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posted:2021.3.15 from:愛知県名古屋市 genre:アート・デザイン・建築
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writer profile
Yu Miyakoshi
宮越裕生
みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。
2020年、業務用家具を手がける株式会社ノーリツイス、アルプルススチール株式会社、
株式会社フジライトの3社を中心としたメーカーたちが、
ものづくりのコミュニティ〈1518(いちごいちはち)〉を設立しました。
1518は、メーカー、デザイナー、ショップ、そしてユーザーが一緒になって、
共感性の高い”私たちの”ものづくりを可能にする、オープンなコミュニティ。
コミュニティの運営を行いながら、
各社の技術やアイデアを生かした家具をつくっています。
発起人は、愛知のスチール家具メーカー〈株式会社ノーリツイス〉代表の青木照護さん。
「中小の家具メーカーの横つながりをつくり、
新しいものづくりをしたい」という青木さんの呼びかけに、
静岡で業務用ソファやベッドを製造する〈株式会社フジライト〉と、
名古屋でロッカーを製造する〈アルプルススチール株式会社〉が賛同。
さらに、ディレクター陣にデザイナーの横関亮太さんと山田研一さんを迎え、
メーカーとクリエーターの垣根を超えたものづくりを行ってきました。
注目は、長く愛されてきたオフィス家具を
モダンに生まれ変わらせる「リボーン・プロジェクト」。
たとえばパイプイスなら「セミオーダーできるようにしたい」
「色や生地を変えたら家のなかでも使えるかも」などの声を集めて、
家庭やホテルなどの公共空間でも使いやすいイスに。
リボーン・プロジェクトの〈PIPE chair〉スタンダード 15,400円〜 製造:株式会社ノーリツイス
使わないときは収納しておけるというのは、スペースが限られた家庭にはうれしいですね。
今回は、1518プロジェクトの初期からメンバーとして関わり
コミュニティのアイデアをプロダクトにしてきた横関亮太さんに
お話を聞かせていただきました。
プロダクトデザイナーの横関亮太さん。1518ではものづくりのディレクションと家具のデザインを手がける。
「PIPE chairが生まれたきっかけは、ノーリツイスさんから
“パイプイスの工場設備ラインをつぶそうと思っている”と相談を受けたことでした。
ノーリツイスさんは70年以上パイプイスをつくってきたのですが、
近年は価格競争に勝てず、売り上げが伸び悩んでいたんです。
その話を聞いて、それなら既存の設備を有効活用して、
小ロットで新しい需要を目指すものをつくりませんか、と提案させていただき、
今のニーズに合わせたパイプイスをつくりました」
〈Lay Sofa〉 製造:株式会社フジライト 100%自社工場生産の業務用家具メーカー〈フジライト〉が〈東レ〉と共同開発したオリジナルファブリックを活かして作ったデイベッドタイプのソファ。
「また1518では、リボーン・プロジェクトだけではなく、新しい家具もつくっています。
古いものをブラッシュアップすることと、
コミュニティからのリクエストを受けて新しいものをつくること。
両方できるのがこのプロジェクトのおもしろいところですね」
下の写真は、1518の初お披露目となった展示会の様子です。
2020年10月、デザイン&アートフェスティバル〈DESIGNART TOKYO 2020〉にて、
東京・青山のワールド北青山ビルとリアルスタイル青山の2会場で開催されました。
ワールド北青山ビルで開催された展示会の様子。ブースデザインを手がけたのは関祐介さん(YUSUKE SEKI Studio)。緑色の部分は、クロマキー合成に使用されるグリーンバック。
オンラインで見た会場の様子。クロマキー合成により、視覚的効果が施されている。オフライン、オンラインで異なる表情が楽しめる、コロナ禍ならではの空間演出。
リアルスタイル青山には、インテリアデザイナー山嵜廣和さんや
テキスタイルデザイナー氷室友里さんなどのクリエイターや素材メーカーと
1518のコラボレーションから生まれた椅子が展示されました。
写真家、永瀬沙世さんの作品。外出が困難なコロナ禍でも、「森の中に静かに座っている感覚」を体験してほしいとデザインされたもの。
インテリアデザイナー山嵜廣和さんの作品。ロッキングパーツを組み合わせて、寛げるパイプイスに。
日本とフィンランドでテキスタイルを学び活動しているテキスタイルデザイナー氷室友里さんの作品。
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リボーン・プロジェクトの〈Jim Chair〉スタンダード 40,700円〜 製造:株式会社ノーリツイス 昔ながらの事務イスをアップデートした“家で使える”事務イス。
ファーストコレクションの発表を秋に控えた、2020年初夏。
世間には新型コロナウィルスの影響が広がり、混乱が続いていました。
1518はユーザーの生活が変わったことを受け、それまでに計画していた
プランを白紙に戻し、舵を取り直したといいます。
大きく変更したのは、サイズと価格、そしてデザイン。
たとえば机なら、家庭のオープンスペースにも置けるようコンパクトにして、
天板は温かみのある木の素材に、価格はできる限り抑えて。
そして完成したのが、こちらの〈JIM desk〉です。
リボーン・プロジェクトの〈JIM desk〉 製造:アルプススチール株式会社
天板と引き出し脚の組み合わせはカスタマイズできるので、
インテリアに合わせて選ぶことができます。
こんな机なら、ワンルームの部屋にも取り入れられそう。
「オフィス家具メーカーだけでは温かみのある木製家具はつくれないですし、
逆に木製家具メーカーは木を使ったものづくりしかできない。
でも、メーカーの垣根を超えて協働すれば、
それぞれの得意分野を掛け合わせた新しいものができるんです」(横関さん)
1518の家具を見ていると、萌える緑のような色であったり、
夜の海のような深い色であったりと、気持ちが安らぐ色味に目を惹かれます。
ファーストコレクションは、横関さんがつくった
「NOSTALGIC HUE」(どこかで見た景色)というカラースキームで展開しているのだそう。
「クリエィティブチームのメンバーと家具の色について話し合っていたときに、
“思い出のなかの美しい景色って、心が落ち着く色だよね”と話していたら、
“それって横関さんが生まれ育った場所の景色とリンクするんじゃない?”と言われて。
それで故郷の岐阜県関市へ行き、実家のそばの山や川、まちで写真を撮ってきたんです」
「たとえばJIM deskやDD shelfのグリーンは、
山の淡い緑からインスピレーションを得ています。
自然の景色だけではなく、日常のなかの景色とか家具の色とか、
昔の問屋街なども撮りました。
問屋街は、今ではシャター街になっているんですけれど、
そういうところにもノスタルジーを感じる色味があったりするんですよね」
〈DD Shelf〉 製造:アルプススチール 前後両開きのクローズドシェルフ。前からも後ろからも収納物を取り出せ、間仕切りとしても活用できる。
「ブリック(煉瓦色)は、愛知県犬山市の〈明治村〉に
フランクロイドライトが設計を手がけた旧帝国ホテルが
移築保存されているのですが、その建物が煉瓦造りなんですよ。
その壁の色が何となく記憶に残っていたんです」
「教室の写真は、山奥に廃校になった学校があって、そこを探検したときの写真です。
柔らかい光の感じや、温かみのある白い家具の色に、いい懐かしさがある。
皆のなかにも、そんな色の記憶があると思うんです。
そういった記憶に残る色が、トレンドに左右されない
タイムレスな色になっていくといいな、という思いでつくりました」(横関さん)
横関さんによると、岐阜では昔から陶器や漆器、木工、和紙、刃物など、
様々な分野のものづくりが発展してきたそう。
将来は岐阜のつくり手と1518のメーカーのコラボレーションから
新しいプロダクトが生まれることもあるかもしれません。
3月16日 (火) 〜3月25日 (木) は、名古屋の〈FabCafe〉にて、
展示会〈Made By Comunity-コミュニティから生まれる家具-〉を開催。
カフェを利用しながら、〈PIPE chair〉、〈DD shelf〉、〈LAY sofa〉
〈JIM chair〉、〈JIM desk〉を体験することができます。
また、今回ご紹介した家具は、公式サイトからプレオーダーすることも可能です。
ぜひチェックしてみてください。
information
Made By Comunity-コミュニティから生まれる家具
会期:2021年3月16日(火)〜3月25日(木)
会場:FabCafe Nagoya
住所:愛知県名古屋市中区丸の内3-6-18
アクセス:久屋大通公園内/名古屋市営地下鉄 久屋大通駅から徒歩で3分
Web:Exhibition by 1518 feat.Ultrasuede®
Web:1518 公式サイト
facebook:@1518community
Instagram:@1518community
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