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本場の味により近づいた!
ユザーンも体験、
福島・郡山の鯉と
ベンガル料理の相性

コロカルニュース

posted:2022.1.31   from:福島県郡山市  genre:食・グルメ / 活性化と創生

PR 郡山市

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Aya Hemmendinger

へメンディンガー 綾

へめんでぃんがー・あや●エディター/ライター。出版社勤務を経て2012年よりフリーランスとして独立。関西を中心に企業PRやブランディング、伝統・地場産業×アート・デザインの分野で雑誌、書籍、ウェブマガジンにて幅広く執筆。「和歌山の県民食茶粥から県民性を紐解く」がライフワーク。

郡山は養殖鯉の生産量日本一!

水も凍る寒さ厳しい1月22日、23日。
鯉の新たな魅力に出会うイベント〈ベンガル料理にコイして。〉が
福島県郡山市で開催されました。

郡山市において、令和2年度の養殖鯉生産量は812トン。
市町村別の生産量では日本一なのです。
海から遠い郡山では、鯉は貴重なタンパク源として
甘露煮やあらいにして慶事や弔事で食べられてきました。
しかし、現在は流通の発達と食生活の変化に伴い消費が落ち込んでいます。

今回のイベントは、シタール奏者でベンガル料理に造詣の深い石濱匡雄さんと、
タブラ奏者ユザーンさんをゲストに招き、
安全で良質な鯉の普及を目指して開催されたものです。

10代の頃からインドと日本を行ったり来たりする石濱さんは料理の腕前も達人級。
その味に惚れ込んだユザーンさんが監修した『ベンガル料理はおいしい』
というレシピ本が2019年に出版されています。

イベント1日目は、『ベンガル料理はおいしい』の著者である石濱さんを講師に
「極上のベンガル鯉カレー教室」と題した料理教室を
郡山市内にある日本調理技術専門学校で開催しました。

石濱さん私物の鍋を使い、15名の参加者とともにベンガル料理をつくった。

石濱さん私物の鍋を使い、15名の参加者とともにベンガル料理をつくリました。

石濱さんが住んでいたインド・西ベンガル州からバングラデシュにかけて広がる
ベンガル地方では、「たとえ毎日鯉を食卓に出したとしても、
誰も文句を言わないぐらい日常的に食べる食材」だそう。

教室では「鯉のジョル」(さらっとしたスパイシーな汁物)、
「鯉のカリア」(カシューナッツペーストを加えた濃厚なカレー)、
「鯉の頭と豆のスープ」の3品を参加者とともにつくりました。

ターメリックと塩を揉み込んだ鯉の頭。この後オイルで揚げ焼きに。

ターメリックと塩を揉み込んだ鯉の頭。この後オイルで揚げ焼きに。

ベンガルの魚料理は油でフライしてから使うのが特徴のひとつ。
「スパイスを揉み込んだ鯉を油で揚げると独特のいい香りが出てきます」と石濱さん。
油で揚げるのは、余分な魚の臭いを取るのと、身を崩れにくくする目的があるのだそう。
クセのない鯉の味がうまく引き出された料理はどれも、
スパイシーでありながら素材の味をしっかり味わえるのが特徴で、
むしろ口の中で味が変化する重層的な味わいです。

郡山ではなかなか食べる機会のないベンガル料理を
初めてつくるという参加者も少なくないようでしたが、
スパイスの香りと、参加者の和気あいあいとした熱気が
郡山の冷たい夜に溶けていくようでした。

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ユザーンさん×石濱さんによるライブを開催

イベント2日目は郡山公会堂で
〈インド音楽&トークコンサート 〜ベンガル料理はおいしい〜〉が開催されました。

シタールの甘く伸びやかな旋律に、深く優しいタブラの音が織りなす幻想的な響きに
訪れた人はしばしうっとりしたひとときを過ごしました。

ライブの合間にはトークセッションも。

「世界中で食べられている鯉は、湖や沼に住む野生のものです。
でも郡山の鯉は養殖もの。
餌の配合もこだわっているそうで、身に臭みもないし味がきれいですね。
郡山ではお祝いのご馳走として鯉を食べていたそうですが、
家庭でも、もっと浸透したらいいと思います。
ターメリックと塩をまぶして油で揚げ焼きにするだけでもおいしいですよ。
僕はインド生活が長かったので、今は淡水魚の方が好きです」と石濱さん。

「インドに住み始めた頃は少し鯉が苦手な時期もありましたが、
今では大好物です。
東京ではなかなか売っていないから食べたいときは通販に頼るしかないので、
近所で鯉がすぐ手に入る郡山の人たちが羨ましいですよ」
とユザーンさんも話します。

「ベンガルでは鯉の頭も販売しています」とベンガルの鯉事情を語る石濱さん(写真右)。「今は廃棄物にしているそうですが、みんなが頭まで使って料理したら廃棄物も減りますね」とユザーンさん(写真左)。

「ベンガルでは鯉の頭も販売しています」とベンガルの鯉事情を語る石濱さん(写真右)。「今はほとんどを廃棄物にしているそうですが、みんなが頭まで使って料理したら廃棄物も減りますね」とユザーンさん(写真左)。

イベント会場外では、石濱さんらが前夜に手づくりした150食の「特製ベンガル鯉カレー(鯉のカリア)」と「鯉の頭のポラオ(バスマティ米と鯉の頭を使った炊き
込みご飯)」のテイクアウト販売も行われました。

イベント会場外では、石濱さんらが前夜に手づくりした150食の「特製ベンガル鯉カレー(鯉のカリア)」と「鯉の頭のポラオ(バスマティ米と鯉の頭を使った炊き込みご飯)」のテイクアウト販売も行われました。

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鯉のまち・郡山、その由縁は?

実はこのライブに先立ち、石濱さんとユザーンさんは
郡山市内で鯉の養鯉・加工業を営む〈熊田水産〉を訪ねていました。

郡山はもともと水が乏しい丘陵地帯が多く、稲作や農業にはあまり適していなかったそう。
そこで明治時代、猪苗代湖から奥羽山脈を越え
郡山まで疏水を引く「安積疏水の開さく事業」が行われたといいます。
この疏水完成の後、使われなくなったため池に鯉を放ち、
鯉の養殖が行われるようになりました。
以降、連綿と続いてきた鯉の養殖ですが、
2011年東日本大震災の原発事故の後、風評被害もあり
震災前と比較すると需要が落ち込んでいます。

出荷する前に鯉を池から生簀に移し、しっかりと泥吐きをしてから出荷する。

出荷する前に鯉を池から生簀に移し、しっかりと泥吐きをしてから出荷します。

「福島の鯉は、山からのミネラルが豊富でね。
昔は値段も一番高くて、一番おいしいと言われたけど、
震災の後は一番安い値付けになってしまいました。
最近は給食で鯉を使うようになりましたが、
給食に使う鯉は、放射線物質は不検出(ND)※です。
出荷の際には、地下水を入れた生簀で1週間から20日ほど泳がせて
ピシッとしめて(泥吐きさせて)いるのでさらに安全です」
と熊田さんは言います。

※測定結果が不検出(ND)の場合には
測定値が検出限界値未満であったことを示しています。

雪がちらつくなか、熊田水産を訪れたユザーンさんと石濱さん。写真中央は熊田水産の熊田純道さん。

雪がちらつくなか、熊田水産を訪れたユザーンさんと石濱さん。写真中央は熊田水産の熊田純道さん。

震災後は放射性物質量が基準値を超えるため池では
底の土を掘削し、洗浄するなどの除染作業を行いました。
その結果、原発事故直後は現在の基準値を超える検体も見られましたが、
今では基準値を超えるものはありません。
というのも福島県では週に1回
また郡山市では3か月に1回、放射性物質測定を行い
安全が確認できている鯉を出荷しているからです。

それでも震災の前後を比較すると震災前は1キロ約500円だった鯉は
平成30年には約400円に。
生産量も平成22年の930トンから令和2年度は812トンと減少しています。
またコロナ禍を受けて、外食ニーズが減ったために需要が減り
値段はさらに下がっているのだそう。

「鯉は料理の方法を変えたら味わいが変わるおもしろい食材」と石濱さんが言えば、
ユザーンさんも、「郡山の鯉はインドの鯉の味に近いよね」と話します。

今後は、石濱さんの料理教室でつくった「鯉のジョル」のキットを
ネット上で販売する予定。
安心、安全な郡山の鯉をもっともっと堪能してみてはいかがでしょうか。

information

福島県の放射線検査について

※福島県では、農林水産物の放射線量を測るモニタリング検査により、安全性の徹底を図っている。県内の生産者はモニタリング検査に加え、自主的な検査も行っている。

モニタリング検査結果はHPにて公表。

 

※2011~2020年度までの10年間、基準値を超過する件数の全体に占める割合は確実に減少。特に、2012年からは畜産物・栽培キノコに、2013年度からは野菜・果実・内水面養殖魚に、基準値の超過はない。

 

※2020年度は、出荷確認検査として出荷・販売用の農林水産物475品目、1万4424件のモニタリング検査を実施。基準値を超過した農林水産物はない。

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