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posted:2023.6.22 from:富山県富山市 genre:旅行
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writer profile
Riho Nakamori
中森りほ
なかもり・りほ●東京生まれ東京在住のフリーライター/編集者。仕事やプライベートで月に1回以上、地方や海外へ。各地のおいしい食べ物やお酒、素敵なホテルや旅館を発掘するのが趣味。好きな番組は『ブラタモリ』『六角精児の呑み鉄本線・日本旅』。
神通峡(富山市)の畔に位置する客室23部屋のスモールラグジュアリーホテルの
〈リバーリトリート雅樂倶(がらく)〉。
建築家・内藤廣氏の設計によるデザイン性に富んだ建築、部屋ごとにデザインが異なる
23室の客室、富山の旬の美味を味わえる和と洋のレストラン、天然温泉の大浴場、
充実したスパ施設などが特徴です。
敷地内随所に配した約300点の現代アートをはじめとするこだわりの美術品も見どころ。
『ミシュランガイド北陸2021』では、4パビリオン(赤)最上級の快適な旅館として
掲載されています。
そんなリバーリトリート雅樂倶がこの春、「サステナビリティ×ラグジュアリー」
をテーマに、客室201号室と202号室をグリーンリノベーション。
環境に配慮した客室へと一新されました。
今回のリノベーションは、県内で起業し、アップサイクル家具の生産・販売や
空間プロデュースをしている株式会社家’sと、空き家のリノベーションなどを手掛ける
dot studio一級建築士事務所と共に「グリーン・リノベーション・プロジェクト」
として実施されたもの。
すべてを壊して作り変えることはせず、
元々の設えの良い部分は積極的に活かす方針が取られました。
設計を担当した〈dot studio〉代表の沼俊之氏は
「『残すこと』と『新しくつくること』のバランスを図る設計過程は、
解体範囲をデザインすることでもあります。すべてをスクラップ&ビルドすることのない
地球に優しい客室デザインを目指しました」と語っています。
客室の壁と天井は、神通川の砂利を使用した左官で版築壁を造り
和紙と併せることで仕上げてあります。
手がけたのは立山町在住の蛭谷和紙職人・川原隆邦氏。
川原氏は和紙の原料となる楮(こうぞ)とトロロアオイを立山町で自家栽培しており
原料栽培、収穫、加工、紙漉きまでの全工程を作者自ら手作業で行い、
品のあるオリジナル和紙を制作しています。
原料の楮が垣間見える個性的な和紙からは、伝統工芸蛭谷和紙のあたたかみと、
蛭谷和紙唯一の継承者である作者の信念が感じられます。
天井にいけばいくほど楮の繊維が大きくなるのも見どころです。
また、客室には環境配慮型の新素材が多数使用されています。
そのひとつがカーペット。
漁網を再生した繊維からつくられる素材で、上質な質感のカーペットになっています。
建具や家具に使用されている、衣類の制作過程ででる布端材を再生した素材。
大理石のような柄の新素材になっています。
突板の工場に眠っていた端材を組み合わせた面材。
統一されていない突板に部屋のコーディネートに合わせた塗装を施すことで、
意匠的な不揃い感がなくなり、さまざまな樹種の突板による色のムラなども楽しい
造作家具となっています。
客室内で使用している家具は、創業以来ホテルで大事に使用してきた愛着のある家具を
アップサイクルしています。
元の姿や味は残しつつ、新しい家具として生まれ変わりました。
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客室内に設置するアメニティ(歯ブラシ・ヘアブラシ)は酢酸セルロースを
素材のベースにしたバイオマス素材を業界で初めて使用しています。
客室内はペットボトルの設置を廃止し、ウォーターサーバーを設置することで
プラスチック削減とゲストの使い心地を両立させています。
スキンケア用品には、地元の豊富な水資源を使用した生分解性の
オリジナルのオーガニックアメニティを採用。
水資源の循環を考慮し、個別包装を廃止することでゴミの削減にも取り組んでいます。
このほかにも、県内在住のガラス作家から不要なガラス片を集め
「ビールストーン(BEALSTONE)」という施工で仕上げた素材感を楽しめる
洗面カウンターなど、いたるところにサステナブルな工夫があります。
『ミシュランガイド北陸2021』で一つ星とミシュラングリーンスターとして掲載された
フレンチレストラン〈Trésonnier〉では、
地産地消やフードロス削減などのサスティナブルな取り組みを行っています。
例えば〈Trésonnier〉専用の畑で田中逸平シェフ自ら作る農作物は、
調理の過程で廃棄する魚の内臓や漁港にあがる未利用魚を堆肥にして栽培。
その堆肥を使用することで化学肥料を一切使用しない農作物を作っています。
また、海産物やジビエからとれる骨やスジ肉、農作物の野菜片から抽出した出汁は、
ホテル内のカフェスペース〈ガーデンテラス〉内で提供している
スープに生まれ変わります。
富山の地の気候、文化、先人の知恵から生まれた郷土料理の技法とフレンチの技法を
織り交ぜることで〈Trésonnier〉でしか食べられない料理を作り上げています。
旬の食材を熟成、発酵させることでそのうま味を最大限引き出し、
保存することで年間を通して旬の食材を提供しています。
またオープン当初より2年間、富山大学薬学部薬用植物園と共同研究を実施。
薬都・富山ならではの食材(トウキやドクダミ等)も使用するなど
富山の野草、薬草の食材利用への研究、効能を学び、料理へ落とし込んでいます。
今後こういったサスティナブルとラグジュアリーを追求したホテルが
日本でも増えていくきっかけになる。
そんな予感がリバーリトリート雅樂倶の事例から感じられます。
information
リバーリトリート雅樂倶
*価格はすべて税込です。
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