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山と海をまわす循環に加わる
西伊豆のアクティブなエコツーリズム

コロカルニュース

posted:2022.11.28   from:静岡県賀茂郡西伊豆町  genre:旅行

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。

writer profile

Saori Nozaki

野崎さおり

のざき・さおり●富山県生まれ、転勤族育ち。非正規雇用の会社員などを経てライターになり、人見知りを克服。とにかくよく食べる。趣味の現代アート鑑賞のため各地を旅するうちに、郷土料理好きに。

宿泊するだけで環境保護にも。
自然のつながりを感じる旅の目的地

たおやかな駿河湾に面した静岡県の西伊豆。
観光客は沿岸部のあちこちにある温泉と、
海のレジャーを目当てに訪れます。

一方で海から2~3キロの場所には山々が連なります。

隣り合う西伊豆町と松崎町を拠点とした
1200年前からあるといわれる山の古道を
マウンテンバイクで走るツアーと、
駿河湾を周遊できるカヤッククルージングとカヤックフィッシングのツアーが、
自転車好き、釣り好きの間で人気を集めています。

たおやかな駿河湾に面した静岡県の西伊豆。

マウンテンバイクのツアー〈YAMABUSHI TRAIL TOUR〉で駆け巡る山の中も整備されてきました。

マウンテンバイクのツアー〈YAMABUSHI TRAIL TOUR〉で駆け巡る山の中も整備されてきました。

ツアーを主催するのは2007年から西伊豆に住む松本潤一郎さん。

「海だけ、山だけなら、もっといい場所はある。
でもこんなにコンパクトに両方にアクセスできる場所は、
世界にもあまりないと思います」と西伊豆に感じる魅力を話します。

松本さんは17歳でネパールのヒマラヤトレイルを歩いたことを皮切りに、
アジアや南北アメリカ大陸をトレッキングやオートバイで旅していました。
またいずれ海外に行くつもりで西伊豆に住み始めたころ、
地元のお年寄りたちが使われなくなった山の道について話すのを耳にします。

「子どものころは、古道を歩いて集落と集落を行き来していたって言うんです」

山道を歩くことを目的に旅した経験があった松本さんは、
休日を利用してその古道を調べることに。
すると山の中にあった古道は、長い間、誰も足を踏み入れず荒れ果てていました。
周辺にはかつて森の木を切って炭焼きが行われていた形跡もあちこちに。

松本潤一郎さん。手入れした森にはウサギやノネズミが増え、それらを食べる猛禽類も見かけるようになったそう。

松本潤一郎さん。手入れした森にはウサギやノネズミが増え、それらを食べる猛禽類も見かけるようになったそう。

昭和中期に一般家庭にガスが普及し、
需要がなくなった炭を焼く仕事が廃れると、
森が荒れ、古道を通る人もいなくなったのでした。

「ヒマラヤや南米のトレイルのように、
この古道に人が呼べるかもしれないとぼんやり思いました」

そして各方面に許可を取って、ぐちゃぐちゃだった古道の整備を開始。

電動アシスト付きのマウンテンバイクも準備。

電動アシスト付きのマウンテンバイクも準備。

林業を学びながら1年ほどかけて15キロの道を
マウンテンバイクで駆け抜けられるように整え
〈YAMABUSHI TRAIL TOUR(やまぶしトレイルツアー)〉が生まれました。

〈YAMABUSHI TRAIL TOUR〉で走る道はかつて荒れ放題でした。

〈YAMABUSHI TRAIL TOUR〉で走る道はかつて荒れ放題でした。

現在〈YAMABUSHI TRAIL TOUR〉で走れる古道は
総延長40キロにも及びます。
電動アシスト付きも含めたマウンテンバイクのレンタルも行って
ダイナミックな自然を感じる山道を走りたいと自転車愛好家が訪れるようになりました。

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〈LODGE MONDO-聞土-〉の建物。周辺には薪が積まれている。

〈LODGE MONDO-聞土-〉の建物。周辺には薪が積まれている。

松本さんは〈YAMABUSHI TRAIL TOUR〉の傍ら森の整備を続け、
2018年には〈LODGE MONDO-聞土-〉を開設。
以前はペンションだった建物を
山の木を使ってリノベーションした宿泊施設です。

室内を見渡すと、使われている木材にある特徴があるのがわかります。
一般的な建材はまっすぐに育った針葉樹。
伊豆の山に多く育つ広葉樹は曲がって成長するため建材には不向きとされています。
その広葉樹を利用しているのです。

〈LODGE MONDO-聞土-〉のダイニング。壁やテーブルに使われている木が湾曲しているのは広葉樹の特徴です。

〈LODGE MONDO-聞土-〉のダイニング。壁やテーブルに使われている木が湾曲しているのは広葉樹の特徴です。

〈LODGE MONDO-聞土-〉では、湯沸かしにガスを利用していたところ、
2022年からウッドボイラーを導入。
燃料はもちろん山の手入れをして得た薪です。

「ここに泊まるだけで、森の手入れをしたのと同じことになりますよ」と松本さんは話します。

薪を使うウッドボイラーは熱交換式のもの。

薪を使うウッドボイラーは熱交換式のもの。

「若木の方がCO2を吸収する力が高く、成長すると弱まるそうです。
広葉樹は切ると横から新しい幹が生える性質があって
切ってやれば若返らせることができます。
枝や幹をもりに放置すると腐る過程で温暖化につながるCO2やメタンガスが排出されるので、
切っただけではダメです。
地域で薪として使えば輸送も最小限。
だからカーボンニュートラル。むしろカーボンネガティブかもしれません」

ウッドボイラーの燃料はもちろん山の手入れをして得た薪です。

松本さんたちはもうひとつ、アクティビティの提供を始めました。
カヤックを使ったクルージングやフィッシングです。
波と風の音に包まれ、手の届く場所に海面を見ながら、
乗っている人が足で漕ぐスタイルのカヤックを使用。

カヤックを使ったクルージングやフィッシング

さらに近年、蛇行が続く暖流の黒潮の影響による
海水の暖かさが風からも感じられます。
海の存在を身体全体で感じられるアクティビティです。

カヤックフィッシングのアクティビティを始めてから、
より森と海とが循環していることを感じるようになったと松本さんは言います。

時期によってタイやアジなどが釣れることも。この時釣れたのはイトヨリダイ。

時期によってタイやアジなどが釣れることも。この時釣れたのはイトヨリダイ。

「雨が降った後に、山から流れ込む水で海が濁ったときが
濁っている場所に魚が集まります。
山から流れる栄養を求めて、動物プランクトンが集まり、
その動物プランクトンを小魚が食べに来て、小魚を狙って大物がやってくる。
山が豊かであれば、海も豊かになる。
海と山が近い場所だから感じられるのでしょう」

海の存在を身体全体で感じられるアクティビティです。

松本さんたちの事業は静岡県のSDGs ビジネスアワード2022に採択され、
さらに環境省によるグッドライフアワードも受賞するなど評価が高まっています。

海と山、どちらのアクティビティも欲張りに楽しみつつ
地球の循環も考えられる時間。
これから各地で広まっていくレジャーの形かもしれません。

information

map

LODGE MONDO -聞土-

住所:静岡県賀茂郡西伊豆町仁科1081-1 

TEL:0558-36-3663

WEB:LODGE MONDO

1泊料金:7500円〜

YAMA BUSHI TRAIL TOUR 1名10000円〜 レンタルバイク5000円〜

カヤッククルージング 1名10000円〜

*価格はすべて税込です。

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