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世界自然遺産の沖縄・やんばるで
〈OKINAWA CACAO〉が国産カカオとチョコレートで挑む
持続可能な地域づくり

コロカルニュース

posted:2021.10.28  from:沖縄県国頭郡  genre:旅行

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。

writer profile

Saori Nozaki

野崎 さおり

のざき・さおり●富山県生まれ、転勤族育ち。非正規雇用の会社員などを経てライターになり、人見知りを克服。とにかくよく食べる。趣味の現代アート鑑賞のため各地を旅するうちに、郷土料理好きに。

2021年、奄美大島、徳之島、沖縄本島北部、そして西表島が
世界自然遺産に登録されました。
その中でも那覇から車で2時間ほど、沖縄本島の北部
やんばると呼ばれる地域は、
貴重な動植物が生息する自然が残り、一方で過疎化も進む地域です。
そのやんばるの地、大宜見村と国頭村でカカオの栽培に
チャレンジしながら地元の食材を組み合わせたチョコレートを
つくっているのが〈OKINAWA CACAO〉です。

沖縄の亜熱帯気候を生かしたチョコレートづくり

代表の川合径さんと店長の駒井美咲さん

代表の川合径さんと店長の駒井美咲さん。

「メインの事業はカカオ栽培というよりも、
地域の特産品とチョコレートをかけ合わせたものづくりなんですよ」と
OKINAWA CACAOの川合 径さんは話し始めました。
2016年に起業したときは、縁のあった大宜見村で
国産カカオの栽培を始めましたが、
程なくして海外産のカカオとやんばるの特産品を
かけ合わせたチョコレートづくりも始めました。
いわゆるBean to Barのショコラトリーです。

川合さんが沖縄との縁を深めたのは2011年3月の東日本大震災の後。
幼い子どものことを考え、妻子が沖縄に移住していました。

その頃、出会ったのが沖縄でコーヒー栽培をしている人たち。
コーヒーができるなら同じ熱帯で栽培されるカカオも育つのでは?
そう思ったのは、妻からバレンタインのチョコレートを受け取ったとき。
2012年のことでした。

そもそも川合さんはショコラティエでもなければ、
農業の専門家でもないのだそう。
東京出身で大学では農学部で学んだものの、
起業家をサポートする企業に勤めるサラリーマンでした。
日本各地に出向くたびに、
この地域だったらどんな支援ができるだろうかと
考えることが癖になっていたそう。

沖縄の亜熱帯気候を生かしたチョコレート作りを行う〈OKINAWA CACAO〉。

その一方で東京から地域を応援すること以上に、
地域のなかで根を張って働く人の存在が重要だと思うように。
そしていつしか自身が地域に入り込んで、
仕事をつくる役割を担いたいという希望が湧いてきたのだといいます。

そんなとき改めて心に浮かんだのは、
ずっと興味が消えなかった沖縄でのカカオ栽培のこと。
沖縄の知り合いに話してみたところ、
大宜見村で土地を貸してくれる人が現れたのです。
そして起業したのが2016年。タネからカカオの栽培を始めました。

カカオが芽を出して、実をつけるようになるまでは
4年以上かかるのが一般的。
まして、沖縄はカカオの栽培適地かというと、そうでもないのです。

まずは、沖縄らしいチョコレートのブランドづくりをしよう。
そう考えて、沖縄ややんばるの特産品を
海外産のカカオと合わせたチョコレートをつくり始めることに。

最初は知り合いのチョコレート屋さんに製造を委託。
砂糖も沖縄と奄美で取れるさとうきび糖を使用して、
シークヮーサーと沖縄のシナモン・カラキと
2種類のフレーバーの板チョコレートから販売を始めました。

〈OKINAWA CACAO〉チョコレートのフレーバーには、シークヮーサー、沖縄のシナモン、カラキ、月桃、泡盛がある。

大宜見村は「シークヮーサーの里」と村が謳うほど
シークヮーサー栽培が盛ん。
カラキは樹皮をおやつにするほか、
やんばるでは葉を使ったお茶がよく飲まれる地域に根ざした産物です。

その後、チョコレートは自社製造に切り替えて、
たったひとりでカカオの焙煎からチョコレート製造、販売までを行いました。
そのころ加わったフレーバーが月桃と泡盛です。

月桃は葉っぱが沖縄の蒸し餅、ムーチーを包むのに使われます。
どこにでも生えているのでOKINAWA CACAOでも
自社の畑に自生しているものを刈り取って使っているそう。

泡盛は、同じ集落のやんばる酒造の泡盛「まるた」を使用。
焙煎する前のカカオ豆を泡盛に漬け込んだあと、
焙煎で熱を加えるのでアルコール分は飛んでしまうのだとか。
カカオに移った「まるた」の風味はチョコレートに残るので
泡盛のおいしさも伝えることができます。

板チョコレートの商品は薄いカレが4〜5枚入っている。

板チョコレートの商品は薄いカレが4〜5枚入っている。

ちなみにシークヮーサーは、
以前は生産者が収穫したものを農家から仕入れていましたが、
近頃は重労働の収穫作業をスタッフと一緒に手伝うように。
地域の手助けをするのも重要な役割なのです。

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収穫から販売・出荷まで、携わるのはチョコレートに関わるすべて

「今、僕を入れて社員が3人、パートさんが6人。
小さい会社だから、チョコレートの製造と販売に関わることは
なんでもやっているんですよ」と川合さん。

国頭村に2018年に開いた〈OKINAWA CACAO FACTORY AND STAND〉は、チョコレート製造と販売の拠点になっている。

国頭村に2018年に開いた〈OKINAWA CACAO FACTORY AND STAND〉は、
チョコレート製造と販売の拠点になっています。
関西出身で2020年から店長を務める駒井美咲さんも、
朝は2時間ほど畑で作業をしてから店でチョコレートつくりを始めるそう。

起業から5年で実り始めたカカオ

そして起業から5年目の2021年。
OKINAWA CACAOのきっかけとなったカカオ栽培は
どうなっているのでしょうか。

カカオは寒暖差に弱い植物だが、大宜見村ではビニールハウス内で越冬できることがわかり、いよいよカカオが実り始めた。

カカオは寒暖差に弱い植物です。
冬場は最低気温が10度を下回ることもある大宜見村では、
ビニールハウス内でカカオが越冬できることがわかり、
いよいよカカオが実り始めました。

ラグビーボールのような形の黄色いカカオの果実。2021年に入ってからは、100個ほどの収穫があったという。

「これ、今朝取れたカカオポッドです」と
ラグビーボールのような形の黄色いカカオの果実を差し出す川合さんは
うれしそうな表情を見せました。
2021年に入ってからは、100個ほどの収穫があったといいます。

〈OKINAWA CACAO FACTORY AND STAND〉のメニュー。徐々に種類が増え、販売も軌道にのってブランドも認知されるようになった。

今のところ自社のカカオでつくったチョコレートは試験段階ですが、
海外産カカオを使った商品も、島バナナを使ったり、
ボンボンショコラやアイスをつくったりと、徐々に種類が増えています。
販売も軌道にのってブランドも認知されるようになりました。

手狭になった生産施設を新設するため、
2022年春に新しい工房をつくろうと、クラウドファンディングにも挑戦中。
カカオの畑からチョコレートの製造までを見学できる施設になります。
カフェを併設して、訪れた人にはゆっくり過ごしてほしいそう。

「この地域の人たちは懐が深いんですよ。
カカオをやりたいなんて、よくわからないことを言う
僕のような余所者を、地主さんや集落の人たちは5年もの間、見守ってくれた」
そう川合さんは振り返ります。

そして、もっとやんばるの地域資源を生かせないかも考え続けています。

地元の福祉作業所に依頼して作った新聞紙のエコバッグは、SDGsの観点でも東京の百貨店などから注目された。

地元の福祉作業所に依頼してつくった新聞紙のエコバッグは、SDGsの観点でも東京の百貨店などから注目された。

「この地域は表面的には何もありません。
でもよく見るといろいろある。例えば福祉作業所だって地域資源です。
障害のある人たちに沖縄の新聞紙でエコバックをつくってもらって、
チョコレートとセットで販売したら、これが思った以上に好評でした」

沖縄らしいチョコレートを世界のチョコレート好きに向けて

2022年に新しい拠点ができたら、次の目標はなんですか?
そう尋ねてみたら
「2025年にパリのサロンドショコラに出展することです」
という答えが返ってきました。

やんばるの地からチョコレートとカカオを通して世界を目指し、地域の社会課題にも取り組む〈OKINAWA CACAO〉。

「あと数年すればカカオの実もそれなりの量ができて、
世界のチョコレート好きの人たちに沖縄を知ってもらえる。
そんな機会にしたいと思います」

OKINAWA CACAOでは、現在新たな人材も募集しています。
やんばる地域のこと、チョコレートのこと、畑のこと、
そしてブランドを一緒に育てたいと考える人に出会えたらと川合さんは言います。

海と山、夜には満天の星も見える自然豊かなやんばるの地から
チョコレートとカカオを通して世界を目指し、
地域の社会課題にも取り組むOKINAWA CACAO。
やんばるの地に新しい魅力を加える存在になったようです。

information

map

OKINAWA CACAO FACTORY & STAND(オキナワ カカオ ファクトリー アンド スタンド)

住所:沖縄県国頭郡国頭村字浜521

Tel:050-5241-8152

Web:公式サイト

Web:クラウドファンディング

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