくて。
それで歌ならずっと歌い続けてもらえると思い、今回の企画を考えたんです。
それから歌詞を書くために、とにかく親御さんの話を聞きました。
その話から浮かび上がってきたのが、親御さんが子どもたちに
“戻って来い” と言えないという問題でした。
なかなか言えなくて、子どもが就職する間際にやっと
言うんだけど、子どもたちにしれみれば、
今さら言われても遅いし……となってしまうんですよね」(日下)

たしかに、身近な人だからこそ言えないこと、
わからないことがあります。
大事すぎて言えないこともあります。
そんな思いを汲んで生まれたのが「言い出せないから歌にする」という一節でした。
日下さんは保護者の方たちの言葉を集め、
それを組み立てていくように歌詞をつくっていったそうです。

4月から新しい世界に旅立つ同校の卒業生たち。
心のどこかに「いつかは大野に」という気持ちが
芽生えた方もいたのではないでしょうか。

卒業式の後、大野市役所では希望者を対象に
『大野へかえろう』を収録したCDの配布を始めました。

すると、大野高校に通う1年生の孫がいるお祖父さんが
「2年後に向けて練習したい」とCDを受け取りにきたのだそうです。
また、同校では在校生の吹奏楽部の子たちが
来年の卒業式で演奏したいと盛り上がっていたり、
PTAから来年の式で歌いたいという声があがっていたりと、
まだまだ反響が広がっているようです。

ふつうにしていたらちょっと言えないことが
こんな風にサプライズを起こすことで
みんなに伝わるなんて、すごいですね。
このプロジェクトの模様を収録したビデオにはフルバージョンもあります。
そちらには、歌の全編が収録されています。
ぜひチェックしてみてください!

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