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神奈川の出版社や書店と
交流しながら本が買える
2DAYSブックマーケット〈本は港〉

コロカルニュース

posted:2024.5.9   from:神奈川県横浜市  genre:エンタメ・お楽しみ

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。

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Mana Saito

齊藤真菜

さいとう・まな●神奈川県横浜市出身・在住。「Arcade Books & Films」として、西区・藤棚商店街のシェアカフェ「藤棚デパートメント」内で本の販売や映画上映会を企画。地域メディアの指針を考えるためのワークショップカード「ローカルメディアコンパス」開発メンバー。

神奈川県内の多様な出版社や書店が集まるブックマーケット〈本は港〉。
2023年5月に始まり、大好評を博した同イベントの第3回が、
2024年5月25日(土)・26日(日)の2日間にわたって開催されます。

2回を経た手応えや今後の展開などについて、
主催・会場の〈LOCAL BOOK STORE kita.〉の森川正信さん、
同イベントディレクターの神奈川新聞社・太田有紀さんに聞きました。

神奈川から本の文化を発信

東京と近いせいか独立系書店オープンの波が来るのがだいぶ遅かった神奈川にも、
2018年頃から個人経営の書店が少しずつ増え、
コロナ禍を機にその動きがさらに目立つようになってきました。

太田さんは、そんな書店を巡って店主の話を聞く「まちを耕す本屋さん」を
2022年7月〜12月まで神奈川新聞で連載。
県内の書店について特色を聞くと、
「いい意味でまとまりがない」といいます。

「神奈川県自体、海沿いと内陸で地域性がまったく違います。
まちの中心部でも観光地でもないところで
店主のキャラクターを生かした店づくりをしていたり、
その場所が好きでわざわざ移住して
まちを元気にするために本屋をやっていたり。
自分なりの理由を持って
ここで本屋をやるんだという思いが強い方が多い気がします。
どの本屋さんもその土地らしさが表れているんですよね」

太田さんの連載をまとめたZINE『まちを耕す本屋さん』。

太田さんの連載をまとめたZINE『まちを耕す本屋さん』。裏からは、書店主らが寄稿した『本屋のあるまち』が読めるつくりになっています。

横浜・妙蓮寺駅近くの〈本屋・生活綴方〉に立ち上げから携わってきた
出版社〈三輪舎〉の中岡祐介さんも、そんな取材先のひとり。
中岡さんと、長年コワーキング・イベントスペースを運営し
さまざまな場づくりや創業支援に携わってきた森川さんを
太田さんがつないだことから、〈本は港〉の企画がスタートしました。

「本の流通や制作に関してはこれまで東京がトレンド発信地でしたが、
出版活動は東京じゃなくてもできるし、神奈川にも個性的な書店が増えてきたので
イベントをやりたいというお話を中岡さんから伺っていました。
私も新聞社で働いているので、
地元の活字文化を活性化させたいという思いは常に頭にありました。
それぞれの生業は違いますが、
最大公約数をとればきっとまとまるだろうなと思っていました」(太田さん)

〈LOCAL BOOK STORE kita.〉は、棚ごとに違う“オーナー”さんがセレクトした本を販売する“ブックマンション”型の書店。コワーキングスペース〈マスマス | 関内フューチャーセンター〉に併設

〈LOCAL BOOK STORE kita.〉は、棚ごとに違う“オーナー”さんがセレクトした本を販売する“ブックマンション”型の書店。コワーキングスペース〈マスマス | 関内フューチャーセンター〉に併設されています。

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本好きの存在を可視化

第1回は、計15の書店と出版社が出店。
まずはせっかく集まった本屋さんのお話を聞きたいという声に応える
トークイベントも用意したところ、
1日で約600人の来場者があり
一時入場規制をかけるほどの大反響となりました。

2023年5月28日に開催された第1回の様子

2023年5月28日に開催された第1回。幅広い年代の客層が来場しました。

列を作って待っている来場者

一時は会場外に列をつくる事態に。

「列を作って待っていただくことになってしまいましたが、
みなさん文庫本を読んで入場を待っているのがグッとくる光景でしたね」
(太田さん)

「僕も並んでいただく時に声掛けしていましたが、
皆さん笑顔で待ってくださってるんです。
待たされて怒るとかじゃなくて、微笑ましくその光景を楽しんでるような、
そういうお客さんばかりだったんですよね。
皆さんこういう場所を待ってたのかもしれないと感じました」
(森川さん)

その日はわざわざ店舗の方は閉じて参加する個人経営の書店が多いなか、
売り切れの本も続出。
2023年11月には、1日目は出版社、2日目は書店と
2日間に分けて第2回を開催し、
300円の事前チケット制と有料になったにもかかわらず
計約700人の来場がありました。

2023年11月第2回の様子

2023年11月の第2回は、1日目に12の出版社、2日目に11の書店が出店。

十分な売り上げが立っただけではなく、
出店者同士のコラボレーションにつながる嬉しい動きも。
小田原の書店〈南十字〉では、茅ヶ崎の出版社〈カノア〉の
新刊に関連するフェアを実施。
本の販売も行う泊まれる出版社〈真鶴出版〉では、
鎌倉の出版社〈港の人〉のフェアが開催されました。

本に携わる人を増やしたい

〈本は港〉立ち上げ当初からあった目的のひとつが、
“神奈川で本に携わる当事者を増やすこと”。
第3回では本をつくってみたい人、書店をやってみたい人などに
向けたより双方的なトークを実施し、
7月には独立系書店開業のための連続講座もスタートします。

「イベントで知った書店の実店舗に行ってみようという流れは
できてきたと思うので、
もっと仲間を増やしたいんです。
3回目の参加になるお客さんもいると思うので
より深い体験をしてもらいたい」
(太田さん)

〈モ・クシュラ〉の大谷薫子さんと〈NEUTRAL COLORS〉の加藤直徳さんが登壇、中岡さんが聞き手となった第1回のトークイベント「アートブックをつくる」。

〈モ・クシュラ〉の大谷薫子さんと〈NEUTRAL COLORS〉の加藤直徳さんが登壇、中岡さんが聞き手となった第1回のトークイベント「アートブックをつくる」。

「自分の暮らすまちに本屋があったらいいなと思いますし、
やってみたい人も増えていると思いますが、
それで生業をつくる、続けていくことの難しさも伺っています。
今まさにちょっと先にやり始めた人たちがいかに苦労しながら
持続可能な書店運営をされているのか、
そのヒントを体系的に学んだり
やりたい人同士が出会ってサポートしたりできる場を
〈本は港〉でつくれたらいいなと。

中岡さんや〈本屋・生活綴方〉店長の鈴木雅代さんと話していても、
『同じまちでもどんどん本屋をつくったらいい、そのほうがうれしい』
というマインドなんですよね。
それぞれのコンセプトがグッと前面に出れば、
どのお店も行きたい場所になる。
みんなで“次世代の書店オーナー”をつくっていきたいですね」
(森川さん)

イベント当日だけでなく
さまざまな連携を通して本文化を盛り上げていくために、
異なる立場の本好きが集まり活動するための土台が
着々とできている神奈川。
今後どんな本屋さんが生まれるのか楽しみです。

〈本は港〉第3回チラシ

〈本は港〉第3回チラシ。11の出版社と11の書店が参加します。

information

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本は港 VOL.3

開催場所:LOCAL BOOK STORE kita.

住所:神奈川県横浜市中区北中通3-33 中小企業共済会館ビル1F

期間:2024年5月25日(土)〜5月26日(日)

Web:本は港公式サイト

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