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農業をおもしろい産業に
青森のりんご畑を守る
〈モホドリ蒸溜研究所〉

コロカルニュース

posted:2022.1.24   from:青森県五所川原市  genre:食・グルメ

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。

writer profile

Haruna Sato

佐藤春菜

さとう・はるな●北海道出身。国内外の旅行ガイドブックを編集する都内出版社での勤務を経て、2017年より夫の仕事で拠点を東北に移し、フリーランスに。編集・執筆・アテンドなどを行なう。暮らしを豊かにしてくれる、旅やものづくりについて勉強の日々です。

30年越しの夢

青森県の西北、五所川原市に〈モホドリ蒸溜研究所〉がオープンしました。
蒸溜しているのは、青森県産りんごを原料とするアップルブランデー。
JR五能線「五所川原」駅から徒歩約5分の市街地に、工場と直営店を構えます。

毎年8月4日~8日、街中を運行する立佞武多(たちねぷた)を展示する〈立佞武多の館(たちねぷたのやかた)〉の向かいに建つ〈モホドリ研究所〉。屋上スペースがあり、まつり期間は有料の観覧席になります。高さ約23mの大型立佞武多が館から出陣する様子を真正面に見られる好立地。

毎年8月4日~8日、街中を運行する立佞武多(たちねぷた)を展示する〈立佞武多の館(たちねぷたのやかた)〉の向かいに建つ〈モホドリ研究所〉。屋上スペースがあり、まつり期間は有料の観覧席になります。高さ約23メートルの大型立佞武多が館から出陣する様子を真正面に見られる好立地。

運営する〈有限会社サンアップル醸造ジャパン〉は、
代表の木村愼一さんが、2003年にアップルブランデーの製造販売を目的として設立した会社。
約20年前に一度製造を試みましたが、醸造免許を取得できず、断念した事業でした。

愼一さんは、五所川原農林高校を卒業後、
農業に携わり「大規模で、企業的で、給料をもらう農場」を夢見て、
青森県の白神山地と岩木山の麓に1976年〈黄金崎農場〉を設立したメンバーのひとり。
アップルブランデーには、1989年、農業研修に行ったドイツで出会い、
その味に魅了され「自分でブランデーをつくりたい」という夢をもったのだと言います。

アップルブランデー製品第1号となった〈LOVEVADOS BRANDY〉。樽で熟成させていないため、透明で、癖のない爽やかな仕上がりです。180ml 1518円、500ml 2860円。カラフルなリキュールを入れると色も映えるので、〈カフェドブリック〉(五所川原市)、〈パブリックバーファミリア〉(青森市)、〈ペントハウス〉(青森市)、〈Bar聖〉(ひじり)(板柳町)など、青森県内の飲食店でもオリジナルカクテルが提供されています。

アップルブランデー製品第1号となった〈LOVEVADOS BRANDY〉。樽で熟成させていないため、透明で、癖のない爽やかな仕上がりです。180ml 1518円、500ml 2860円。カラフルなリキュールを入れると色も映えるので、〈カフェドブリック〉(五所川原市)、〈パブリックバーファミリア〉(青森市)、〈ペントハウス〉(青森市)、〈Bar聖〉(ひじり)(板柳町)など、青森県内の飲食店でもオリジナルカクテルが提供されています。

2003年の会社設立当時は、免許取得が叶わなかったため、
その後農業に専念してきた愼一さんでしたが、2016年、偶然にも酒税課長との出会いがあり、
当時より免許取得のハードルが下がっていることを知ります。
「今ならできるのでは」と背中を押された愼一さんは、
「もう一度チャレンジしたい」と地元の協力者と工場建設に向けて動き出します。
2021年には念願の酒造免許を取得、30年越しの夢を実現させました。

りんごも、水も酵母も青森由来

工場には、ドイツのアーノルドホルスタイン社製の蒸溜釜を2基設置し、店舗から作業風景を見ることができます。収穫後の工程は、すべてこの場所で行います。

工場には、ドイツのアーノルドホルスタイン社製の蒸溜釜を2基設置し、
店舗から作業風景を見ることができます。
収穫後の工程は、すべてこの場所で行います。

使用するりんごは、弘前に構える自社農園のほか、近隣の農家からも仕入れ、
品種を限定せずに混ぜ合わせています。
アルコールを抽出すると、風味や香りが残らない品種もあるため、
複数の品種を混ぜ合わせたほうがブランデーには適しているのだそう。

酵母は、複数種実験し、
発酵のスピードや香りなどから白神山地で採取される〈白神酵母No.251〉を採用、
割り水にも岩木山麓の湧水を使用するなど、品質を求めた結果、
青森由来のものを原料に使用することになりました。

店内には、りんごの収穫からアップルブランデーの完成まで、工程をわかりやすく紹介するイラストも展示。このスペースは貸しギャラリーとしても使っていきたいと考えています。

店内には、りんごの収穫からアップルブランデーの完成まで、工程をわかりやすく紹介するイラストも展示。このスペースは貸しギャラリーとしても使っていきたいと考えています。

オープン1年目となる今年、販売している製品は、
りんごを破砕機でマッシュ(すりおろし)の状態にし、発酵・蒸溜を終えた後、
ステンレスタンクで熟成し瓶詰めを行ったもの。
樽の色や風味がついていないため、透明ですが、
今後は樽詰めをして熟成し、ブレンドをした製品も販売していく予定です。

オーク、アカシアなど、樽は全部で7種類を用意。樽の焼き・蒸し具合や、ブランデーの配合(ブレンド)で味や香りは変わるため、製品にする組み合わせは無限です。

オーク、アカシアなど、樽は全部で7種類を用意。樽の焼き・蒸し具合や、ブランデーの配合(ブレンド)で味や香りは変わるため、製品にする組み合わせは無限です。

「カルヴァドスは、フランスのノルマンディー地方で一定の条件に従ってつくられるもので、
最低2年、樽で熟成させなくてはならない決まりがありますが、
ここは日本なので、樽に入れて様子を見ながら、
よければ早く出してもいいと思っています。
まずはやってみよう、試してみようという気持ちで、
おいしいポイントをこれから探っていきます」

お話をうかがった、店舗責任者で取締役の山口真未さん。「代表がブランデーに魅了されたことが事業の出発点なので、シードルもワインもつくる気持ちがありませんでした。他の酒造りの経験がない人がブランデーをつくるのは、珍しいのではないでしょうか」。

お話をうかがった、店舗責任者で取締役の山口真未さん。「代表がブランデーに魅了されたことが事業の出発点なので、シードルもワインもつくる気持ちがありませんでした。他の酒づくりの経験がない人がブランデーをつくるのは、珍しいのではないでしょうか」

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ブランデーのおいしい飲み方

店舗はカフェにもなっていて、〈LOVEVADOS BRANDY〉を使用したオリジナルカクテルを飲むことができます。

(左から)トニックウォーターで割った〈LOVEVADOS SODA〉580円、オリジナルのりんごジュースで割った〈APPLE TREE〉660円。〈APPLE TREE〉の底にほんのり赤く見えるのは、果肉まで赤い五所川原市特産のりんご〈御所川原〉を使用した〈中まで赤~いりんごジャム〉。ジャムは店舗でも販売しています。

カクテルのほか、オリジナルのりんごジュースや、
青森市のスペシャルティコーヒー専門店〈COFFEEMAN good〉にお願いした
オリジナルブレンドコーヒーも販売しているので、
お酒を飲まなくとも気軽に立ち寄ることができます。

りんごジュースは、市場にほとんど出回らない〈こうこう〉含め
7品種をブレンドした人気商品。
ジュースのためにつくるりんごは、冷凍せずに、
収穫したものを絞りきってしまうため通年販売ができないのだそう。
その分フレッシュな味わいを楽しめます。

店舗では〈LOVEVADOS BRANDY〉を使用したブランデーケーキも販売。※ホールでのテイクアウト販売のみ。青森市で人気だった洋菓子店〈キーファルンバウム〉(現在青森市の店は閉め、店主の実家である五所川原市の〈御菓子司 松しま〉で腕を振るいます)が手掛けています。このブランデーケーキに〈LOVEVADOS〉を「追いブランデー」して食べるのもおすすめです。

店舗では〈LOVEVADOS BRANDY〉を使用したブランデーケーキも販売。※ホールでのテイクアウト販売のみ。青森市で人気だった洋菓子店〈キーファルンバウム〉(現在青森市の店は閉め、店主の実家である五所川原市の〈御菓子司 松しま〉で腕を振るいます)が手掛けています。このブランデーケーキに〈LOVEVADOS〉を「追いブランデー」して食べるのもおすすめです。

山口さんに、家庭で〈LOVEVADOS BRANDY〉楽しむ方法も教えてもらいました。

「ロックやストレートでも楽しめますが、炭酸で割ると飲みやすいです。
アルコール度数は25度と焼酎くらいですが、水割りよりソーダ割がおすすめです。
ライムやミントを入れるとモヒートみたいに楽しめます。
甘いお酒が好きな方はジュースで割ってもおいしくいただけますよ。
紅茶に垂らしたり、バニラアイスにかけたりと、デザートとも相性抜群です」

「日本の家庭でどぶろくを造っていたように、ドイツではブランデーを家で造っていたそうで、小さな蒸溜機械を積んだリアカーが、各家庭を回るようなシステムがあったと聞きました」と話す山口さん。そう聞くと身近な飲み物なのだと感じます。

「日本の家庭でどぶろくをつくっていたように、ドイツではブランデーを家でつくっていたそうで、小さな蒸溜機械を積んだリアカーが、各家庭を回るようなシステムがあったと聞きました」と話す山口さん。そう聞くと身近な飲み物なのだと感じます。

さらに、冷やして飲むのがおすすめなのだとか。

「ブランデーというと、昔の映画で見るような、
グラスをまわして手で温めて飲むイメージがある方も多いと思うのですが、
今は蒸溜技術が向上して、温めなくても香りが出ます。
グラスも、常温より冷やしたグラスに入れた方が、香りがやわらかくなりますよ」

度数はありますが、甘くなく、軽い口当たりのため、
食事に合わせたり、ビールの代わりの最初の1杯目として飲んでもらえるようになればと話します。
いずれはりんご以外の果物を使用したブランデーもつくっていきたいと考えているのだそう。

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青森のりんご畑を守るために

〈モホドリ蒸溜研究所〉では、
近隣農家にアップルブランデーのための「加工用りんご」の契約栽培を依頼し、
市場に左右されない一定の価格で買取を行っています。

〈モホドリ蒸溜研究所〉では青森のりんご畑を守るために「加工用りんご」の契約栽培を依頼。市場に左右されない一定の価格で買取を行っている。

「契約栽培にすると、農家さんは収益を予測できるので、
1年の売り上げの計画を立てることができますし、
最初から加工用と決めて栽培できれば、最低限の作業で済ませることができます。

高齢化で、後継者もいないので、畑を手放す人が増えています。
少しでも楽につくれて収益にできるようになると、負担も減りますし、
若い人たちも参入しやすくなるのではないかなと思うんです。

アップルブランデー事業の根幹には、
青森県のりんご栽培面積の低下を防ぐという思いがあります。
生活していけないと、農業を続けられないですからね」

500mlの〈LOVEVADOS BRANDY〉を5本つくるのに使用するりんごは約20キロ。
ブランデーは、蒸溜する段階で水分を抜き、アルコールだけを抽出するので、
製造にはシードルよりもりんごを必要とします。

工場長は単身渡米してワシントン州の蒸溜所で修行。もう一人のスタップと共にブランデー造りに挑戦しています。

工場長は単身渡米してワシントン州の蒸溜所で修行。もうひとりのスタップと共にブランデーづくりに挑戦しています。

「会社としてもですが、青森県に蒸溜所がもっと増えるとか、
加工品の主力としてアップルブランデーが扱われるようになってくれば、
必要な加工りんごが増えるので、りんご産業自体の活気がもっと出てくると思うんです。
新しい世代が、この世界に入りたいと思えるような、
農業に関わるおもしろいことをしていきたい。
この場所がそのきっかけになればいいなと思っています」

「モホドリ」は、津軽弁で「フクロウ」。
りんごの害獣であるハタネズミを捕食することから、
フクロウはりんご畑の守り神とされてきました。
「青森のりんご農家、りんご産業を守るフクロウのような存在でありたい」と願いながら
〈LOVEVADOS BRANDY〉はつくられています。

〈LOVEVADOS BRANDY〉はオンラインショップでも購入可能です。

information

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モホドリ蒸溜研究所

住所:青森県五所川原市大町508-5

電話番号:0173-23-5805

営業時間:11:00~19:00

定休日:無休

Web:モホドリ蒸溜研究所

*価格はすべて税込です。

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