news
posted:2019.9.12 from:宮城県仙台市 genre:食・グルメ
〈 コロカルニュース&この企画は… 〉
全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。
writer profile
Haruna Sato
佐藤春菜
さとう・はるな●北海道出身。国内外の旅行ガイドブックを編集する都内出版社での勤務を経て、2017年より夫の仕事で拠点を東北に移し、フリーランスに。編集・執筆・アテンドなどを行なう。暮らしを豊かにしてくれる、旅やものづくりについて勉強の日々です。
量り売りマルシェが開催されていたのは、
「仙台」駅からJRまたは市営地下鉄で約6分の「北仙台」駅にある、
〈紫山のごはん会 分室〉。
ふだんは料理教室が開かれるガラス張りのコンパクトな空間に、
宮城県内でつくられた新鮮野菜や発酵食品が並びます。
企画したのは、〈旅するイチとニ市〉や〈するめNIGHT〉など、
宮城県内でイベントを企画する〈PLANNING LABORATORY〉の渡辺さんと、
宮城県大崎市岩出山でハムとソーセージを手づくりする〈ジャンボンメゾン〉の高崎さん。
生産者である高崎さんと、生産者とイベントを企画することが多かった渡辺さん。
開封後すぐに捨てられてしまうプラスチック容器と、
必要以上に購入され捨てられる食品のロスを減らしたいという
思いを持っていたふたりが出会い、2019年6月に始まりました。
量り売りマルシェは、月1回、太陽の動きに合わせて季節を表す
二十四節気に合わせて開催されます。
取材したのは二十四節気の「処暑」にあたる、8月23日。
夏の気配が残るこの日は、山形県尾花沢で
無農薬・無化学肥料のスイカをつくる〈FARM OCHI〉や、
宮城県の農家の朝採れ野菜を販売する〈とうほく食育実践協会〉が出店。
来店者が毎回楽しめるよう、時季に合わせた
旬の商品を定番商品とともに並べるようにしているそう。
「環境保全や食品ロスを前面に押し出すと、構えてしまい、届けたい人に届かない。
まずは旬のものを純粋に楽しんでもらいつつ、
課題を考えるきっかけになってほしい」と渡辺さんは話します。
楽しみながら考えることが、長くつづける秘訣だと思っているからです。
季節のもののほかに、出店者同士のここだけのコラボレーションも楽しみのひとつ。
この日は、手ごねパン〈ecru〉が、
隣で出店する〈aroma-rhythm〉のミックスハーブを使用した
〈ハーブの丸パン〉を販売していました。
主催者の願い通り、ほとんどの人が
エコバックや保存容器を持参して買い物にやってきます。
会場では、繰り返して使えるラップ〈Beeswax Wrap〉も販売しています。
Beeswax Wrapは、みつろう・ホホバオイル・松ヤニでできた専用シートを、
コットン素材の布に染み込ませた食品保存用のラップ。
洗って乾かすだけで4~5年繰り返し使うことができます。
みつろうの抗菌作用で、食品の鮮度を長持ちさせてくれるのも魅力です。
ワークショップも開催されているので、好きな布を選んで、自分で作ることもできます。
ワークショップでつくったラップはすぐに使うことができ、
量り売りマルシェで購入した商品を包んで持ち帰ることもできます。
Beeswax Wrapのように、環境にやさしい食品の保存方法も教えてくれるこのイベント。
渡辺さんは、「イベントをやることが目的ではない」
「今の状況が当たり前ではないことに気がついてほしい」と話します。
容器持参で買い物ができるお店が近くにあるのが理想ですが、
毎月イベントに来ることで、エコバックや保存容器を持って買い物に行く理由を考え、
ゴミを減らす習慣を日常の中に落としこんでもらうことが願いです。
Page 2
〈鎌田醤油店〉は、1835年創業の味噌と醤油の老舗。
一部の醤油瓶を回収して洗浄し、リユースするなど、環境に配慮している会社で、
日ごろから味噌の量り売りを行なっています。
余すことなく使ってもらいたいという思いはさることながら、
味噌は、流通用に密閉してしまうと発酵が進みふくらんでしまうため、アルコール添加が必要。
蔵出しそのままの風味を届けるには、量り売りが一番の方法と考えています。
主催の〈ジャンボンメゾン〉も、
百貨店の贈答用として人気の〈岩出山家庭ハム〉とは別の、
量り売りを主とした新ブランド〈アトリエ・ドゥ・ジャンボンメゾン〉の商品を販売しています。
ハムを無添加で作りたいと思っても、
保存や包装のため、流通させるのが難しいのが現状。
量り売りができれば、対面で今日中に食べてくださいと伝えられ、
無添加でつくり上げたそのままの味を届けられるようになると思い、始めたブランドだそう。
何よりも、「切りたてのハムが一番おいしい。
一番おいしいハムを体感してもらいたい。それでこそ、ハム屋」と話す高崎さん。
大量につくり、一定の品質を保った商品が常にある店に買に行くのではなく、
少量でも、とっておきの商品ができたから知らせ、
ほしいと思った人が買いに行く、という販売スタイルに
移行していく時期なのではとも感じていました。
無添加ハムは現在試作中ですが、販売が実現する日が楽しみです。
出店者に話をうかがっていると、包装材が不要になり、コストが減ることはもちろんながら、
一番に考えているのは、つくり手として、最もおいしい状態の商品を届けること。
その方法を考えたとき、たどり着いたのが量り売りだったのだと感じます。
かつて日本では当たり前だった量り売り。
つくる人もつかう人もロスがなくなり、おいしくて、環境にもやさしい。
私もこの日、ゴミの出ない買い物をしてとてもストレスフリーでした。
仙台でのこの活動を知ることで、私たち消費者が、
日常のなかで意識してプラスチック包装を選ばない買い物をしていくことも、
暮らしを変化させる一歩かもしれません。
次回の開催は9月23日(月・祝)。どんな旬の味覚やコラボ商品が登場するか楽しみです。
information
量り売りマルシェ
日程:2019年は、下記を予定。
9月23日(月・祝)秋分の会
10月24日(木)霜降の会
11月8日(金)立冬の会
12月21日(土)冬至の会
時間:11:00〜17:00
場所:紫山のごはん会 分室
住所:宮城県仙台市青葉区通町2-16-24コクラス北仙台1F
Feature 特集記事&おすすめ記事