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posted:2024.5.12 from:愛知県小牧市 genre:活性化と創生
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writer profile
Naomi Kuroda
黒田 直美
くろだ・なおみ●愛知県生まれ。東京で長年、編集ライターの仕事をしていたが、親の介護を機に愛知県へUターン。現在は東海圏を中心とした伝統工芸や食文化など、地方ならではの取り組みを取材している。食べること、つくることが好きで、現在は陶芸にもはまっている。
サステナブルな社会にとって、フードロスは重要なテーマです。
各自治体でも食材廃棄は、大きな課題となっています。
そんななか、愛知県小牧市が、地域資源を活用した産官学福連携の
トライアル事業として、〈フードロス開発プロジェクト〉を立ちあげました。
地元でワイン醸造を手がける〈小牧ワイナリー〉から廃棄される
ワインパミス(ブドウの搾りかす)に注目。
地元のパン店、近隣の大学の学生を巻き込んで、地元特産のパンづくりをスタートしています。
「ワイン醸造の過程で、ブドウをしぼる際に発生する果皮や種を含んだ
ワインパミスは、年間で約1トン出ています。
一部は、畑に撒くなど肥料にしていますが、それ以外はすべて廃棄していました。
これを地域資源として捉え、地域経済の循環に活用できないかと、
小牧市の東部まちづくり推進室の担当者から提案をいただいたんです」
と語るのは、ワイナリーのスタッフで、このプロジェクトの中心メンバーである
芳賀俊(はがすぐる)さん。
もともと、〈小牧ワイナリー〉にパンを卸していた〈パンベル〉の店主である
森友也(もりともなり)さんが、ワインパミスから、
天然酵母を起してパンを製造していました。
このことを市に伝えると、地元特産のパンをつくろうと話が一気に進んだそうです。
さらに、次世代の若い人たちも巻き込みたいと市から提案があり、
近隣の名古屋経済大学の学生たちにも参加してもらい、栄養価に関する調査や、
パンに合うレシピ開発にも挑戦したとか。
こうして、地元産のワインパミスを酵母としたカンパーニュなどの
ハード系パン2種と食パン1種が完成しました。
初のお披露目として、名古屋市・栄のスペースで、スタッフ関係者総出で、パンを販売。
小麦の香りとほんのりブドウの酸味が感じられるパンは、大好評となり、完売したそうです。
「ワインパミスから蒸留酒ができることは知っていたので、ワインパミスで
発酵させた酵母なら、おいしいパンを作れるだろうと思っていました。
学生たちにも試食してもらい、若い人たちの意見を取り入れながら、
搾りかすの果皮も粉末にして加えるなどの工夫もしました。
いろいろな力を結集して、地元の特産品を使ったパンができたことは、
すごくうれしいですね」と森さんは語ります。
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〈小牧ワイナリー〉は、2015年4月に、〈社会福祉法人AJU自立の家〉が、
障がい者の就労支援の場として開設したワイナリーです。
〈AJU自立の家〉が、障がい者の働く場として、多治見修道院のワイン用ブドウ畑の
栽培を委託されたことが発端でした。その後、就労を重ねるうちに、自分たちで、
障がい者の経済的自立につながるようなワインづくりがしたいと
小牧ワイナリーを設立。現在は、多治見修道院の畑のほかに、市内数か所、
あわせて約2ヘクタールの畑を借り、36名の方がぶどうの栽培から、
ワインの生産、加工、販売に携わっています。
醸造に関しては、AJUで働いていたスタッフ1名が、
北海道の〈池田町ブドウ・ブドウ酒研究所〉に出向し、
ワイン醸造技術を習得してきたのだとか。
ブドウ畑の栽培から、自家醸造のワインを製造し、2016年から販売をスタート。
年間約1万5000本を併設のショップとオンラインショップ、イベントで販売し、
一部、市内の酒屋・飲食店にも卸しています。
「私たちの考えとしては、どんなに重い障がいがあっても、
誰ひとり、取り残すことのないように、畑作業、ワイン醸造、販売、
何かひとつでも関われるようにしています。
そして、最終的には、福祉施設がつくるワインという枠組みを越えて、
品質で認められ、成り立っていく事業にしていくのが理想です」と、芳賀さん。
地域の活性化と障がい者の就労支援、次世代を担う若者が集うプロジェクトには、
太陽に照らされ輝くブドウのように、明るく、豊かな未来を感じました。
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