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writer profile
Haruna Sato
佐藤春菜
さとう・はるな●北海道出身。国内外の旅行ガイドブックを編集する都内出版社での勤務を経て、2017年より夫の仕事で拠点を東北に移し、フリーランスに。編集・執筆・アテンドなどを行なう。暮らしを豊かにしてくれる、旅やものづくりについて勉強の日々です。
湯治場として400年以上の歴史をもつ黒石温泉郷のひとつ温湯温泉(ぬるゆおんせん)。
傷ついた鶴がそのお湯で傷を癒していたという伝承が残り、
中心には共同浴場〈鶴の湯〉があります。
古い建物を楽しみながらこのまちを散策していると、
かわいらしい鶴の看板を掲げた一軒のカフェが現れます。
店の名前は、住所にもある「鶴」の英名「crane」からとったという〈クランカフェ〉。
青森県産のりんごを使用したタルトタタンや週替わりランチ、ガレットが人気です。
店を営むのは、神奈川出身の田中遥さん。
弘前大学で学んだ遥さんは、卒業後関東で就職するも、
結婚を機に夫の職場がある青森県へ移住。
現在は平川市に住み、子育てをしながら、
木・金・土曜の営業日に、温湯温泉へ通っています。
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店の建物はかつて鮮魚店で、遥さんが自身の手で改装を行いました。
聞くと、昔からカフェをやりたいと思っていて始めたのではないと言います。
「平川に越してきて、働きたいなとは思っていたんですが、
私も旦那さんも実家が遠くて近くに頼れる家族がいないので、
子どもが小さいうちは会社勤めは難しいかなと思ったんです」
遥さんは農学部出身だったこともあり、
最初は農業を始めようかとインターネットで畑を探していましたが、
その過程でこの建物の外観写真と出会います。
「なんだか気になって、実際に見に来てみたんです。
そうしたらガラス張りがすごくすてきで、
カフェにできるなってそのとき直感的に思ったんですよね。
まちの雰囲気も気に入って、子どもを保育園に預けるために
仕事に就かなければならない期限が迫っていたこともあったんですが、
ここを買おうってすぐに決断できちゃいました」
遥さんはカフェの運営も改装も未経験でしたが、
「やるしかない」と、自身のアイデアで空間と仕事をつくり上げていきました。
改装に半年をかけ、クランカフェは2016年にオープンします。
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店の一角で、手づくりのお菓子のほか駄菓子も販売し、
メニューに「お子様ランチ」が並ぶのも、
クランカフェがまちに溶け込んでいるなと思わせてくれる魅力のひとつです。
お子様連れのお客様が多いのかと思いきや、
近所の小学生がよく遊びに来てくれるのだとか。
「お子様ランチを食べに来たり、駄菓子を買いに来てくれたりするんです。
おこづかいをもって来てくれてるんだろうなって思うとうれしくて。
こんなお店があったよねって、将来子どもたちの記憶に残ってくれたらいいなと思います」
地元の子どもたちはもちろん、
遥さんの生活リズムに合わせた無理のない営業時間もあってか、
女性グループや日帰り温泉に来たお客様など、
カフェを訪れるのはコロナ禍になる前から県内在住の人が多かったと言います。
古くからのまち並みが残る温湯温泉郷で、
地域に愛されながらマイペースに新しい歴史を刻んでいくクランカフェ。
温泉と一緒に立ち寄れば、心も体も癒されるはずです。
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古津軽
Web:古津軽
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