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posted:2023.6.27 from:静岡県沼津市 genre:旅行
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静岡県沼津市の景勝地、千本松原からほど近い場所にある
大正時代に建てられた、かつての別荘。
数寄屋造の建物は、歴史のなかで料亭やレストランとして利用され、
さらに敷地内には宿泊用の建物が加わって営業。
2023年6月にあらためて〈沼津倶楽部〉としてリニューアルを果たしました。
静岡県沼津市にある千本松原は、松の常緑と白雪をいただいた富士山、
そして駿河湾の彼方に沈む夕陽といった美しい自然で知られ、
白砂青松100選にも選ばれた景勝地です。
明治時代に皇族の静養地として沼津御用邸が建てられるなど、
明治から昭和にかけて多くの芸術家や華族、財閥に避寒地として愛されてきました。
ミツワ石鹸二代目当主の三輪善兵衛も、この地を愛した粋人のひとり。
沼津市から借用した約三千坪の土地に大正2年(1913年)に別荘「松岩亭」を建てました。
これが現在の〈沼津倶楽部〉の始まりです。
茶人であり、建築にも造詣の深かった三輪善兵衛は全室を茶室に。
内部は上品な和室、京都より移築された三畳台目の茶席、
和洋折衷の洋間などで構成されています。
意匠へのこだわりを高い技術で実現した建物は当代随一と言われた
江戸幕府小普請方大工棟梁の柏木家十代目・柏木祐三郎の手によります。
建物は戦中から戦後にかけて陸軍省、GHQに接収されましたが、
その後、地元有志が建物を継承。
2008年からは老朽化の進んだ数寄屋屋敷を補修、一部増築し、レストランに。
さらに宿泊棟を敷地内に設け、
宿泊施設〈千本松・沼津倶楽部〉として再興しました。
そして2023年6月にあらためて〈沼津倶楽部〉としてリニューアルオープンしました。
宿泊棟である別邸は、
栃木県那須の旧・二期倶楽部を代表作に持つ建築家、渡辺明氏の遺作となりました。
木と土という最も自然的な要素をもつ素材を使用した建物は、
数寄屋建築の伝統を受け継ぎつつ、現代的に和を表現した意匠へと展開し、
全体の調和をつくり出しています。
別邸には見所が多数ありますが、建物の外壁である版築壁(はんちくかべ)もそのひとつ。
版築とは、枠をつくり、その中に土を入れてはつき固めることを繰り返す工法で、
奈良の法隆寺でも見られるほど古くからある伝統工法です。
別邸の版築壁は、富士川の砂と土を積層させたもの。
陽の移り変わりにより、土の堅さと柔らかさの表情を刻一刻と変化させながら
風景に溶け込みます。
別邸の前には水盤があって、富士の湧水が滾々と注がれています。
夏は涼しげなせせらぎを、冬はあたたかな陽の光を受け、
時に建物の陰影を水面に映し込みながら、四季折々の姿で人々を楽しませてくれます。
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客室数はわずか8室ながら、客室タイプは5種類。
布団が敷かれる和室、広々としたバルコニー付きの洋室、
和洋の要素が混在したメゾネットなど、様々な客室タイプが用意されています。
このうち1室は、沼津スイートとして新たに生まれ変わりました。
京都・西陣にて1688年の創業以来、長きにわたり着物文化の継承に取り組み、
また独自の革新技術によって生み出される西陣織のテキスタイルを
世界のインテリアマーケットで展開する〈HOSOO〉が手掛けています。
各客室の浴室とは別に、スパが用意されています。
静寂に包まれたスパは、内風呂と露天風呂、サウナ室があり、
敷地内の井戸から汲み上げられた水が使われます。
この水は日本3大清流のひとつ、柿田川湧水群と同じ水源の富士山伏流水です。
長い年月をかけ幾層もの地層で濾過された富士山の雪解け水は、
バナジウムやカリウム、マグネシウム等の豊富なミネラルを含んでいます。
1900年代初頭より大切に受け継がれてきた希少な数寄屋造りの建物は、
補強が施されて、レストランとして活用されます。
当初、全室茶室としてつくられたことから「茶亭」と名付けられました。
料理は静岡県出身のシェフ、齋藤宏文氏が監修する
四川料理をベースとしたモダンチャイニーズです。
山と海に囲まれた自然豊かな静岡の素材が生かされます。
ランチタイムとディナータイムは、事前に予約すれば宿泊客以外も利用可能。
同じ建物にある「昭和の間」は、宿泊者専用のラウンジに。
珍しい檜のヘギ板で編み込まれた網代天井は
中央がドームのように大きく持ち上げられ、圧迫感のない広々とした空間です。
沼津の人たちが大切に守ってきた登録有形文化財の建物を含むこの場所を、
将来に受け継いで行くためにリニューアルされた〈沼津倶楽部〉。
限られた滞在時間でも、歴史的、美術的な価値と地域の誇りを感じられる
特別な旅の目的地になるはずです。
information
沼津倶楽部
*価格はすべて税込です。
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