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posted:2020.4.29 from:熊本県熊本市 genre:ものづくり
〈 コロカルニュース&この企画は… 〉
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writer profile
Mayo Hayashi
林真世
はやし・まよ●福岡県出身。さまざまな職種を経験後、現在はフリーランスのライターとして活動中。デザイン・アートが好きで、作家やアーティストのインタビューを中心に執筆。2020年に地元福岡に帰郷、東京と行き来しながら九州のおもしろいヒトモノコトを掘り起こし発信している。
「万華鏡」を覗いた、最後の記憶はいつだろうーー?
キラキラと輝く小さな世界を初めて覗き込んだときの感動や、
色紙やビーズを入れて自分だけの万華鏡をつくった幼少期。
そんな思い出のある人もいるのではないでしょうか?
このたび「再生プラスチックとごみ」を素材にした万華鏡〈REF〉が
〈BRIDGE KUMAMOTO〉より発売されました。
〈BRIDGE KUMAMOTO〉の理事メンバー。左から中島昌彦、田中美咲、三城賢士、佐藤かつあき、稲田悠樹、中屋祐輔、村上直子
BRIDGE KUMAMOTOは、「創造力は奪えない」を合言葉に
熊本のクリエイターを中心に結成された一般社団法人。
2016年の熊本地震をきっかけに設立されました。
これまでに熊本地震の象徴である被災地のブルーシートを再利用して
トートバッグにした〈ブルーシードバッグ〉を手がけるなど、
熊本県内外で被災地の支援につながる活動を続けています。
今回発表されたREFは、クラウドファウンディング〈BOOSTER〉にて
4月21日よりオンラインでの受付がスタートしました。
プロジェクトには韓国、東京、熊本のクリエイターが集まり、
構想から販売までに2年の歳月をかけて製品化されました。
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REFはすっきりとしたデザインとその素材が特徴です。
華美な装飾をなくした大人も楽しめるデザイン性と、
製造面でも無駄を省いたシンプルな構造を実現しています。
筐体(きょうたい)部分には再生プラスチックが使用されており、
全体重量(内部のミラー部、アクリル板を含む)の41%にあたります。
ここでいう再生プラスチックとは、工場の製造過程で出た廃プラスチックを再生したもの。
「のぞくもの」は、身近なプラごみを手作業で細かくして容器に収めています。
今回のプロジェクトを進めるなかで、障がい者就労支援を行う
〈UMU(う〜む)〉との出会いがきっかけとなり、
障がいのある方々に組み立て作業を委託することができたそう。
地元で働く方々への還元につながるうれしい循環も生まれています。
REFは、透明のアクリル板を使用しているので景色が透けて見えます。
また「のぞくもの」のごみを簡単に入れ替えることができるので、
家族や子どもたちと一緒に、いろんな素材で遊んでみるのもいいですね。
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バリ島で圧倒されたごみ集積場。居住地のすぐ近くにあり人体や自然環境への影響が懸念されている。
BRIDGE KUMAMOTOの代表理事である佐藤かつあきさんは、
REFの構想が生まれたきっかけについてこう話します。
「熊本地震から2年が経ったとき、ブルーシードバッグに続く
“私たちらしい社会課題解決のための提案”とはなんだろうと考えました。
そんなとき出会ったのが、インドネシアのバリ島に拠点を置く〈Earth Company〉。
彼らの『次の世代に残せる未来を創造する』という
ビジョンに惹かれ、仲間たちとバリ島を訪れたことがきっかけでした」
バリ島で目にしたごみ集積場は衝撃的な光景だったといいます。
観光客が生み出したと思われる大量のごみ。そこから立ち上る悪臭、
牛が餌を漁るごみの山とその周辺で遊び回る子どもたちーー。
「処理されないごみは生態系を犯し、再び私たちの体内に入ってくるのでは?
このままでは子どもたちの未来にまで影響が出るのでは?」
と日本から遠く離れた地で考えさせられたといいます。
その一方で、「ごみ山を上から見たとき、光が反射して万華鏡のように
キラキラしてきれいだった」という声がメンバー内で上がり、
その言葉をきっかけに「ごみから万華鏡をつくることができないか」と
プロジェクトが始動しました。
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無数のごみを、無数の花に変えるーー。
REFはREFLECTIONの頭文字であり、内省、熟考するという意味があります。
訪れたバリで目の当たりにした“ごみの山”の現実は、
別世界のことではなく私たちの世界と地続きであるということ。
ごみという課題に向き合い、内省し熟考したことから名づけられました。
世界のごみ問題をすぐに解決することは難しいけれど、
多くの人に身近なごみに目を向け関心を持ってほしい、
ひとりひとりの行動が子どもたちや私たちが住む地球のこれからに
関わっていることに気づいてほしい。そんな願いが込められています。
残された未来を生きていくのは子どもたち。
ごみのない未来を想像し、まずは無意識ではなく意識してみること。
今ひとりひとりが、クリエイティブに未来を創造していくときかもしれません。
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理事メンバーである村上直子さん(左)と熊本大学4年生(2019年当時)の久保七海さん(右)
BRIDGE KUMAMOTOの村上直子さんはREFを製品化するにあたり、
身近なごみ問題をリサーチしようと昨年、荒尾干潟を訪れました。
「バリ島のごみの山から始まったREFプロジェクトですが、
私たちが住む熊本でもリサーチを行いました。そこで出会ったのが、
有明海の荒尾干潟で海洋ごみや生物多様性の調査研究に取り組む高校生たち、
荒尾干潟の美しさに魅了されイベントを企画する大学生たちでした。
今回モデルになってくれた七海さんもそのひとりです」(村上さん)
2019年10月に熊本大生が主催した荒尾干潟でのイベント『宝汐館』でのTシャツアートのインスタレーション。
REFプロジェクトにPRのモデルとして参加した久保さんは、
もっと多くの人たちに身近な環境に関心を持ってもらいたいと話します。
「大学では地域活性や環境への理解を深めてもらうための取り組みや
“宝の海”と呼ばれる有明海、荒尾干潟の美しさや豊かさを伝える
活動をしていました。
そこでゼミの先生のつながりでBRIDGE KUMAMOTOのみなさんとお会いし、
『無数のごみを無数の花に』という価値観の転換を生む仕組みは
とても魅力的でおもしろいと感じました。
海などのきれいな風景、資源は未来に残すべき宝物だと思います。
日常から遠いところにあるように思われる環境問題への取り組みも
REFをきっかけに広がってほしいです」
「若い世代をも魅了する美しい荒尾干潟ですが、
近年マイクロプラスチックなどの海洋ごみの問題が囁かれています。
“もしかしたら私たちのすぐ近くに環境問題が潜んでいるかもしれない”
という疑問を持つことがまずは大事だと考えています。
自然の美しさを守るためにも、『REF』を通して身近なことに
関心を持つことから始めてみてほしいと願っています」(村上さん)
BRIDGE KUMAMOTOは、クリエイターがそれぞれの得意なこと、
できることを持ち寄りながら社会課題から生まれた疑問をかたちにしてきました。
「小さなアイデアをかたちにし、小さな明かりを灯し続けること」。
そのためにさまざまな“クリエイターの発想やスキル”が必要不可欠であると、
代表の佐藤さんは語ります。
身近な社会課題に向き合うことで生まれた「ごみを見る万華鏡」。
つくり手の想いが詰まったこのプロダクトを、これからの未来を考える
手がかりにしてみてはいかがでしょう?
information
BRIDGE KUMAMOTO
Web:http://bridgekumamoto.com/
REF先行販売Webページ:https://camp-fire.jp/projects/view/255687
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