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信州は意外な“粉もん文化”の聖地!?
夏に食べたい長野の粉もん郷土料理

コロカルニュース

posted:2018.8.29   from:長野県  genre:旅行 / 食・グルメ

PR 銀座NAGANO

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。

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Hiromi Shimada

島田浩美

しまだ・ひろみ●編集者/ライター/書店員。長野県出身、在住。大学時代に読んだ沢木耕太郎著『深夜特急』にわかりやすく影響を受け、卒業後2年間の放浪生活を送る。帰国後、地元出版社の勤務を経て、同僚デザイナーとともに長野市に「旅とアート」がテーマの書店〈ch.books〉をオープン。趣味は山登り、特技はマラソン。体力には自信あり。

おやきにニラせんべい、五平餅も! 長野の粉もん文化

小麦粉消費量日本一の都市はどこかご存知ですか?
たこ焼きやお好み焼きが名物の大阪? 広島? 
それとも、讃岐うどんの高松? 
いえいえ、実は長野なんです!(総務省「家計調査」2017年版より)

というのも、長野は昔から、小麦粉の皮で野菜などの具を包んで焼いたり
蒸かしたりした「おやき」や「すいとん」など独自の“粉もん(粉食)文化”が発達し、
1日に1食は粉ものを食べる習慣があったからだそう。

確かに、私事で恐縮ですが、思い返せば幼少期のおやつは
「ニラせんべい(ニラが入った小麦粉の薄焼き)」が定番でしたし、
週に1度は祖母が打つ手打ちうどんが食卓に並びました。

「ニラせんべい」はおやつにも食事代わりにもなる素朴な郷土食。砂糖味噌や砂糖醤油をつけて食べるほか、あらかじめ生地に味噌で味つけをするなど、つくり方も家庭によってさまざま。

「ニラせんべい」はおやつにも食事代わりにもなる素朴な郷土食。砂糖味噌や砂糖醤油をつけて食べるほか、あらかじめ生地に味噌で味つけをするなど、つくり方も家庭によってさまざま。

「長野市を中心に広がる善光寺平は古くから米と麦の二毛作が行われていて、
米を節約するため1日1食は小麦粉を主食にしていたことから
粉もん文化が根づいたのだと思います」
と話すのは、おやき専門店〈ふきっ子おやき〉店主で、
おやきの食文化を守り魅力を発信する〈信州おやき協議会〉の
会長でもある小出陽子さんです。

長野でおやきといえば、まず名前が挙がる小出さん。2004年、都内の外資系建設コンサルタント会社を退社し、母親が開業したおやき屋を継承。〈信州おやき協議会〉の立ち上げにも尽力してきました。

長野でおやきといえば、まず名前が挙がる小出さん。2004年、都内の外資系建設コンサルタント会社を退社し、母親が開業したおやき屋を継承。〈信州おやき協議会〉の立ち上げにも尽力してきました。

例えば、ご飯に小麦粉を加えてこねて焼いた県北部の郷土食
「こねつけ」は、お釜に残ったご飯を無駄にしないため、
水でふやかして小麦粉で割り増ししてつくられたのがはじまりだとか。

またニラせんべいは、ニラが一番採れる夏の時期の手軽な“おこびれ”
(長野の方言で「おやつ」の意)として広まったそう。
つまり、長野では小麦粉が収穫できたために食生活には困らなかったのです。

ニラせんべいのアレンジとして、夏や秋には長野名産の「丸なす」を使って「なすせんべい」をつくる家庭も。

ニラせんべいのアレンジとして、夏や秋には長野名産の「丸なす」を使って「なすせんべい」をつくる家庭も。

「郷土食としてこれほどバラエティに富み、いろいろな用途で
さまざまなつくり方をされている包括的な粉もん文化は、
あまり他県では見られません」と小出さん。
これは、長野が小麦粉の産地だからこそ、という理由もひとつにあるようです。

小出さんは、「山々に囲まれた信州の中でも
稲作の不向きな山間部で小麦粉やそば粉を使った粉もん文化が育まれてきたので、
おやきは食材に恵まれない地域の食べ物と思われがちですが、
私は裕福な食べ物だったと思うんです」と言います。

というのも、おやきは日常の“ケの日”に食べられていただけでなく、
行事や仏事にちなんだ“ハレの日”に食べる風習もあったからだそう。

特に夏は、なすやニラなど豊富に採れる夏野菜の加工のひとつとしておやきがあり、
昔は8月上旬に収穫が始まった長野特有の丸なすが
“初物”として、ご先祖さまに供えられてきました。

また、もうひとつ、お盆の定番の「あんこのおやき」も、
貴重な砂糖を使ったご馳走でした。こうした理由から、
いまも長野ではお盆には丸なすとあんこのおやきが欠かせないのです。

長野の北部地域ならではの丸なすのおやき。素材を丸ごとスライスして味つけした味噌を挟むのがスタンダード。

長野の北部地域ならではの丸なすのおやき。素材を丸ごとスライスして味つけした味噌を挟むのがスタンダード。

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粉もんづくり講座も!

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こんな風に、“ハレ”と“ケ”、両方で親しまれてきたおやきですが、
小出さんは「具材を“包むこと”が食文化として一番大事なこと」と話します。
これによって素材の栄養が逃げ出さず、旨みも凝縮されるからです。

加えて、おやきの魅力を
「ヘルシーだけど栄養バランスのよさはおにぎりやサンドイッチの比ではなく、
小麦粉で炭水化物、野菜でビタミンやミネラル、調味料の味噌でタンパク質を補え、
片手で食べられる手軽さがあるので、現代のファストフードです!」と力説します。

ということで、東京・銀座にある長野県のアンテナショップ〈銀座NAGANO〉では、
9月22日に小出さんが講師を務める〈信州「粉もん」づくり講座〉を開催! 
つくるのは、旬のおいしい丸なすを使ったおやきと、
稲作が盛んな県南部の郷土食で米を潰した「五平餅」です。

おやきのなかでも丸なすのおやきは素材の大きさが均一でなく、
味噌を挟んでおくと水分が出てくるため、つくるのが難しいとされますが、
今回は素人でも簡単につくれる方法を伝授してもらいます。

通常、おやきには中力粉を使いますが、
今回はおいしく楽につくれる強力粉を使い、
ポイントに青じそを使った蒸かしタイプのおやきをつくります。

そして、「五平餅」はホットプレートで簡単につくれる方法を教えてもらいます。
NHK連続テレビ小説にも登場し、にわかにブームとなっている五平餅ですが、
「長野で誕生したともいわれる郷土食なので、
長野ならではの五平餅があることを伝えたい」という思いもあって、
小出さんは今回の講座の題材にしたそうです。

「おやきはつくるのに手間はかかりますが、自分でつくると安心安全ですし、
冷凍保存もできるので、粉もんが好きな人はぜひ参加して、
自分でつくる楽しみを見つけてください」と小出さん。
詳細は銀座NAGANOのWebサイトにて。

長野の五平餅はわらじ型や串団子型、幣束型などさまざまな形があり、味つけのバリエーションも豊富。

長野の五平餅はわらじ型や串団子型、幣束型などさまざまな形があり、味つけのバリエーションも豊富。

さらに、今回の講座に限らず、銀座NAGANOでは、
おやきや五平餅を普段から販売しています。
いずれも焼くだけで手軽に信州の食文化を味わえるので、
夏はBBQなどでワイワイと焼いて楽しむのもおすすめです。

銀座NAGANOで販売中の五平餅商品のひとつ。長野県産米100%を使用し、タレはゴマ味で無添加。五平餅3本箱(税込712円)

銀座NAGANOで販売中の五平餅商品のひとつ。長野県産米100%を使用し、タレはゴマ味で無添加。五平餅3本箱(税込712円)

なお、小出さんが営む長野市の〈ふきっ子おやき〉では、
加水率が高いトロトロの生地でつくった、
やわらかくもちもちとした食感のおやきを提供しています。

これは長野市南部に古くから伝わる製法で、
瞬間的に具を包み込む熟練の技が必要ですが、
小出さんは母のもとで1年間修業を積んで2代目を引き継いだのだそう。
具材は昔ながらの素朴なものからオリジナル創作おやきもあり、
油分も少なくあっさりしています。

夏場は丸なすやニラなどの王道の夏野菜のほか、「和のトマト」や「丸ごとピーマン」など、ふきっ子おやきならではのものも。

夏場は丸なすやニラなどの王道の夏野菜のほか、「和のトマト」や「丸ごとピーマン」など、ふきっ子おやきならではのものも。

今回、銀座NAGANOの講座でつくるのはこのトロトロの生地ではありませんが、
ふきっ子おやきの独特の食感や味わいもぜひ味わっていただきたい一品です。

ちなみに、銀座NAGANOのWebサイトでは、
夏野菜を使った、夏に食べたい郷土料理のレシピも紹介しています。
店内では実際に、肉質が緻密で味が濃く煮崩れしにくい「小布施丸なす」や、
ピーマン型をした強烈な辛味の唐辛子「ぼたんこしょう」のほか、
昼夜の寒暖差で生まれる長野ならではのおいしい夏野菜を販売しているので、
健康長寿日本一の源でもある長野の旬の野菜料理を味わってみてはいかがでしょう。

information

信州「粉もん」づくり講座 秋なすのおやきと五平餅

開催日時:2018年9月22日(土)11:00~13:00

会場:銀座NAGANO(東京都中央区銀座5-6-5)2階イベントスペース

料金:2500円

定員:24名

Web:銀座NAGANO 信州「粉もん」づくり講座

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銀座NAGANO 

住所:東京都中央区銀座5-6-5

TEL:03-6274-6015

営業時間:10:30~20:00

Web:銀座NAGANO

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