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posted:2022.1.24 from:青森県五所川原市 genre:食・グルメ
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writer profile
Haruna Sato
佐藤春菜
さとう・はるな●北海道出身。国内外の旅行ガイドブックを編集する都内出版社での勤務を経て、2017年より夫の仕事で拠点を東北に移し、フリーランスに。編集・執筆・アテンドなどを行なう。暮らしを豊かにしてくれる、旅やものづくりについて勉強の日々です。
青森県の西北、五所川原市に〈モホドリ蒸溜研究所〉がオープンしました。
蒸溜しているのは、青森県産りんごを原料とするアップルブランデー。
JR五能線「五所川原」駅から徒歩約5分の市街地に、工場と直営店を構えます。
運営する〈有限会社サンアップル醸造ジャパン〉は、
代表の木村愼一さんが、2003年にアップルブランデーの製造販売を目的として設立した会社。
約20年前に一度製造を試みましたが、醸造免許を取得できず、断念した事業でした。
愼一さんは、五所川原農林高校を卒業後、
農業に携わり「大規模で、企業的で、給料をもらう農場」を夢見て、
青森県の白神山地と岩木山の麓に1976年〈黄金崎農場〉を設立したメンバーのひとり。
アップルブランデーには、1989年、農業研修に行ったドイツで出会い、
その味に魅了され「自分でブランデーをつくりたい」という夢をもったのだと言います。
2003年の会社設立当時は、免許取得が叶わなかったため、
その後農業に専念してきた愼一さんでしたが、2016年、偶然にも酒税課長との出会いがあり、
当時より免許取得のハードルが下がっていることを知ります。
「今ならできるのでは」と背中を押された愼一さんは、
「もう一度チャレンジしたい」と地元の協力者と工場建設に向けて動き出します。
2021年には念願の酒造免許を取得、30年越しの夢を実現させました。
使用するりんごは、弘前に構える自社農園のほか、近隣の農家からも仕入れ、
品種を限定せずに混ぜ合わせています。
アルコールを抽出すると、風味や香りが残らない品種もあるため、
複数の品種を混ぜ合わせたほうがブランデーには適しているのだそう。
酵母は、複数種実験し、
発酵のスピードや香りなどから白神山地で採取される〈白神酵母No.251〉を採用、
割り水にも岩木山麓の湧水を使用するなど、品質を求めた結果、
青森由来のものを原料に使用することになりました。
オープン1年目となる今年、販売している製品は、
りんごを破砕機でマッシュ(すりおろし)の状態にし、発酵・蒸溜を終えた後、
ステンレスタンクで熟成し瓶詰めを行ったもの。
樽の色や風味がついていないため、透明ですが、
今後は樽詰めをして熟成し、ブレンドをした製品も販売していく予定です。
「カルヴァドスは、フランスのノルマンディー地方で一定の条件に従ってつくられるもので、
最低2年、樽で熟成させなくてはならない決まりがありますが、
ここは日本なので、樽に入れて様子を見ながら、
よければ早く出してもいいと思っています。
まずはやってみよう、試してみようという気持ちで、
おいしいポイントをこれから探っていきます」
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店舗はカフェにもなっていて、〈LOVEVADOS BRANDY〉を使用したオリジナルカクテルを飲むことができます。
カクテルのほか、オリジナルのりんごジュースや、
青森市のスペシャルティコーヒー専門店〈COFFEEMAN good〉にお願いした
オリジナルブレンドコーヒーも販売しているので、
お酒を飲まなくとも気軽に立ち寄ることができます。
りんごジュースは、市場にほとんど出回らない〈こうこう〉含め
7品種をブレンドした人気商品。
ジュースのためにつくるりんごは、冷凍せずに、
収穫したものを絞りきってしまうため通年販売ができないのだそう。
その分フレッシュな味わいを楽しめます。
山口さんに、家庭で〈LOVEVADOS BRANDY〉楽しむ方法も教えてもらいました。
「ロックやストレートでも楽しめますが、炭酸で割ると飲みやすいです。
アルコール度数は25度と焼酎くらいですが、水割りよりソーダ割がおすすめです。
ライムやミントを入れるとモヒートみたいに楽しめます。
甘いお酒が好きな方はジュースで割ってもおいしくいただけますよ。
紅茶に垂らしたり、バニラアイスにかけたりと、デザートとも相性抜群です」
さらに、冷やして飲むのがおすすめなのだとか。
「ブランデーというと、昔の映画で見るような、
グラスをまわして手で温めて飲むイメージがある方も多いと思うのですが、
今は蒸溜技術が向上して、温めなくても香りが出ます。
グラスも、常温より冷やしたグラスに入れた方が、香りがやわらかくなりますよ」
度数はありますが、甘くなく、軽い口当たりのため、
食事に合わせたり、ビールの代わりの最初の1杯目として飲んでもらえるようになればと話します。
いずれはりんご以外の果物を使用したブランデーもつくっていきたいと考えているのだそう。
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〈モホドリ蒸溜研究所〉では、
近隣農家にアップルブランデーのための「加工用りんご」の契約栽培を依頼し、
市場に左右されない一定の価格で買取を行っています。
「契約栽培にすると、農家さんは収益を予測できるので、
1年の売り上げの計画を立てることができますし、
最初から加工用と決めて栽培できれば、最低限の作業で済ませることができます。
高齢化で、後継者もいないので、畑を手放す人が増えています。
少しでも楽につくれて収益にできるようになると、負担も減りますし、
若い人たちも参入しやすくなるのではないかなと思うんです。
アップルブランデー事業の根幹には、
青森県のりんご栽培面積の低下を防ぐという思いがあります。
生活していけないと、農業を続けられないですからね」
500mlの〈LOVEVADOS BRANDY〉を5本つくるのに使用するりんごは約20キロ。
ブランデーは、蒸溜する段階で水分を抜き、アルコールだけを抽出するので、
製造にはシードルよりもりんごを必要とします。
「会社としてもですが、青森県に蒸溜所がもっと増えるとか、
加工品の主力としてアップルブランデーが扱われるようになってくれば、
必要な加工りんごが増えるので、りんご産業自体の活気がもっと出てくると思うんです。
新しい世代が、この世界に入りたいと思えるような、
農業に関わるおもしろいことをしていきたい。
この場所がそのきっかけになればいいなと思っています」
「モホドリ」は、津軽弁で「フクロウ」。
りんごの害獣であるハタネズミを捕食することから、
フクロウはりんご畑の守り神とされてきました。
「青森のりんご農家、りんご産業を守るフクロウのような存在でありたい」と願いながら
〈LOVEVADOS BRANDY〉はつくられています。
〈LOVEVADOS BRANDY〉はオンラインショップでも購入可能です。
information
*価格はすべて税込です。
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