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佐渡おけさ、木曾節、黒田節。唄と踊りとお酒で紡いだ日本全国民謡紀行。石田千「唄めぐり」

コロカルニュース

posted:2015.5.17   from:全国  genre:暮らしと移住

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。

例えば、夏祭り。
たくさん並んだ屋台の、色とりどりの華やかさと、にぎやかに飛び交う声。
花火、浴衣、やぐらを囲んで踊る町の人々、はじけそうな笑顔を見せる子どもたち。
日が暮れてセミの鳴き声もすっかり止んで、代わりに響いてくるのは、祭囃子。
あのメロディと楽器の音を聞くと、ふと年齢も忘れて、
昔見た風景や思い出さえよみがえってくる――そんな経験はありませんか?

民謡は、耳にした人たちに特別な時間を与え、
その場所で過ごした人たちとつながりを感じられるような、
そんなはたらきがあるのかもしれません。
石田千さんの書籍「唄めぐり」は、北海道から沖縄まで、
日本全国各地で歌い継がれている25の民謡を紹介したエッセイ。
民謡だけでなく、地方の文化や人々とのふれあいもつづられています。

地方を行く石田さんの歩みはとても丁寧です。
歌い手さんとの会話やその場所の風景から歴史を感じ、
踊りや機織りのような伝統工芸の体験をとおして人々の思いを知り、
郷土のお料理とお酒に舌鼓を打ちながら、
時にユーモラスに、でもとても誠実に書き取っていく文章は、
読む早さも知らず知らず、確かめるようにゆっくりになっていくでしょう。

本書にはこのようにあります。
「声は空にのびて、たくさん語りあうよりも、
手をつないで伝える情けのほうが、はるかに多かったころの時間と景色を見せる」
「言葉ではなく、時の流れをきいているのだった」

Page 2

かつて厳しい労働の最中に唄われた作業歌や、
たくましく生きた女性の人生を歌った歌、土地を抱く山や海を歌った民謡の数々。
それらは船に乗り、また鉄道に乗って、時代と人々の間を行き来しながら、
少しずつ姿を変え、わたしたちの目の前にあり、やがて未来にも託されていくのでしょう。
本書にはさまざまな地域の、歌をめぐる想いがつづられ、
最後には、いまこの時代にあたらしく生まれた民謡が紹介されていきます。

雑誌「芸術新潮」の連載をまとめたこの本。
民謡を通じて地方の歴史と文化を知ることができる、
すてきな旅のエッセイです。

書籍「唄めぐり」
著:石田千
定価:本体2,300円+税
判型:四六判
頁数:406頁

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