〈 コロカルニュース&この企画は… 〉
全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。
writer profile
Riho Nakamori
中森りほ
なかもり・りほ●東京生まれ東京在住のフリーライター/編集者。仕事やプライベートで月に1回以上、地方や海外へ。各地のおいしい食べ物やお酒、素敵なホテルや旅館を発掘するのが趣味。好きな番組は『ブラタモリ』『六角精児の呑み鉄本線・日本旅』。
「日本一お節介な食の施設」として地域の観光拠点となることを目指している
複合施設があります。
それが2023年4月29日(土)にリニューアルオープンした岡山県真庭市の
〈真庭あぐりガーデン〉です。
今回のリニューアルではカフェ・レストランやショップに農産品加工・
商品開発施設を新たに加えエリアを拡張しました。
食を通じて人と自然、地域をつなぎ持続可能な地域づくりを目指しています。
岡山県最北部に位置する真庭市は、2020年の時点で、
65歳以上の高齢者の割合が39.9%を超えました。
これは全国平均(28.7%)を大きく上回る数字です。
また、真庭市は中山間地で狭小農地が多いため、大規模化・効率化を進める産地に比べ
条件が不利な上、農家の高齢化による農業の維持が大きな課題となっています。
真庭あぐりガーデンを運営する十字屋は大正時代に真庭で米屋として創業しました。
この地で困った人の力になりたいという「お節介」な想いを理念とし、
汚物処理や汚水処理といった真庭の環境を支えるインフラ事業をおこなっています。
十字屋は、地域の資源を活かした持続可能な社会の実現のため「食」を通じて
地域と人と自然をつなぐ啓発拠点として、
2015年4月に真庭あぐりガーデンを開業しました。
十字屋は、生ごみの再生事業や農業支援・高齢者支援、
担い手育成などにも乗り出しました。
そして生産から加工、販売、消費、再生という地域循環をつくり、真庭が抱える
さまざまな課題を地域で解決していこうという取り組みをおこなっています。
循環型社会への取り組みが評価され、2019年には
農林水産業みらい基金に採択された十字屋。
さらに2020年には県下で初めての「おかやまSDGsアワード2020」を受賞。
そして真庭あぐりガーデンに新たに農産品加工・商品開発施設が併設されることが
決定し、2023年4月29日これらの施設を含む新しいエリアを拡張した
真庭あぐりガーデンとしてリニューアルオープンすることになりました。
今回の真庭あぐりガーデンのリニューアルでは創業時の米屋の屋号を使った
カフェ&レストラン〈十字屋商店〉が拡大オープンしました。
真庭のバイオ液肥で育てた米「循米(めぐりまい)」をかまどで炊き上げた
ごはんを中心に、本格和食や洋食が楽しめます。
また、十字屋商店では注文を受けてからにぎる出来立てほやほやの「おむすび」、
地元に愛される餡子屋〈もりあん〉と一緒に丹精込めてつくった「おはぎ」、
「循米」を水車でついてできた米ぬかと
真庭郡新庄村のもち米を使ってつくるスイーツなど、
地元の食材をできるだけ添加物を使わずに調理しています。
注目は規格外や過剰に出来てしまった旬の野菜を中心に、地域のおばあちゃんたちが
白砂糖を使わずやさしく自然な味わいが楽しめる懐かしい味つけで調理した
「お節介おばんざい」です。
おはぎのほか、常時6種類から3種類を選ぶことができます。
おばんざいコーナーのおばあちゃんが注文を受けるだけではなく、
その方の好き嫌いを聞き、今日のおすすめなどを話し始めます。
お節介にも調理方法まで伝えてくるかもしれません。
また、地元の生産者から集めた旬の野菜や加工品をはじめ、
量り売りの調味料の販売をする
マーケット〈旬の蔵 dezi-na(デジーナ)〉なども一層充実してオープンしました。
施設内には地域の人が気軽に相談できる「お節介カウンター」が設けられ、
今後はデジタル技術も活用しながら問題を解決していくそうです。
さらに生産者の想いをつなぐ想いをもった従業員たちも、
食材や料理の説明だけではなくお節介にも生産者のことを語りだすことがあります。
こういったお節介な取り組みは、十字屋が環境衛生事業で地元集落を一軒一軒回る中、
住民が抱える生活の困りごとを聞いていたことが原点にあります。
内容は、お庭の草刈りから日用品の買い出しと多岐に渡りました。
十字屋では15年以上前から、「お節介」になんでも解決したいと「なんでもし隊」
を発足し活動をしています。
「なんでもし隊」が地域を巡回することで、地域住民の孤立を防ぎ、
見守りの役割を持つようになりました。
Page 2
さらにこの秋からは、真庭あぐりガーデン内に小さなバイオ液肥工場を設け、
施設内で出た生ごみからバイオ液肥ができるまでの循環過程を、
見学できるよう調整中です。
十字屋は、平成27年真庭広域廃棄物リサイクル事業協同組合(以下、リ協)を
エコライフ商友と共に設立。
リ協は真庭市の委託を受け、地域循環型バイオガスシステムを構築しました。
これは農林水産省のモデル事業に指定されています。
地域で出た生ごみ、し尿、汚泥などをメタン発酵によりバイオガス化させ発電へ利用する
と同時に、バイオ液肥にし、それを地域の農家へ無料で提供。
バイオ液肥を使って育てた野菜は真庭あぐりガーデンで買取り、
加工・販売を行っています。
そして、地域の方々にその野菜を消費してもらい、
さらにそのごみが土地の肥やしとなる
持続可能な循環型社会の実現を目指しています。
また、豊かな自然を未来へとつないでいくため、次世代の人々に環境保全への関心を
高めてもらおうと、住民参加型のワークショップや環境絵画コンクールの開催なども
実施しています。
そして、赤ちゃんからお年寄り、障害がある方も楽しめるよう、
施設はバリアフリー設計となっています。
また、不要になった廃材を活用して子どもが自由な発想で遊べる「はいざいパーク」、
吊り橋やチューブスライダーなど子ども向けの遊具があるほか、
今後ファミリーで参加できる、農業と食が学べるイベントに加え、
市民参加型のSDGsイベントやワークショップなども計画されています。
訪れる人が「食べる」を通じて生産者の想いと自然を感じ、
地域を育てる循環の一員になれる真庭あぐりガーデン。
「日本一お節介な食の施設」で、その素敵なサイクルを感じてみては?
information
真庭あぐりガーデン
Feature 特集記事&おすすめ記事
Tags この記事のタグ