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湯治文化を未来へ。千年の温泉街・
俵山に「まちごと旅館」が誕生

コロカルニュース

posted:2025.11.26   from:山口県長門市  genre:暮らしと移住 / 旅行

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Rina Akamatsu

赤松里菜

千年続く温泉地に新たな息吹を

山口県長門市にある湯治場〈俵山温泉〉は、古くから「西の横綱」と称される名湯として知られてきた。その地で2025年10月10日、まち全体を一つの宿に見立てた新しい宿泊モデル「俵山まちごと旅館」が誕生した。

運営を担う株式会社俵山クリエイトは、旧町湯「川の湯」を受付棟として機能を集約し、宿泊者がまちを歩きながら湯に浸かり、地域と交わる“まちごと滞在”を提案。このプロジェクトは、地域・行政・民間企業・金融機関が連携し、温泉街の再生を進める官民協働の取り組み。地域法人と事業会社が役割を分担する二層構造によって、短期的な観光振興にとどまらない長期的な地域再生を見据えている。

湯治の暮らしを現代の旅へ

千年以上の歴史を持つ俵山温泉には、いまも2つの共同浴場「町の湯」と「白猿の湯」が残り、昔ながらの外湯文化が息づいている。宿泊者には滞在中(チェックイン〜翌日15時まで)に何度でも利用できる「入浴手形」が渡され、まち歩きと湯めぐりを通して土地の空気に自然と溶け込むことができる。単なる宿泊ではなく、まちの暮らしそのものを体験する仕組みは、観光と地域の日常のあいだに新たな接点を生み出している。

湯治を終えた人々が置いていったという松葉づえ。その数が、このまちで多くの人が元気を取り戻してきた証として、静かに語りかける。

湯治を終えた人々が置いていったという松葉づえ。その数が、このまちで多くの人が元気を取り戻してきた証として、静かに語りかける。

湯治宿の趣を残しながら、新たな受け入れ体制へ

宿泊対象施設は「保養旅館 京家」(8室)と「泉屋旅館」(1室)。いずれも伝統的な湯治宿の趣を残しつつ、マットレスの導入など快適性を高めるリニューアルを実施した。老舗旅館を残しながら宿泊受け入れ機能を横串で束ねるこのモデルは、個々の施設の負担を減らし、まち全体のブランド力を高める仕組みでもある。湯治文化を次の世代へと受け継ぎながら、観光と暮らしの新しい共生モデルを提示している。

information

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住所:山口県長門市俵山5153番地

アクセス:JR「長門湯本駅」からバスで約30分、「俵山温泉」下車

予約サイト:https://www.chillnn.com/198a114032dfc

Instagram:@tawarayama_machigoto_ryokan

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